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◆番外編◆ それぞれの未来へ
#11
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要さんにエスコートされて大広間に向かうと、どこかの旅館の宴会場にあるようなお膳がずらりと並べられていて。
床の間の近くにいる虎太郎さんは、もうすでにお酒を呑んでいるようで、ほんのりと赤い顔をしている。とても上機嫌だ。
今日は、内輪だけということもあって、神宮寺家の親族と、『YAMATO』の重役や、虎太郎さんと昔から親交のある有名デパートや老舗洋菓子店などの会長さんなどがご招待されている。
といっても、隠居の身である虎太郎さんと同じように、皆さん肩書はあれど実際には後継者に任せている方が多いらしく、堅苦しい雰囲気は一切感じられず、和やかムードが漂っている。
上機嫌な虎太郎さんの周りには、虎太郎さんと同じ七十歳代の落ち着いた紳士という言葉が相応しい方々が集まっていて、雅さんもその人たちとの談笑に加わっているようだった。
その近くには、隼さんと静香さんが居て、その近くでは、麗子さんが『YAMATO』の重役の方たちにお酌をして日ごろの労を労っているようだ。
皆さん幾度となく、宴会好きな虎太郎さんに招待されている所為か、各々で楽しく寛いで過ごしてらっしゃるようだった。
宴会場に入ってすぐは、出席者の方々おひとりずつの席に赴き要さんと一緒にお酌しながらの挨拶に奔走し、ようやく挨拶を終えた私は要さんと一緒に、夏目さん、香澄先生とお喋りに花を咲かせていたのだけれど……。
廊下で会った時からなにやら雲行きが怪しいと思ったら、案の定、譲さんは奥様の小百合さんの機嫌を損ねてしまったようで。
譲さんが要さんに助けを求めにきたため、要さんは致し方なく譲さんに連れられて小百合さんの席へと向かうことになってしまったのだった。
そこで私は、どうしたものかと思案した結果、夏目さんと香澄先生の邪魔はしたくなかったし、今日は天気にも恵まれて、日差しも差していて暖かかったこともあり、少し外の空気も吸いたくなって、私はひとり綺麗に手入れのなされた和風庭園へと訪れていた。
のんびりと花々を眺めつつ、綺麗な曲線が描かれている玉砂利の近くを散策していた時、不意に、
「美菜ちゃん」
懐かしい声に呼び止められて、視線を向けると、そこには夏目さんが居て。
「美菜ちゃんが転ぶといけないからって、要におもり頼まれた」
なんて言ってきて、可笑しそうに笑いながらこちらに向かって歩み寄ってくる夏目さんの姿に、私は、あれ? と、首を傾げた。
今日もいつものメガネをかけてはいるけれど、なんだろう? いつもの真っ黒のスーツ姿じゃなく、少し暖かみのあるライトグレーのスーツを着ている所為か、おっかなさはなくて、イケメン度が増して見える……ような気がする。
それはもしかすると、香澄先生の存在がそうさせるのかもしれない。恐るべし恋の威力。
そこまで考えが至って、私は、ふふっと笑みを零してしまっていた。
床の間の近くにいる虎太郎さんは、もうすでにお酒を呑んでいるようで、ほんのりと赤い顔をしている。とても上機嫌だ。
今日は、内輪だけということもあって、神宮寺家の親族と、『YAMATO』の重役や、虎太郎さんと昔から親交のある有名デパートや老舗洋菓子店などの会長さんなどがご招待されている。
といっても、隠居の身である虎太郎さんと同じように、皆さん肩書はあれど実際には後継者に任せている方が多いらしく、堅苦しい雰囲気は一切感じられず、和やかムードが漂っている。
上機嫌な虎太郎さんの周りには、虎太郎さんと同じ七十歳代の落ち着いた紳士という言葉が相応しい方々が集まっていて、雅さんもその人たちとの談笑に加わっているようだった。
その近くには、隼さんと静香さんが居て、その近くでは、麗子さんが『YAMATO』の重役の方たちにお酌をして日ごろの労を労っているようだ。
皆さん幾度となく、宴会好きな虎太郎さんに招待されている所為か、各々で楽しく寛いで過ごしてらっしゃるようだった。
宴会場に入ってすぐは、出席者の方々おひとりずつの席に赴き要さんと一緒にお酌しながらの挨拶に奔走し、ようやく挨拶を終えた私は要さんと一緒に、夏目さん、香澄先生とお喋りに花を咲かせていたのだけれど……。
廊下で会った時からなにやら雲行きが怪しいと思ったら、案の定、譲さんは奥様の小百合さんの機嫌を損ねてしまったようで。
譲さんが要さんに助けを求めにきたため、要さんは致し方なく譲さんに連れられて小百合さんの席へと向かうことになってしまったのだった。
そこで私は、どうしたものかと思案した結果、夏目さんと香澄先生の邪魔はしたくなかったし、今日は天気にも恵まれて、日差しも差していて暖かかったこともあり、少し外の空気も吸いたくなって、私はひとり綺麗に手入れのなされた和風庭園へと訪れていた。
のんびりと花々を眺めつつ、綺麗な曲線が描かれている玉砂利の近くを散策していた時、不意に、
「美菜ちゃん」
懐かしい声に呼び止められて、視線を向けると、そこには夏目さんが居て。
「美菜ちゃんが転ぶといけないからって、要におもり頼まれた」
なんて言ってきて、可笑しそうに笑いながらこちらに向かって歩み寄ってくる夏目さんの姿に、私は、あれ? と、首を傾げた。
今日もいつものメガネをかけてはいるけれど、なんだろう? いつもの真っ黒のスーツ姿じゃなく、少し暖かみのあるライトグレーのスーツを着ている所為か、おっかなさはなくて、イケメン度が増して見える……ような気がする。
それはもしかすると、香澄先生の存在がそうさせるのかもしれない。恐るべし恋の威力。
そこまで考えが至って、私は、ふふっと笑みを零してしまっていた。
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