61 / 142
61 俺の姫プレイとオレの家
しおりを挟む
<日曜日 9:06>
「今日は、僕がチヒロの家に行ってみたい」
朝起きると、トモヤが突然そんなことを言い出した。
ニコニコと笑っているが、なぜだか『ノー』とは言えない雰囲気を感じる。
「いいけど……」
「ありがとう。楽しみだな~! 誰かの家に泊まるって、どれくらいぶりだろう?」
「えっ!? 泊まるの!?」
てっきり、夜には帰るのかと思ってた!
朝食を作って、テーブルへ運んできたトモヤが「ダメなの?」と聞いてくる。
「ダメじゃないけど……俺んち、トモヤの家より汚いよ?」
部屋を片づける時間が、少し欲しい。
洗濯物、干したままになってたかな?
掃除機は……かけてねーな。
昨日、ランニングから帰ってきて、着替えて即ここに来ちゃったし。
頭の中でぐるぐると、家の状況が気になった。
それと、あともう一つ。
「今日、俺んちに泊まって……明日、仕事は? どうすんの?」
明日は月曜日。
俺の家から直接、トモヤは仕事に行くのだろうか?
「ああ。それなら大丈夫。家で仕事してるから」
「そう、なんだ?」
「時間の縛りがない訳じゃないけど、比較的自由だからね」
「……ちなみに、何の仕事やってるのか聞いてもいい?」
「株のデイトレードなんだけど……」
「株! それでか!!」
トモヤの机の上にある、この六台のモニターは、そういうことだったのか!!
謎が解けて超スッキリ。
トモヤがチャートだの、板だの、簡単に説明してくれたが、うん、うん。
なるほど。さっぱり、わからん。
朝食を食べ終えると、俺は自分が持ってきたものをデイバッグに詰め込み、トモヤは俺の家に持っていくものをバッグに詰め込んだ。
***
<日曜日 14:33>
『シャルマン・フジ』
マンション前に掲げられたプレートを見ながら、「ここなんだね」とトモヤが呟く。
俺達は階段を上り、玄関のドアを開けた。
「トモヤ、ちょっと待っててくれる? 俺ちょっと、片付け──」
「お邪魔するね」
俺を置いて、トモヤが先に中に入る。
「ちょ!?」
トモヤはキョロキョロしながら、トイレや洗面所など、手当たり次第にドアを開け、中を確認している。俺はトモヤの肩に手を伸ばし、その行動を止めた。
「ちょっと待ってってば!」
「……チヒロ、ごめんね。つい、気になっちゃってさ。今日はタバコのニオイは無さそうだね?」
「え? あ、うん」
突然のトモヤらしからぬ行動に驚いたが、俺が話したニオイのことを気にしていたのか。
理由が分かり、俺は強く掴んでしまった肩から手を放す。
「部屋汚いって言ってたけど、キレイじゃない?」
「そうかな?」
「独り暮らしの男の部屋にしては、キレイなほうだと思うよ?」
「でも、掃除機かけてないから、ちょっとかけさせて」
「僕も手伝おうか?」
「いや、お客さんにやってもらうのは、ちょっと……」
そう言って、俺はトモヤを一度、玄関先まで押し戻した。
干しっぱなしになってた服を、全部クローゼットにぶち込む。
ガーガーと掃除機をかけながら、折りたたみテーブルを位置を整える。
玄関先まで一通り掃除機をかけ終わると、トモヤが「ねぇ」と話しかけてきた。
「……チヒロって、いつも家の鍵を玄関先に置いてるの?」
「え? うん」
「危なくない? 今、僕も簡単に触れるし」
