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18 俺の姫プレイと週末レイド 3

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 プレイヤー vs 超大型モンスター

 この図式になった時、俺達はパーティーの垣根を越える。
 優先すべきは自分達のパーティーだが、視界に入る他パーティーがピンチの時には、互いに助け合うのだ。

「はぁっ……はぁっ……」
「はー……キッツ……何だこれ!?」

 他パーティーメンバーが愚痴を零す。
 超大型モンスターの攻撃がキツい。俺の回復支援も、その比率をどんどん増していった。

 超大型モンスター戦に突入して一時間半が経過。
 まだまだ終わりが見えない。ボスの体力を半分も削れていない。
 終わりが見えないどころか、レイド参加者全員が全滅しかねない状況へと近づいているようだった。
 死神の大鎌が首にピタリと張り付いたような空気に寒気を覚える。


(何か変だ……)

 あまりにもボスが強すぎる。俺達のレベルのことを差し引いても、いつものレイドと違う。

「すみません! ここ一旦離れます!」

 他パーティーメンバーに声をかけ、木と木の間を縫って、俺はタナカさんことトモヤの元へと走った。

「タナカさん!」
「チロさん」
「今回のレイドは何かおかしい気がする!」
「やっぱりそうだよね。僕もそう思って、今さっき連絡入れて、探ってもらってる」
「さすが!」

 連絡って<暁>メンバーか! 流石トモヤ!
 よっ! 打てば響く男! 
 よっ! 痒いところに手が届く男!
 ん? これって褒めてるよな?

 お互いマジックバッグからMP回復薬を取り出すとグッと飲み干した。

「これが尽きるのも時間の問題かな」

 空になった瓶を振って見つめる。その時『ピロン』とトモヤの元に通知が届いた。
 それをタップして開く。

「まじかー……」

 ガクリと座り込み、トモヤのこうべが垂れた。

「レイドボス、バーサーク化してるって……運営は昼のレイドが終わったら、修正かけるってさ」
「はぁ? なんで!?」
「レイドテストで使ったボスをそのまま投入しちゃったみたいだよ。さっきサイトでアナウンス出たって。これは昼レイド参加者は全員戦闘不能になるんじゃない?」

 戦闘不能。すなわち得られるお金はゼロ。
 それは困る。だって本当に俺は今お金が無い。
 ここまで戦ってゼロは無いだろ。ゼロは。

「……ヤダ」
「ヤダって言ってもレベル50程度の今の僕達でどうにか出来るものじゃないでしょ……」
「それは……そうだけど……」

 でも、だからってこのまま戦闘不能になるのをジッと待つだけなんて出来ない。
 何か方法は無いのか?

 俺はその場をウロウロしながら考える。さっきトモヤが言った言葉が引っかかった。

(……レベル50程度じゃなければ良いのか?)

 俺はウインドウを立ち上げると、レンとアレクさんに連絡を入れた。俺達の所まで一旦呼び戻す。

 少しすると、こちらにレンが走ってきた。

「おい、どうした!?」
「あれ? アレクさんは?」
「瀕死状態だ。こっちに戻って来る時にやられた。手持ちの回復薬も尽きたようだったから、モンスター攻撃範囲外の所で休ませてる」
「……だったら好都合かな」

 口元に手を当ててポツリと零す。
 ごめんね。アレクさん。

「それで? 一体何があった?」
「レン。レイドのボスはバーサーク化してるって、さっき情報が入った」
「何だと!?」
「このままじゃ全員全滅だ」
「それで……どうする?」

 俺はバシュンという音を立て、ジョブチェンジする。

 (コイツを使うのも久々だ)

 小さな体には不釣り合いの深紅の大剣が、俺の背中に現れた。

「俺が戦士で出る」

「!!」
「お前も魔法剣士で出ろ」
「……ああ」
「トモヤは賢者よろしく」

 バシュッと音がして、魔術師のタナカさんから賢者のトモヤへとジョブチェンジする。

「ちょっとチヒロ。僕のことまでレンにバラさないでくれるかな?」

 しょうがないなぁって顔をして、トモヤが言ってきた。すまん。

「モサいの……お前、トモヤだったのか……」
「まぁね」

 肩を竦めて答えるトモヤ。
 二人がそんなやり取りをしている間に、俺はマジックバッグの中から残っているMP回復薬を取り出した。
 手元に十本だけ残し、残りをトモヤに押し付ける。

「トモヤに負担かけるけど、よろしく」
「本当にね。回復も攻撃もどっちもやれって事でしょ? ちょっと僕の負担多すぎない?」

 受け取った瓶をマジックバッグへ収納するトモヤ。
 レンも自分のMP回復薬をいくつかトモヤに渡していた。
 俺はウインドウを開いて、戦士のスキルリストをボス戦用に入れ替える。

「トモヤ。あともう一つ頼みがあるんだけど」
「何?」
「幻影魔法かけてくれない? チロってバレたくない」
「分かった」
「レン。俺がボスを引きつける。その間にまだ戦えるヤツらを纏めて、指示を出してくれ」
「お前……その間、耐えれるのか?」

 レンが眉を顰める。
 そんなレンの顔を見ながら、俺は不敵な笑みを浮かべて答える。

「俺を誰だと思ってんの?」
「……分かった。死ぬなよ」

 そう言うとレンはサッと踵を返して走り出した。
 時間が勿体ない。さすが分かってるね。

 俺はトモヤが幻影魔法をかけたのを確認すると、一気にボスの元へ走り出した。

 スキルリストを表示し、一気にタップ!
 最大コンボで攻撃を決めていく!!


「タゲ取りは戦士タンクの仕事だぁあああ!!っしゃオラァアアアアアアアアア!!!!」


 ドンッ! ドンッ! ドンッ! と爆発にも似た音が辺りに鳴り響く。
 大きな土埃の煙が宙を舞った。
 ダメージを受けたボスがジロリと俺を見つめる。

(ターゲットが俺に移ったな)

 俺は唇をペロリと舐め、小さな細腕で相棒の大剣を構え直す。

「……来いよ」

 右手でチョイチョイとボスを挑発する。

 レンが討伐パーティーを再編成するまでの間、お前の相手は


──俺だ。
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