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◆番外編◆ なにより愛しいもの~side要~

#15

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愛しい美菜に寄り添って、頬や頭を撫でていた俺の身体に、自分の手を伸ばしてすがってくる美菜が、ボソッと漏らした声と同時に、また大粒の涙を零し始めた。

「……くる……しぃ」

「み、美菜? そんなに、泣くほど痛いのか? ごめん、すぐやめるから、待って――」

俺は、美菜にそんなにも辛い想いをさせてしまってるのかと心配になって、中断しようと、身体を起こしつつ言葉を掛けたのだけれど……。

何故か、急に慌て出した美菜が俺の背中に回してた両腕を脇下から肩へと移して、放さないとばかりに、グイッと俺の肩ごと自分の方へ引き寄せるようにして抱きついてきて。

「ち、違、そうじゃなくて、嬉しすぎて、胸がイッパイで、苦しい、っていう意味です」

俺の首元に顔を埋めてきた美菜がまたまたそんな可愛いことを言ってきた。

そんな美菜の可愛すぎる言葉に、ホッとするというよりも、折角、処女の美菜に合わせて、先走ってしまわないように、必死で己自身を抑えてるっていうのに……。

い、今ので、美菜の中のアレがよりいっそう元気に主張し始めたじゃねーかよ。

――もう、どうなっても知らないからな?

そうは思っていても、美菜が痛がるかもしれないと思うと、俺は一ミリだって動くことなんてできない。

まぁ、でも、輕口は叩いてしまうのだけれど。

「そんな可愛いこと言われたら、美菜が痛がっても、無茶苦茶に動きたくなるだろう?」

そんな俺の気持ちなんて知らない美菜は、

「ウソ、要さん、凄いっ! い、今、大きくなった! 少しは、気持ち良くなってくれてるってことですよね? 嬉しい!

要さんが気持ち良くなるなら、早く動いてください」

こんな場面にはそぐわない、嬉しそうな声で、どこまでも無邪気なことを言って抱きついてくる。

……とは、言われても、また前みたく痛みを我慢して無理をしてるんじゃないかと、俺は美菜の言葉を鵜呑みにできず、躊躇してしまう訳で。

「……いや、でも、痛いんだろう?」

それなのに、美菜から返ってきたものは、予想だにしないものだった。

「少し。でも、そんなこと言ってたら、いつまで経っても要さんのものになれないじゃないですか。それに、このままだったら、きっと、いつまで経っても痛いままです。その方がもっと辛いです。だから、早く気持ち良くしてください」

美菜が言ってきたもっともな言葉に、呆けた俺は一瞬言葉をなくしてしまっていた。

美菜のことになると、俺は冷静じゃいられないらしい。

――あー、もう、本当に、美菜には敵わない。

愛しい美菜のことになると、間抜けにもヘタレにも成り下がってしまう俺は、つくづくそう思い知らされた。

目から鱗が落ちるとは、このことを言うんだろうな。

呆けたままの俺がそんなことを思っていると、また美菜の声が聞こえてきて。

俺の首元に抱きついている美菜の声に耳をそばだて集中していると。

「最近の要さんは優しすぎです。あんまり優しくされちゃったら、私、調子に乗って、ワガママになっちゃいますよ?」

少し拗ねているような声色で、けれどもそんな可愛いことを言ってくる。

――美菜がどんなにワガママになろうが何でも叶えてやりたいし、むしろワガママを言って欲しいぐらいだというのに……。

そしてさらに、言いにくいことなのか、今までの勢いはどこへやら、ボソボソと小さな声で独り言のように呟かれた言葉に、俺の胸はさらに熱くなる。

「……要さんなしじゃ居られなくなっちゃうじゃないですか」

――本当に、そうなってくれれば、これ以上嬉しいことはないだろう。

俺にとっては願ったり叶ったりの言葉だというのに……。

こんな風に、美菜の言葉にやっぱり気を良くしてしまう単純すぎる俺は、いつもの調子を取り戻すのだった。

「じゃあ、もっともっと優しくして、とろっとろに甘やかして、俺から一生離れられなくしないとな? 俺のできうる限りの力を発揮して、今から精一杯気持ち良くさせてやるから、覚悟しろ」

いつも以上に、余裕もヤル気もみなぎらせた俺の言葉を聞いた美菜の様子を窺うべく美菜の腕をやんわりと解いて見下ろせば……。

さっきの俺同様に、ポカンと放心してしまっている美菜の様子がみてとれる。

見下ろす俺が顔を美菜の顔へとゆっくり近付けば、大きく見開かれた綺麗な瞳をパチパチと瞬かせている美菜と視線が重なった刹那、俺は美菜の柔らかな唇へと深く口づけた。

――さっき宣言した言葉同様、愛しい美菜のことを俺から一生離れられなくするために……。
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