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06 俺の姫プレイと職業クエスト 1

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 あーもう! くっそー!
 エア姫プレイって何なんだよ~!
 エアでやってどうするんだよ~!

 俺は脳内ツッコミを入れながら、チラリとパーティーメンバーの反応を伺った。

 タナカさんもアレクさんも呆然として俺を見ている。
 タカヒロさんは手で顔を覆い、下を向いてずっとブルブル震えている。
 そしてガバッと顔を上げると、俺の両肩をガシッと掴んできた。

「チロさん! <暁>のチヒロさんに会ったことあるの!?」
「えっ? ええ……まぁ……」

 だって会わないと赤竜のピアスを貰ったことに出来ないし。
 ってか、タカヒロさん力強すぎ。リストが重いッス。

「いつ!?」
「半年くらい前に……?」
「どこで!?」
「え? ええっと……酒場かな?」
「「いいなぁあああああああ~!!」」
「えっ? ええ~? アレクさんまで!? ユニゾン!?」

 思ってもみない反応に俺は困惑する。
 って言うかさ。

「皆さん、<暁>のチヒロを知ってるんですか?」
「「「は?」」」

 えーっ?? だから何なの? その反応。
 本気で言ってる? みたいな顔をしてこっち見ないで欲しい。

 とりあえず俺達は止めていた足を動かすことにした。
 サクサクと草を踏みしめながら、サクサクと先へ進んで行く。
 サクサク行こうサクサク。時間とは有限なのだよ。うんうん。

「チロちゃん本気で言ってる……?」
「まぁ……<暁>ってランキング上位にいたチームですよね。それ位だったら知ってるんですけど……チヒロって人はそんなに有名でしたっけ?」

 チームの奴らが色んな人に声をかけられてるのは見たことあるけど、俺自身は全く無かった。
 話しかけてくるのは俺のフレンドか、せいぜい<エクソダス>のレンくらいだったし。

 だから、タカヒロさんやアレクさん、タナカさんがチヒロを知っていることに驚いた。
 案外、ランキング上位のチームだと皆知ってるものなのかね?

「他職のヤツらがどう思ってるか知らないけど、同じ戦士をやってる身としては、チヒロさんは神だよ。神。」

 タカヒロさんが胸の前で両手を組んで、まるで祈りを捧げるように言った。そうして熱弁される。
 戦士時代の俺がどれだけ凄いのかと言うことを。

 ゲーム開始当初、戦士など主に<タンク>と呼ばれる前衛職は不人気だった。
 ダンジョン攻略、ボス討伐において重要な職業になるのだが、重要な分クリア出来なかった時に批難されやすい職業でもあった。
 その為、やりたがる人間がとても少なかった。
 そんな不人気職を人気職に変えたのが、<暁>のチヒロだと言う。

<暁>の攻略動画。それを見たプレイヤーはチヒロのプレイに魅せられたのだと。
<暁>のおかげでタンクをやる人間が増え、自分達のような後からゲームに参加した人が、パーティーを組む際にも困らず、今でも十分楽しめているとのことだった。

 俺は俯きながら「へぇ~そうなんですね」と相槌を打つ。
 ニマニマと嬉しさで歪む口を、俯くことで誤魔化した。

 知らなかったな。俺が誰かに影響を与えてたなんてさ。

「私が思ってたよりも有名な人なんですね。チヒロ……さん」
「そうだよー! だからチロさんは、チヒロさんに赤竜のピアスを貰ったこと誇っていいと思う!」
「あのチヒロさんに赤竜のピアス貢いでもらっちゃうとか、チロちゃんマジで何者?」
「……すごいね」
「ええ~? 私自身は何もすごくないですよ?」

 なんか皆からもっと詳しく話を聞かせろってオーラを感じる。
 この話題はヤバい。深掘りしないで欲しい。何も考えてないんだけど。

「ああ! ほらそんなことよりも! 職業クエのダンジョンってあれじゃないですか!?」

 慌てて俺は視界に捉えた大きな洞窟を指差す。
 草原のフィールドから一変し、ゴツゴツとした岩肌が辺りに広がっている。
 大岩の影に隠れるようにあった洞窟の入り口では、ボスダンジョン特有のジメジメとした空気と生臭いニオイを感じた気がした。

 フィールドとは違い、ダンジョンではモンスターとの遭遇率が高い。
 ここに入る前に常時戦闘が出来るよう準備を行う。

 戦士のタカヒロさんは右手に片手剣、左手に盾を持ち、槍使いのアレクさんは槍の穂先を下げ、構える。
 魔術師のタナカさんはフードを深く被り、両手杖を持つ。俺は背中に弓を背負い、右手に聖女のクロスを構えた。

 戦士タンクであるタカヒロさんが先頭に立つ。

「準備はいいか? 行くぞッ!」
「「「おうッ!!」」」

 ボスが口を開けて待つそのダンジョンに、俺達は足を一歩踏み入れたのだった。
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