「そうか? そもそもこの家に入る人間は、あんまいないしなぁ~」
「……ここ一ヵ月とか最近、この家に来た人はいる?」
「んー?」
コードレス掃除機を元の位置に戻し、コードを差して充電する。
トモヤは改めて「お邪魔します」と言って、部屋の中に入ってきた。
「ここ一ヵ月……そうだなぁ……置き配出来なかった荷物受け取ったり? 後はー……昨日話した、雪森さんにトイレ貸したくらいかな?」
「トイレを貸した? なんで? 公園で会う人なんだよね?」
実は……と、雪森さんにトイレを貸した経緯を伝えた。
トモヤは膝から崩れ落ちている。
「……チヒロ……ちょっと、こっち来て」
手招きされて、何だ? と近寄る。
トモヤは眼鏡をキラリと光らせ、俺のこめかみに拳を押し当てると、力いっぱいグリグリしだした。
「いだだだだだ!! いだい!!」
「君というヤツには、これでも、ぬるいくらいだよ!!」
「なんだよぉ……!」
グリグリの刑を終えたトモヤは、額に手をあて、深い溜め息をついている。
「はぁ……チヒロのせいで、頭が痛い」
「いや、痛いのは俺なんですけど……」
すっげぇ痛かった。まだズキズキする。
俺は飲み物を淹れに、キッチンへ向かった。
両手にマグカップを持ち、戻ると、トモヤは誰かにメッセージを送っているようだった。
チラッと目に入った画面には、「入られてる」とか「セキュリティ」という言葉が並んでいる。
折りたたみテーブルの上に、コーヒーを置く。
トモヤは「ありがと」と言って、カップに口を付けた。
二、三口ほど飲むと、トモヤは口を開く。
「チヒロ」
「なに?」
「僕としては、すっごく……ものすごーく嫌なんだけど、嫌で嫌で仕方ないんだけど……」
「だから……なに?」
トモヤが、俺の顔を真剣な眼差しで見つめてきた。
その顔はいつもの優しいトモヤと違いすぎて、ドキッと心臓が跳ね上がる。
「──君、少しの間でいいから、レンの家にいなよ」
「今日は、僕がチヒロの家に行ってみたい」
朝起きると、トモヤが突然そんなことを言い出した。
ニコニコと笑っているが、なぜだか『ノー』とは言えない雰囲気を感じる。
「いいけど……」
「ありがとう。楽しみだな~! 誰かの家に泊まるって、どれくらいぶりだろう?」
「えっ!? 泊まるの!?」
てっきり、夜には帰るのかと思ってた!
朝食を作って、テーブルへ運んできたトモヤが「ダメなの?」と聞いてくる。
「ダメじゃないけど……俺んち、トモヤの家より汚いよ?」
部屋を片づける時間が、少し欲しい。
洗濯物、干したままになってたかな?
掃除機は……かけてねーな。
昨日、ランニングから帰ってきて、着替えて即ここに来ちゃったし。
頭の中でぐるぐると、家の状況が気になった。
それと、あともう一つ。
「今日、俺んちに泊まって……明日、仕事は? どうすんの?」
明日は月曜日。
俺の家から直接、トモヤは仕事に行くのだろうか?
「ああ。それなら大丈夫。家で仕事してるから」
「そう、なんだ?」
「時間の縛りがない訳じゃないけど、比較的自由だからね」
「……ちなみに、何の仕事やってるのか聞いてもいい?」
「株のデイトレードなんだけど……」
「株! それでか!!」
トモヤの机の上にある、この六台のモニターは、そういうことだったのか!!
