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◆番外編◆ 贖罪~この想いごとすべて~side夏目
#4 ~贖罪~
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――悪いのは全部俺だ。美優は何も悪くない。
あの時そう言って、美優のことを抱きしめてやれていたら、何かが変わっていただろうか?
最後まで本当の気持ちを伝えることなく、美優が呆気なく逝ってしまってから、六年が経った今でも、あの時に抱き寄せた美優の泣き顔を不意に想い出しては、そんな考えてもしょうがないことを考えてしまうときがある。
美菜ちゃんが要と契約を交わして、要のマンションで一緒に暮らすようになってからというもの。
今までは俺ひとりでやってた、夕飯の準備だったり、朝食の下ごしらえだったりを美菜ちゃんが手伝ってくれるようになってからというもの。
美菜ちゃんが契約の時に自分の出した条件の所為で、要への想いに苦しんでいる姿を目にするたび。
美菜ちゃんを通して、美優のことを想い出してしまっている自分が居ることに気づかされて。
なんとかして手を差し伸べてやろうとするたびに、胸が締め付けられるような想いがした。
それは全部、美菜ちゃんの姿に、美優の面影を重ねてしまっているからだろうと思い込んでしまっていて。
この頃の俺は、まだ、自分の気持ちに何ひとつ気づいちゃいなかったんだ。
俺は、本当に間抜けだったと思う。
美菜ちゃんに初めて会ってから、今まで知らず知らずのうちに募っていたものが、こんなにも大きくなってから気づくなんて、ほんとどうかしてるよな。
けど、言い訳させてもらうと、俺は美優を失った時、もうこんな想いは二度としたくないと思ったし。
美優をこんなにも辛い目に遭わせてしまった俺は、もうこんな想いは、誰にも二度とさせたくないとも思った。
美優を幸せにしてやることのできなかった俺は、幸せになっちゃいけないとも思った。
だから、俺は、自分のそんな想いに気づくのが怖くて、ずっと誤魔化してきたせいだったんじゃないかと思う。
結局、美優を失ってしまった時のあの辛かった想いを思い出したくなかったってことだ。
ずっと、辛い現実から目をそらして、今まで逃げてきたから、罰が当たったんだ。
それが、隼くんに酷いことを言われ、自分が一番辛かっただろうと思うのに、自分のことなんて二の次で、真っ先に俺なんかのことを心配して涙を流した美菜ちゃん。
気づいた時には、そんな優しい美菜ちゃんのことを俺は自分の腕の中に包み込んでいて。
そしたら、あの日、涙を流していた美優が泣き止むまでの間、ずっと抱き寄せてやってた美優の泣き顔が脳裏によぎって、それでようやく、俺は正気に戻ることができた。
きっと、天国の美優が怒っていたに違いない。
要と俺との話を聞いて誤解してしまった美菜ちゃんの誤解を解くために、美優の話をしていた時だってそうだ。
あの時、俺は、危うく美菜ちゃんに、自分の想いをぶちまけてしまいそうになった。
それを止めてくれたのも、やっぱり美優だった。
~END~
【次回は、こちらでは以前ちょこっと公開仕掛けて中断した、本編で二人が至るまでを要視点で書いたものになります。】
あの時そう言って、美優のことを抱きしめてやれていたら、何かが変わっていただろうか?
最後まで本当の気持ちを伝えることなく、美優が呆気なく逝ってしまってから、六年が経った今でも、あの時に抱き寄せた美優の泣き顔を不意に想い出しては、そんな考えてもしょうがないことを考えてしまうときがある。
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この頃の俺は、まだ、自分の気持ちに何ひとつ気づいちゃいなかったんだ。
俺は、本当に間抜けだったと思う。
美菜ちゃんに初めて会ってから、今まで知らず知らずのうちに募っていたものが、こんなにも大きくなってから気づくなんて、ほんとどうかしてるよな。
けど、言い訳させてもらうと、俺は美優を失った時、もうこんな想いは二度としたくないと思ったし。
美優をこんなにも辛い目に遭わせてしまった俺は、もうこんな想いは、誰にも二度とさせたくないとも思った。
美優を幸せにしてやることのできなかった俺は、幸せになっちゃいけないとも思った。
だから、俺は、自分のそんな想いに気づくのが怖くて、ずっと誤魔化してきたせいだったんじゃないかと思う。
結局、美優を失ってしまった時のあの辛かった想いを思い出したくなかったってことだ。
ずっと、辛い現実から目をそらして、今まで逃げてきたから、罰が当たったんだ。
それが、隼くんに酷いことを言われ、自分が一番辛かっただろうと思うのに、自分のことなんて二の次で、真っ先に俺なんかのことを心配して涙を流した美菜ちゃん。
気づいた時には、そんな優しい美菜ちゃんのことを俺は自分の腕の中に包み込んでいて。
そしたら、あの日、涙を流していた美優が泣き止むまでの間、ずっと抱き寄せてやってた美優の泣き顔が脳裏によぎって、それでようやく、俺は正気に戻ることができた。
きっと、天国の美優が怒っていたに違いない。
要と俺との話を聞いて誤解してしまった美菜ちゃんの誤解を解くために、美優の話をしていた時だってそうだ。
あの時、俺は、危うく美菜ちゃんに、自分の想いをぶちまけてしまいそうになった。
それを止めてくれたのも、やっぱり美優だった。
~END~
【次回は、こちらでは以前ちょこっと公開仕掛けて中断した、本編で二人が至るまでを要視点で書いたものになります。】
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