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◆番外編◆ 新年に訪れた神宮寺家で☓☓☓

#9

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そこでようやく、要さんにしてやられた、ということに気づいた私が、一瞬、なんだ嘘だったんだ、良かった、と、ホッと安堵しかけたものの。

要さんの笑いはおさまらないどころか、とうとう堪えられないといった様子で、プッと吹き出し、ハハハッと盛大な笑い声をあげて、本格的に笑い始めてしまった。

私がめいっぱいほっぺたを膨らませて、ムッとした表情で、後ろの要さんの方に振り返るも。

一向に笑いのおさまる気配のない要さんに、だんだん腹が立ってきて、怒りはどんどん増幅してゆく一方だ。

――メチャクチャ心配したのに、騙すなんて酷すぎる。もう絶対許さないッ!

完全に怒ってしまった私は、要さんの腕からすり抜けようと、

「もう、笑ってないで、さっさと離してくださいッ! 皆のところに戻りますッ!」

怒った声を放ちつつ、要さんの腕を振り払おうと試みるも、悔しいことに、女の力では当然びくともしない。

そこで、やっと私が怒っていることに気づいたらしい要さんの、

「みっ……美菜、悪かった。ちょっとビックリさせようと思っただけなんだ。すまない、悪かった」

焦った声が背中から響いてきたけれど。

完全にカチンときてしまってる私は、

「フンッ……もう、知りませんッ!」

鼻息荒くピシャリと言い放ち、宣戦布告とばかりに、要さんからプイッと顔をそむけてみせた。

余程のことがない限り、そうそう怒ったりしない私がいつになく怒って、プイッとそっぽ向いて見せたものだから、これはマズイと思ったのだろうか……。

要さんはますます焦った様子で、なんとかして私の機嫌を取ろうと、さっきから、あの手この手で、どんなに私が無視を決め込もうと、懲りることなく何度も何度もお伺いを立ててくる。

最初のうちは、

『美菜、悪かった。もうあんなことは絶対しないから許してほしい』

『この通り頼む、美菜、こっち向いて俺の話を聞いてくれないか?』

とか言ってきて、後ろから包み込むようにして腕に閉じ込めている私の耳元に顔を埋めてきて、何度も許しを請おうとしてきた要さん。

あんまり必死な要さんがだんだん可哀想になってきて、私の頭の中のもう一人の自分が、

『こんなに謝ってるんだから、もう、許してあげてもいいんじゃないの?』

と、囁きかけてきて。

――そうだよね? 充分反省してるようだし、もう許してあげてもいいよね?

そう思い、口を開きかけたところに。

頭の中の、ちょっとひねくれたもう一人の自分が、今度は、

『何甘いこと言ってんの? ここで許しちゃったら、もう一生いいなりよ? ここはとことん怒って、めいっぱい猛省させなきゃ』

まだまだ折れちゃいけないって訴えかけてきて。

もう許してあげようと開きかけていた筈の私の口は、またまた貝のように閉ざされてしまったのだった。

よくコミックとかで、天使と悪魔がおのおの好き勝手に囁きかけてきて、あっちへフラフラこっちへフラフラ、気持ちが揺らめく場面があるけれど。

まさにそんな状態で、私の気持ちは、許す、許さない、の狭間をぐらぐらと揺らぎまくっていた。
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