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43 俺の姫プレイと氷竜とトモヤ 1
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<土曜日 8:26>
週末のルーティン。
朝、起きたら、近くの公園までランニング。
スポーツブランドのロゴが入ったジャージを着て、俺は走った。
「はぁ……はぁ……」
軽く汗ばんだところで、公園に到着。
公園に着いたら、軽くストレッチ。
ぐいぐいと体を動かしていると、かすかに犬の鳴き声が聞こえる。
「この声はもしかして……」
キャンキャンと声が聞こえてきた方へ、俺は顔を向けた。
最近、公園で出会った女の子。チーちゃんの声だ。
ふわふわの茶色い毛玉と一人の男性が、俺の方へと近づいてきた。
「おはようございます。上月さん」
「おはようございます。 おおー! チーちゃん今日も元気だなー!」
飼い主さんと挨拶をして、俺はもふもふとした毛を、ワシャワシャと撫でまくった。
チーちゃんとの出会いは、数週間前に遡る。
いつものようにランニングをし、ストレッチしていたら、俺に向かってワンコが走ってきた。
リードの持ち手は地についており、犬の後をついて来る、ただの紐と化す。
行動を制限されない、自由なワンコは興奮気味に走っており、その後ろから飼い主さんが「待って」と追いかけていた。
それを見た俺は、走って来るワンコをガシリと捕獲する。
「すっすみません。ありがとうございます」
「いえいえ」
ふわふわ毛玉のポメラニアンが可愛くて、別れ間際に触らせてもらう事にしたのだが、俺はその時、指をカプリと噛まれてしまった。
「だっ大丈夫ですか!? すみません」
「大丈夫です。ごめんな~ビックリさせちゃたかな」
痛みや傷、出血も無かったのだが、心配性の飼い主さんは、もし何かあったら連絡して欲しいと必死だった。
そういった経緯があり、俺は飼い主さんと互いに自己紹介をし、連絡先を交換した。
「俺は上月千尋です。」
「俺は雪森奏といいます。この子はチーちゃん。本当にすみませんでした。上月さん」
雪森君とチーちゃんとは、この日以降、週末に会うと話しをするようになった。
週末のもふもふ充電は、俺のちょっとした癒しになったのだった。
***
朝のルーティンを終えた俺は、シャワーを済ませ、着替えた。
デイバッグの中に、必要になりそうなものを入れて、靴を履き、また外へ出る。
今日はトモヤの家に遊びに行くのだ。
SNSで送られてきた住所を検索し、最寄り駅へ辿り着く。
向かう途中のコンビニで、飲み物やお菓子を買って、俺はトモヤの住んでいるマンションに到着した。
「マンション前に着いた……ぞ」
スマホでメッセージを書き込む。
するとすぐに既読がつき、トモヤがマンション前まで降りてきた。
「いらっしゃい。道は迷わなかった?」
「へーきへーき」
トモヤの案内でマンションの中に入っていく。
トモヤの部屋は三階だ。俺達はエレベーターではなく、階段を使ってのぼった。
玄関を開け、中に入る。
部屋の中は白とダークブラウンを中心とした家具で整えられていた。
おしゃれなその部屋の中で、ひときわ異彩を放った場所がある。
トモヤのパソコン前。モニターが六台、上下左右にズラリと並んでいた。
「トモヤ、モニター……多くね?」
「あー……これは、ちょっとね。仕事で使うんだ」
「ふーん」
トモヤはトラックボールマウスをクルクルと動かし、一番大きなモニターに氷竜戦の画面を映し出した。
「さっそくだけど、見る?」
「見る見る! 待ってました! っと、その前にこれ」
「わざわざ買ってきてくれたの? ありがと。じゃあ、僕はお菓子をお皿に移してくるよ」
「へーい」
俺はトモヤがキッチンから戻ってくる前に、氷竜戦の動画再生ボタンをカチッと押した。
***
「チヒロ~、これ、飲み物はどっちが……?」
「ふんふふんふん~♪」
チヒロは既に動画に集中していた。
ボス戦の時に必ず歌っている鼻歌が聞こえる。
瞬きを忘れたように見入ったチヒロは、ゲーミングチェアの上で、体育座りをしている。
(もしかして、これもチヒロの癖なのかな?)
