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◆番外編◆ なにより愛しいもの~side要~
#8
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なんとか早く美菜を泣き止ませようと慌てた俺が、顔を覆い隠して泣いている美菜の手をやんわりと持ち上げると。
一瞬そうはさせるかという風に、俺の手を払いのけようと、手に力を入れて僅かに抵抗する素振りを見せた美菜だったが……。
「美菜、泣くな。俺はバイじゃない」
という焦り過ぎてしまった俺の放った声を聞いた途端。
美菜の両手からは力が抜けて、涙で濡れた瞳は、酷く驚いたように徐々に見開かれていき、最後にはビックリ眼へと変貌を遂げてしまった。
そりゃ、俺自身からバイだと聞かされてたんだから、美菜が驚くのも無理はない。
俺は、美菜のビックリ眼を真っ直ぐ見つめて、少しも逸らすことなく、美菜の露わになった涙で濡れた目尻や頬にソッと手を添わせて。
ゆっくりと優しく涙を拭いながら、なるだけ優しく言い聞かせるようにして、一言一言に想いを込めるように低く落ち着いた声で囁きを落とした。
「美菜、俺は、美菜と出逢ってから今まで、美菜のことを煩わしいなんて思ったことは、一度もない。これからも、俺が美菜のことを煩わしいなんて思うことは、絶対にない。美菜が謝る必要もない。
だから頼む。泣き止んで、俺の話をちゃんと聞いて欲しい」
すると、さっきまで泣いてた筈の美菜が俺の言葉に了承する返事を返す代わりに、大きくコクンと頷いてくれて。
気持ちを落ち着けようとしているのか、フウと大きく息をついてから、俺のことを真っ直ぐに見つめ返してくる。
その真っ直ぐな美菜の眼差しに見つめられると、俺は責められているような、そんな錯覚に陥りそうになる。
俺はそれを堪えて、美菜に何から言えばいいのか考えを纏めようと、頭をフル稼働させたのだが、上手く纏まりそうにない。
――そりゃそうだ。
今まで、美菜を自分勝手に巻き込んで、逃げられないように契約なんて鎖で、ガンジガラメにした挙げ句、酷いことをしたこともあったというのに、美菜には余計な不安まで抱かせておいて。
そんなことを都合よく、全部棚に上げて、美菜に好きだと言われて浮かれて、そんなことにも気付いてやれなかったなんて、自分勝手にも程がある。
こんな身勝手な俺のことを、美菜は変わらず好きだと言ってくれるだろうか?
俺が想ってるように、いつか、俺と一緒に、未来を築きたいと想ってくれるだろうか?
次々に浮かんできてしまうネガティブな思考に、怖じ気づいてしまいそうな俺が、美菜のことを窺い見れば……。
俺がこれから何を言ってくるのかと、一言一句聞き逃すまいという風に、美菜が真っ直ぐに見つめ返してくる。
その綺麗に澄んだ円らな瞳には俺の姿が映し出されていて。
美菜から見た俺は、一体どんな風に見えるだろうか?
何か言ったところで、受け入れて貰えないんじゃないだろうか?
身勝手で最低な男だと軽蔑されるんじゃないだろうか?
そうやって、また怖じ気づいてしまいそうになる自分の弱い心をなんとか奮い立たせて、俺は覚悟を決めて、力の限り声を絞り出した。
「俺はゲイでもないし、もう契約なんて、気にしなくていい。今思えば、契約を持ちかけたのも、美菜のことが気になって仕方なくて。あの頃はまだ自覚がなかっただけで、美菜のことが好きだったからだと思う。それに、美菜が夏目を好きなんだって勘違いして、腹が立って、酷いこともしてしまって、後で機嫌とったって、許されることじゃないよな……。だからもう、好きになってはくれないだろうって思ってた。
けど、やっと美菜に好きだと言って貰えて、浮かれてたとはいえ、もっと早く言うべきだったのに、遅くなって、不安にさせて、本当に悪かった。美菜、ごめん」
一瞬そうはさせるかという風に、俺の手を払いのけようと、手に力を入れて僅かに抵抗する素振りを見せた美菜だったが……。
「美菜、泣くな。俺はバイじゃない」
という焦り過ぎてしまった俺の放った声を聞いた途端。
美菜の両手からは力が抜けて、涙で濡れた瞳は、酷く驚いたように徐々に見開かれていき、最後にはビックリ眼へと変貌を遂げてしまった。
そりゃ、俺自身からバイだと聞かされてたんだから、美菜が驚くのも無理はない。
俺は、美菜のビックリ眼を真っ直ぐ見つめて、少しも逸らすことなく、美菜の露わになった涙で濡れた目尻や頬にソッと手を添わせて。
ゆっくりと優しく涙を拭いながら、なるだけ優しく言い聞かせるようにして、一言一言に想いを込めるように低く落ち着いた声で囁きを落とした。
「美菜、俺は、美菜と出逢ってから今まで、美菜のことを煩わしいなんて思ったことは、一度もない。これからも、俺が美菜のことを煩わしいなんて思うことは、絶対にない。美菜が謝る必要もない。
だから頼む。泣き止んで、俺の話をちゃんと聞いて欲しい」
すると、さっきまで泣いてた筈の美菜が俺の言葉に了承する返事を返す代わりに、大きくコクンと頷いてくれて。
気持ちを落ち着けようとしているのか、フウと大きく息をついてから、俺のことを真っ直ぐに見つめ返してくる。
その真っ直ぐな美菜の眼差しに見つめられると、俺は責められているような、そんな錯覚に陥りそうになる。
俺はそれを堪えて、美菜に何から言えばいいのか考えを纏めようと、頭をフル稼働させたのだが、上手く纏まりそうにない。
――そりゃそうだ。
今まで、美菜を自分勝手に巻き込んで、逃げられないように契約なんて鎖で、ガンジガラメにした挙げ句、酷いことをしたこともあったというのに、美菜には余計な不安まで抱かせておいて。
そんなことを都合よく、全部棚に上げて、美菜に好きだと言われて浮かれて、そんなことにも気付いてやれなかったなんて、自分勝手にも程がある。
こんな身勝手な俺のことを、美菜は変わらず好きだと言ってくれるだろうか?
俺が想ってるように、いつか、俺と一緒に、未来を築きたいと想ってくれるだろうか?
次々に浮かんできてしまうネガティブな思考に、怖じ気づいてしまいそうな俺が、美菜のことを窺い見れば……。
俺がこれから何を言ってくるのかと、一言一句聞き逃すまいという風に、美菜が真っ直ぐに見つめ返してくる。
その綺麗に澄んだ円らな瞳には俺の姿が映し出されていて。
美菜から見た俺は、一体どんな風に見えるだろうか?
何か言ったところで、受け入れて貰えないんじゃないだろうか?
身勝手で最低な男だと軽蔑されるんじゃないだろうか?
そうやって、また怖じ気づいてしまいそうになる自分の弱い心をなんとか奮い立たせて、俺は覚悟を決めて、力の限り声を絞り出した。
「俺はゲイでもないし、もう契約なんて、気にしなくていい。今思えば、契約を持ちかけたのも、美菜のことが気になって仕方なくて。あの頃はまだ自覚がなかっただけで、美菜のことが好きだったからだと思う。それに、美菜が夏目を好きなんだって勘違いして、腹が立って、酷いこともしてしまって、後で機嫌とったって、許されることじゃないよな……。だからもう、好きになってはくれないだろうって思ってた。
けど、やっと美菜に好きだと言って貰えて、浮かれてたとはいえ、もっと早く言うべきだったのに、遅くなって、不安にさせて、本当に悪かった。美菜、ごめん」
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