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◆番外編◆ かなわないもの~side要~

#13

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愛おしい美菜との口づけの後、腕の中に閉じ込めていた美菜の身体から後ろ髪をひかれながらも離れた俺は、ベッド脇のサイドボードへと手を伸ばした。

美菜と一緒に暮らすようになってから用意しておいた避妊具を取り出すためにだ。

像の姿が印象深い真新しいパッケージの封を手早く開封させ、そこから抜いた四角いそれを口で開け放ち、中のモノを反り勃つ自身のアレへとあてがい包み込んだ。

久々だったが、思っていた以上に硬度を増していたため難なく済ませることができた。

いよいよこの瞬間が訪れたんだな、と感慨深く耽っているその間も惜しくて、はやる気持ちを抑えながら美菜へと意識を集中させた俺は、美菜の白く細い脚へと両手を滑らせた。

美菜のその滑らかな白い肌をじっくり味わうように脚首から太腿まで撫で上げてから抱えて押し開くと、露わになった花芽と泥濘はもう充分なほど濡れそぼっていて。

怪しく艶めいているその様さまは妖艶で、俺を惹きつけて誘い込んでいるような気さえしてくる。

このまま欲と本能のままに、避妊具なんて取っ払って熱く滾る己自身を突き立てて、そのまま何もかもをぶちまけたいなんて非道なことまで浮かんでくる始末。

どうやら、長年の溜まりにたまってた欲と夏目に対する嫉妬心が俺を支配しようとしているようだ。

そこまで考えが及んだ途端、さっき泣かしてしまった美菜の泣き顔が頭に浮かんできた。

――美菜にはいつも笑っていてほしい。

毎朝、朝に弱い美菜は朝食を食べるのに手間取っていて、それをいつも夏目に咎められている。

その時の二人のやり取りを見るのが俺の毎朝の日課になっていた。

悔しいけれど、夏目と一緒に居る時の美菜はいつも楽しそうで。

その時に見せる美菜の笑顔は無邪気で、とても輝いて見える。

そんな笑顔を見られるのが嬉しい反面、そんな風に見えるのが夏目の所為だと思うと歯がゆくもある。

いつか、あの笑顔を俺だけに向けてくれる日がくるのだろうか? いや、きて欲しい。

――今は、中身のないモノかもしれないが、こうやって少しずつ積み重ねて、いつか確かな絆に変えてみせる。

なんとか欲や嫉妬心に囚われそうになっていた自分を律して、美菜の両脚を抱え込んだ。

熱く滾ってはちきれんばかりの己自身を美菜の濡れそぼってひくつく花芽と泥濘へとあてがって。

じっくりと焦らすように前後に撫でつけてやれば、美菜のソコはピチャピチャと厭らしい水音をたてながら、美菜の腰は俺を惑わせ誘い込むようにして僅かに揺れ始めた。

そんな厭らしい情交の音に紛れ込むように「ひゃぁっ!! やぁ……ンンッ」という美菜の艶めいた甘い声と吐息が響き渡っていく。

まだ擦り合わせているだけだというのに、えもいわれぬ愉悦がゾクゾクと背骨の髄を伝って首筋へと駆け巡っていく。

何度も何度も互いを擦りあわせて、それに抗い愉悦に引き込まれないように美菜を気遣いながらその瞬間を見定めているうち。

美菜の艶めいた声が一際高くなって達した瞬間を合図に、俺はゆっくりゆっくりと慎重に泥濘のその先へと腰を押し進めた。

その刹那、熱く滾った己自身の先端の窪みが強い圧力によって押し潰されて、その侵入を阻むかのように強く抗われて……。


「……っ」声にならない声が漏れていく。


そのお陰で冷静さを取り戻すことができた俺は、俺以上の痛みに悶えて苦しみながらも俺の背中に腕をまわしてしがみついている美菜の様子に気づいてやることができたのだった。


「美菜、我慢するなと言っただろ?」


ついさっきまで、気遣ってやれる余裕なんてなかったというのに……。

どの口が言ってるんだろうと自分でも呆れてしまうが、それだけ美菜を好きだということだから、そこは目を瞑ってて欲しい。

そんな風に、言い訳がましいことを考えていた俺は、美菜から返ってきた次の言葉によって、全ての動きを緊急停止させられることになるのだった。


「少しでも入ってるんですよね? だったら、あと少しでゴールってことじゃないですか。構わず最後までやっちゃってくださいっ! それくらい我慢できますから!」

全ての機能が緊急停止してしまった俺は、文字通り微動だにすることができずに美菜の脚を抱えたままで己自身の先っぽを挿入したままでいた。

そんな情けない間抜けな状態で、美菜の言葉を頭の中で反芻しているうちに、強い圧力によって抗われた己自身が力なく押し出されてしまって。

それと同時に、俺は美菜の様子を窺うために息のかかる位置までその距離を詰めた。


「美菜、まさかとは思うが、最後まで挿入したら、それで終わりだと思ってるのか?」


確認のために放った俺の言葉に、美菜がどう反応するかを確かめるためにだったのだが。


「……あの、そうじゃないんですか?」


美菜は、何を訊かれたのかが分からないって風に、一瞬ポカンとはしたものの、俺の反応を気にしてか、恐る恐るって感じでそう返してきた。

やっぱりこういう知識がないのは一目瞭然だった。

途端に、欲に溺れてしまっていた筈の俺から、その全ての欲が抜けて、まるで憑き物が落ちたような、例えるならそんな感じだ。

気付けば、愛おしい美菜のことを身体ごと包み込むようにして腕に閉じ込めていて。


「美菜は何もかも真っ白で、綺麗なまんまなんだな?」


美菜を優しく包み込んだままでそんなことを呟いていた。

俺にされるがままでいる美菜を抱きしめながら、これまで美菜にしてきたことを思い返して、何も知らない真っ白な美菜に自分がどれだけのことをしてきたかと思うと、胸が押し潰されるようで苦しくなってきた。

美菜が入院中に夏目が、


『美菜ちゃんは美優と一緒で、妹みたいなもんだからなぁ? 真っ白な穢《けが》れを知らない処女の美菜ちゃんが、要色に染められて、やらしーことを色々仕込まれて、それを一生懸命やっちゃうのかと思うと……。もー心配で、心配で、お兄さんとしては堪んねーわぁ』


そう言ってたことまで不意に浮かんできて。


「美菜が真っ白なら……俺なんて……真っ黒に汚れてしまってるんだろうなぁ」


俺はいたたまれない気持ちになって、思わずそんな言葉まで零してしまっていた。

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