そんなことを思いながら、チヒロが持ってきてくれたお菓子と飲み物を、テーブルの上にコトリと置いた。
**
「あー! ここでやられちゃったのかー!」
まず一周目の視聴が終わったようだ。
もう少し先が見たかったようで、チヒロが顔を覆っている。
「チヒロの目から見て、氷竜はどう?」
「めっちゃ面白そう!」
「……そうじゃなくてね」
「トモヤの言う通り、モーションがちょっと分かりづらいな」
僕とチヒロで、あーじゃない、こーじゃないと話し合いをしていく。
何度も動画を見返し、僕とチヒロで意見が割れる箇所が出てきた。
「……譲らないね?」
「譲らねぇよ」
「そう。分かった。ここは後日検証かな……うーん、次はいつ挑戦できるかな~?」
僕はカレンダーを見る。
前衛職は他から引っ張ってきてる為、なかなか気軽に行けないのがネックだ。
僕が悩んでいると、チヒロがバッグを開けて、ゴソゴソとしだした。
「こんな事もあろうかと思って! 持ってきた!」
バッグの中から出てきたのは、ヘッドギアとリスト。
DFOを遊ぶために、必須な物達。
しっぽを振って、全力で喜んでいるワンコのような顔をしたチヒロが、僕に向かってこう言った。
「──なぁ! 今から、ちょっとだけ検証しようぜ!」
週末のルーティン。
朝、起きたら、近くの公園までランニング。
スポーツブランドのロゴが入ったジャージを着て、俺は走った。
「はぁ……はぁ……」
軽く汗ばんだところで、公園に到着。
公園に着いたら、軽くストレッチ。
ぐいぐいと体を動かしていると、かすかに犬の鳴き声が聞こえる。
「この声はもしかして……」
キャンキャンと声が聞こえてきた方へ、俺は顔を向けた。
最近、公園で出会った女の子。チーちゃんの声だ。
ふわふわの茶色い毛玉と一人の男性が、俺の方へと近づいてきた。
「おはようございます。上月さん」
「おはようございます。 おおー! チーちゃん今日も元気だなー!」
飼い主さんと挨拶をして、俺はもふもふとした毛を、ワシャワシャと撫でまくった。
チーちゃんとの出会いは、数週間前に遡る。
いつものようにランニングをし、ストレッチしていたら、俺に向かってワンコが走ってきた。
リードの持ち手は地についており、犬の後をついて来る、ただの紐と化す。
行動を制限されない、自由なワンコは興奮気味に走っており、その後ろから飼い主さんが「待って」と追いかけていた。
それを見た俺は、走って来るワンコをガシリと捕獲する。
「すっすみません。ありがとうございます」
「いえいえ」
ふわふわ毛玉のポメラニアンが可愛くて、別れ間際に触らせてもらう事にしたのだが、俺はその時、指をカプリと噛まれてしまった。
「だっ大丈夫ですか!? すみません」
「大丈夫です。ごめんな~ビックリさせちゃたかな」
痛みや傷、出血も無かったのだが、心配性の飼い主さんは、もし何かあったら連絡して欲しいと必死だった。
そういった経緯があり、俺は飼い主さんと互いに自己紹介をし、連絡先を交換した。
「俺は上月千尋です。」
「俺は雪森奏といいます。この子はチーちゃん。本当にすみませんでした。上月さん」
雪森君とチーちゃんとは、この日以降、週末に会うと話しをするようになった。
週末のもふもふ充電は、俺のちょっとした癒しになったのだった。
***
朝のルーティンを終えた俺は、シャワーを済ませ、着替えた。
デイバッグの中に、必要になりそうなものを入れて、靴を履き、また外へ出る。
今日はトモヤの家に遊びに行くのだ。
SNSで送られてきた住所を検索し、最寄り駅へ辿り着く。
向かう途中のコンビニで、飲み物やお菓子を買って、俺はトモヤの住んでいるマンションに到着した。
「マンション前に着いた……ぞ」
スマホでメッセージを書き込む。
するとすぐに既読がつき、トモヤがマンション前まで降りてきた。
「いらっしゃい。道は迷わなかった?」
「へーきへーき」
トモヤの案内でマンションの中に入っていく。
トモヤの部屋は三階だ。俺達はエレベーターではなく、階段を使ってのぼった。
玄関を開け、中に入る。
部屋の中は白とダークブラウンを中心とした家具で整えられていた。
おしゃれなその部屋の中で、ひときわ異彩を放った場所がある。
トモヤのパソコン前。モニターが六台、上下左右にズラリと並んでいた。
「トモヤ、モニター……多くね?」
「あー……これは、ちょっとね。仕事で使うんだ」
「ふーん」
トモヤはトラックボールマウスをクルクルと動かし、一番大きなモニターに氷竜戦の画面を映し出した。
「さっそくだけど、見る?」
「見る見る! 待ってました! っと、その前にこれ」
「わざわざ買ってきてくれたの? ありがと。じゃあ、僕はお菓子をお皿に移してくるよ」
「へーい」
俺はトモヤがキッチンから戻ってくる前に、氷竜戦の動画再生ボタンをカチッと押した。
***
「チヒロ~、これ、飲み物はどっちが……?」
「ふんふふんふん~♪」
チヒロは既に動画に集中していた。
ボス戦の時に必ず歌っている鼻歌が聞こえる。
瞬きを忘れたように見入ったチヒロは、ゲーミングチェアの上で、体育座りをしている。
(もしかして、これもチヒロの癖なのかな?)
そんなことを思いながら、チヒロが持ってきてくれたお菓子と飲み物を、テーブルの上にコトリと置いた。
**
「あー! ここでやられちゃったのかー!」
まず一周目の視聴が終わったようだ。
もう少し先が見たかったようで、チヒロが顔を覆っている。
「チヒロの目から見て、氷竜はどう?」
「めっちゃ面白そう!」
「……そうじゃなくてね」
「トモヤの言う通り、モーションがちょっと分かりづらいな」
僕とチヒロで、あーじゃない、こーじゃないと話し合いをしていく。
何度も動画を見返し、僕とチヒロで意見が割れる箇所が出てきた。
「……譲らないね?」
「譲らねぇよ」
「そう。分かった。ここは後日検証かな……うーん、次はいつ挑戦できるかな~?」
僕はカレンダーを見る。
前衛職は他から引っ張ってきてる為、なかなか気軽に行けないのがネックだ。
僕が悩んでいると、チヒロがバッグを開けて、ゴソゴソとしだした。
「こんな事もあろうかと思って! 持ってきた!」
バッグの中から出てきたのは、ヘッドギアとリスト。
DFOを遊ぶために、必須な物達。
しっぽを振って、全力で喜んでいるワンコのような顔をしたチヒロが、僕に向かってこう言った。
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