謎が解けて超スッキリ。
トモヤがチャートだの、板だの、簡単に説明してくれたが、うん、うん。
なるほど。さっぱり、わからん。
朝食を食べ終えると、俺は自分が持ってきたものをデイバッグに詰め込み、トモヤは俺の家に持っていくものをバッグに詰め込んだ。
***
<日曜日 14:33>
『シャルマン・フジ』
マンション前に掲げられたプレートを見ながら、「ここなんだね」とトモヤが呟く。
俺達は階段を上り、玄関のドアを開けた。
「トモヤ、ちょっと待っててくれる? 俺ちょっと、片付け──」
「お邪魔するね」
俺を置いて、トモヤが先に中に入る。
「ちょ!?」
トモヤはキョロキョロしながら、トイレや洗面所など、手当たり次第にドアを開け、中を確認している。俺はトモヤの肩に手を伸ばし、その行動を止めた。
「ちょっと待ってってば!」
「……チヒロ、ごめんね。つい、気になっちゃってさ。今日はタバコのニオイは無さそうだね?」
「え? あ、うん」
突然のトモヤらしからぬ行動に驚いたが、俺が話したニオイのことを気にしていたのか。
理由が分かり、俺は強く掴んでしまった肩から手を放す。
「部屋汚いって言ってたけど、キレイじゃない?」
「そうかな?」
「独り暮らしの男の部屋にしては、キレイなほうだと思うよ?」
「でも、掃除機かけてないから、ちょっとかけさせて」
「僕も手伝おうか?」
「いや、お客さんにやってもらうのは、ちょっと……」
そう言って、俺はトモヤを一度、玄関先まで押し戻した。
干しっぱなしになってた服を、全部クローゼットにぶち込む。
ガーガーと掃除機をかけながら、折りたたみテーブルを位置を整える。
玄関先まで一通り掃除機をかけ終わると、トモヤが「ねぇ」と話しかけてきた。
「……チヒロって、いつも家の鍵を玄関先に置いてるの?」
「え? うん」
「危なくない? 今、僕も簡単に触れるし」
「そうか? そもそもこの家に入る人間は、あんまいないしなぁ~」
「……ここ一ヵ月とか最近、この家に来た人はいる?」
「んー?」
コードレス掃除機を元の位置に戻し、コードを差して充電する。
トモヤは改めて「お邪魔します」と言って、部屋の中に入ってきた。
「ここ一ヵ月……そうだなぁ……置き配出来なかった荷物受け取ったり? 後はー……昨日話した、雪森さんにトイレ貸したくらいかな?」
「トイレを貸した? なんで? 公園で会う人なんだよね?」
実は……と、雪森さんにトイレを貸した経緯を伝えた。
トモヤは膝から崩れ落ちている。
「……チヒロ……ちょっと、こっち来て」
手招きされて、何だ? と近寄る。
トモヤは眼鏡をキラリと光らせ、俺のこめかみに拳を押し当てると、力いっぱいグリグリしだした。
「いだだだだだ!! いだい!!」
「君というヤツには、これでも、ぬるいくらいだよ!!」
「なんだよぉ……!」
グリグリの刑を終えたトモヤは、額に手をあて、深い溜め息をついている。
「はぁ……チヒロのせいで、頭が痛い」
「いや、痛いのは俺なんですけど……」
すっげぇ痛かった。まだズキズキする。
俺は飲み物を淹れに、キッチンへ向かった。
両手にマグカップを持ち、戻ると、トモヤは誰かにメッセージを送っているようだった。
チラッと目に入った画面には、「入られてる」とか「セキュリティ」という言葉が並んでいる。
折りたたみテーブルの上に、コーヒーを置く。
トモヤは「ありがと」と言って、カップに口を付けた。
二、三口ほど飲むと、トモヤは口を開く。
「チヒロ」
「なに?」
「僕としては、すっごく……ものすごーく嫌なんだけど、嫌で嫌で仕方ないんだけど……」
「だから……なに?」
トモヤが、俺の顔を真剣な眼差しで見つめてきた。
その顔はいつもの優しいトモヤと違いすぎて、ドキッと心臓が跳ね上がる。
「──君、少しの間でいいから、レンの家にいなよ」
241
お気に入りに追加
532
あなたにおすすめの小説
【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!
ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて
素の性格がリスナー全員にバレてしまう
しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて…
■
□
■
歌い手配信者(中身は腹黒)
×
晒し系配信者(中身は不憫系男子)
保険でR15付けてます
薬師、奴隷を買う、、、ん?奴隷に襲われるってどういうこと!?
さえ
BL
薬剤師として働いていた35歳未婚男性。過労死で異世界転生を果たす。
有り余る金と有能スキルで伸び伸びと暮らす夢を叶えるために奴隷を買う。
なんで奴隷にベッドに押し倒されてるの!?
※主人公と奴隷は両思いになる予定です。
※処女作ですのでご容赦ください。
※あんなシーンやこんなシーンは☆マークつけます。(後半の予定)
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる