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◆番外編◆ かなわないもの~side要~
#4
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美菜のお陰で、こうしてちゃんと前に進めているというのに、肝心の美菜の心が別のところに向いているなんて、なんとも皮肉なものだ。
なんとも複雑なやるせない想いを抱えながら、熱でうなされ続けている美菜に付き添っていた俺は。
譲のしつこい勧めにより、光石総合病院内の泌尿器科でED専門医による診察を受けさせられていたのだった。
始めは、『またいつものお節介が始まった』と、特に相手にしなかった俺だったのだが……。
美菜の病室に、診察でもない筈なのにフラッと現れたと思ったら、
「三十越したら気を付けておかないと、動脈硬化が原因で、アレに真っ先に影響が出てEDになることもあるから、チョコばっか食べてるお前のことが心配なんだよ?
それに、この子まだ若いんだし。さっさとやっとかないと、横から掻っ攫われちゃうかも知れないだろう?
やっと要がそういう気持ちになれたのに、もしダメになったらと思うと……俺、心配でさぁ……。
前に診て貰ってから随分経ってるし、この機会に、しっかり診てもらっといたほうがいいと思うんだ。
薬に抵抗あるって言ってたけど、副作用の少ない薬もあるし。種類も増えてきてるから、案外あっけなく解決するかも知れないしさぁ」
そんなことを言ってきた譲。
いつになく真剣な表情をした譲のことをそれ以上無下にすることもできず、呆気なく押し切られてしまったのだった。
――本音を言ってしまえば、美菜を他の誰かになんて渡したくないと思ったからだった。
癪だが、きっと譲は、それを分かって敢えて美菜の名前を出したのだろうと思う。
譲に弱みを握られたことが面白くなっかった俺は、美菜の居る病室だというのに、ついうっかり舌打ちなんてしてしまうのだった。
それはさておき、診断の結果はというと……。
動脈硬化の心配は特になく。二十代、三十代のEDに多い『心因性ED』だと言われて。数年前に下されたものと同じ結果だったのだが、それだけでは終わらなかった。
……というのも、譲が余計なことでも言っていたのか、
『ED治療薬の助けを借りるなどして、行為を最後まで遂行させて、まずは性的能力に自信をつけて、精神的に前向きになることも大事だし、有効です。
ただ失敗を恐れて目を背けていたのでは、何の解決にもなりませんし、パートナーの女性を欲求不満にさせることにもなりかねません。実際、それが原因で不仲になった患者さんもおられました』
と、同じ年頃のちょっとチャラそうな若干女好きな譲と同じ匂い漂う男性医師に、にこやかな表情で脅されてしまった可哀想な俺は、ここでも半ば押し切られるようにして。
『効果が緩やかで、じわじわと効いてくるのが特徴で、しかも勃起も自然ですし。なにより持続性もあって副作用の発症率も低いので、コレは超お勧めです。実は僕もよく使ってます!』
そう言って、結局薬まで処方されたのだった。
――譲といい、この医者といい、ここはチャラい奴しかいないのか? 本当に大丈夫なのか?
とは思いつつも、譲に言われた、
『この子まだ若いんだし。さっさとやっとかないと、横から掻っ攫われちゃうかも知れないだろう?』
という言葉が浮かんできて。
それと一緒に、以前見かけた若いショコラティエや夏目の姿までもが浮かんできてしまい。
俺は慌てて、それらを頭から追い払った。
邪念を追い払った俺は、いつになるかは分からないが、美菜の気持ちが俺の方に向いて、美菜が望んでくれるのであれば……。
その時のために取っておくだけなら……と、そっと自分の荷物の中に処方してもらった薬を忍ばせたのだった。
この時の俺は、まさか、あんな急展開が待ち受けているなんて、これっぽっちも思っていなかったのだ。
なんとも複雑なやるせない想いを抱えながら、熱でうなされ続けている美菜に付き添っていた俺は。
譲のしつこい勧めにより、光石総合病院内の泌尿器科でED専門医による診察を受けさせられていたのだった。
始めは、『またいつものお節介が始まった』と、特に相手にしなかった俺だったのだが……。
美菜の病室に、診察でもない筈なのにフラッと現れたと思ったら、
「三十越したら気を付けておかないと、動脈硬化が原因で、アレに真っ先に影響が出てEDになることもあるから、チョコばっか食べてるお前のことが心配なんだよ?
それに、この子まだ若いんだし。さっさとやっとかないと、横から掻っ攫われちゃうかも知れないだろう?
やっと要がそういう気持ちになれたのに、もしダメになったらと思うと……俺、心配でさぁ……。
前に診て貰ってから随分経ってるし、この機会に、しっかり診てもらっといたほうがいいと思うんだ。
薬に抵抗あるって言ってたけど、副作用の少ない薬もあるし。種類も増えてきてるから、案外あっけなく解決するかも知れないしさぁ」
そんなことを言ってきた譲。
いつになく真剣な表情をした譲のことをそれ以上無下にすることもできず、呆気なく押し切られてしまったのだった。
――本音を言ってしまえば、美菜を他の誰かになんて渡したくないと思ったからだった。
癪だが、きっと譲は、それを分かって敢えて美菜の名前を出したのだろうと思う。
譲に弱みを握られたことが面白くなっかった俺は、美菜の居る病室だというのに、ついうっかり舌打ちなんてしてしまうのだった。
それはさておき、診断の結果はというと……。
動脈硬化の心配は特になく。二十代、三十代のEDに多い『心因性ED』だと言われて。数年前に下されたものと同じ結果だったのだが、それだけでは終わらなかった。
……というのも、譲が余計なことでも言っていたのか、
『ED治療薬の助けを借りるなどして、行為を最後まで遂行させて、まずは性的能力に自信をつけて、精神的に前向きになることも大事だし、有効です。
ただ失敗を恐れて目を背けていたのでは、何の解決にもなりませんし、パートナーの女性を欲求不満にさせることにもなりかねません。実際、それが原因で不仲になった患者さんもおられました』
と、同じ年頃のちょっとチャラそうな若干女好きな譲と同じ匂い漂う男性医師に、にこやかな表情で脅されてしまった可哀想な俺は、ここでも半ば押し切られるようにして。
『効果が緩やかで、じわじわと効いてくるのが特徴で、しかも勃起も自然ですし。なにより持続性もあって副作用の発症率も低いので、コレは超お勧めです。実は僕もよく使ってます!』
そう言って、結局薬まで処方されたのだった。
――譲といい、この医者といい、ここはチャラい奴しかいないのか? 本当に大丈夫なのか?
とは思いつつも、譲に言われた、
『この子まだ若いんだし。さっさとやっとかないと、横から掻っ攫われちゃうかも知れないだろう?』
という言葉が浮かんできて。
それと一緒に、以前見かけた若いショコラティエや夏目の姿までもが浮かんできてしまい。
俺は慌てて、それらを頭から追い払った。
邪念を追い払った俺は、いつになるかは分からないが、美菜の気持ちが俺の方に向いて、美菜が望んでくれるのであれば……。
その時のために取っておくだけなら……と、そっと自分の荷物の中に処方してもらった薬を忍ばせたのだった。
この時の俺は、まさか、あんな急展開が待ち受けているなんて、これっぽっちも思っていなかったのだ。
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