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◆番外編◆ 贖罪~この想いごとすべて~side夏目
#3 ~追憶~
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「爽兄、私、お父さんと同じ病気なんだって? あと一年、もつかどうか分からないって言われちゃった」
月並みかもしれないが、一瞬、目の前が真っ暗になった気がした。
こういう時、ドラマや小説とかで、よくこんな風に表現されているが、あれって本当なんだな、ふとそんなことを思ったのを今でも鮮明に覚えている。
あの頃の俺は、余計なことを考えないようにするためにも、仕事の忙しさに逃げていた。
仕事に追われている間は、美優と要のことを考えないで済む。そんな不純な動機で仕事に勤しんではいたが……。
もともと要領も良かったからか、上司にも可愛がってもらってたし、顧客への受けも頗《すこぶ》る良かった。
一応、付き合っている彼女もいたし、何もかもが順調だった……その筈だった。
そんな時、スマホのメッセージアプリに、美優から久々にメッセージが送られてきて。
【爽兄、大事な話があるの。仕事が落ち着いたら連絡ください。】
俺はてっきり、『私、要さんと結婚することになったの』そう言われるとばかり思っていたのに……。
だから俺は、美優に会って、もしそう言われても、自分の気持ちを気取られたりしないようにしなきゃいけない、そのことで頭ん中はいっぱいだった。
それが、まったく予期せぬことを聞かされてしまった俺は、ショックなあまり、しばらくの間何も考えることなんてできなかった。
そんな俺に、まるで追い打ちでもかけるかのように……。
「……実はね、先月要さんからプロポーズしてもらって、受けるつもりだったの。要さんのお陰で、やっと爽兄のこと忘れられそうだったのに。それなのに……。病気のこと聞いて、真っ先に浮かんだのが爽兄のことだなんて、皮肉なもんだね。へへっ、罰が当たっちゃったのかなぁ……。
要さんが爽兄の親友だって知った時、私まだ高校生で、要さんがまさか私のこと好きになってくれるなんて思ってもみなくて。でも、『付き合いたい』って言ってもらった時は、凄く嬉しかったし、要さんなら爽兄のこと忘れさせてくれるかもって思ったの。
でも、本当は、どんなかたちでもいいから爽兄の傍に居たい、そう思ったのも事実で。爽兄のこと忘れるために要さんのこと利用しちゃったから。だから、要さんと結婚するなんてムシが良すぎるって、きっと罰が当たったんだね?
やだな、爽兄にこんなことまで言うつもりなかったのに……。爽兄の顔見てたら、色々なことが溢れてきちゃって、止まらなくなっちゃった。爽兄、ごめんなさい。ごめんなさい……」
淡々と、ことの経緯《いきさつ》を話していた美優が、一筋の大きな涙の雫を零したのを境に、俺から顔を隠すようにして俯いたまま、声を震わせながら泣き始めてしまった。
きっと、医者に病気のことを聞かされてから、誰にも言えず、今までひとりであれこれ思い悩んでいたのだろうことが溢れて止まらなくなってしまったのだろう……。
そんな美優の座るソファの隣に移動した俺は、持っていたハンカチを差し出して、無遠慮に向けられる好奇な視線に美優が触れないように、震え続ける肩をそっと抱き寄せてやることしかできないでいた。
月並みかもしれないが、一瞬、目の前が真っ暗になった気がした。
こういう時、ドラマや小説とかで、よくこんな風に表現されているが、あれって本当なんだな、ふとそんなことを思ったのを今でも鮮明に覚えている。
あの頃の俺は、余計なことを考えないようにするためにも、仕事の忙しさに逃げていた。
仕事に追われている間は、美優と要のことを考えないで済む。そんな不純な動機で仕事に勤しんではいたが……。
もともと要領も良かったからか、上司にも可愛がってもらってたし、顧客への受けも頗《すこぶ》る良かった。
一応、付き合っている彼女もいたし、何もかもが順調だった……その筈だった。
そんな時、スマホのメッセージアプリに、美優から久々にメッセージが送られてきて。
【爽兄、大事な話があるの。仕事が落ち着いたら連絡ください。】
俺はてっきり、『私、要さんと結婚することになったの』そう言われるとばかり思っていたのに……。
だから俺は、美優に会って、もしそう言われても、自分の気持ちを気取られたりしないようにしなきゃいけない、そのことで頭ん中はいっぱいだった。
それが、まったく予期せぬことを聞かされてしまった俺は、ショックなあまり、しばらくの間何も考えることなんてできなかった。
そんな俺に、まるで追い打ちでもかけるかのように……。
「……実はね、先月要さんからプロポーズしてもらって、受けるつもりだったの。要さんのお陰で、やっと爽兄のこと忘れられそうだったのに。それなのに……。病気のこと聞いて、真っ先に浮かんだのが爽兄のことだなんて、皮肉なもんだね。へへっ、罰が当たっちゃったのかなぁ……。
要さんが爽兄の親友だって知った時、私まだ高校生で、要さんがまさか私のこと好きになってくれるなんて思ってもみなくて。でも、『付き合いたい』って言ってもらった時は、凄く嬉しかったし、要さんなら爽兄のこと忘れさせてくれるかもって思ったの。
でも、本当は、どんなかたちでもいいから爽兄の傍に居たい、そう思ったのも事実で。爽兄のこと忘れるために要さんのこと利用しちゃったから。だから、要さんと結婚するなんてムシが良すぎるって、きっと罰が当たったんだね?
やだな、爽兄にこんなことまで言うつもりなかったのに……。爽兄の顔見てたら、色々なことが溢れてきちゃって、止まらなくなっちゃった。爽兄、ごめんなさい。ごめんなさい……」
淡々と、ことの経緯《いきさつ》を話していた美優が、一筋の大きな涙の雫を零したのを境に、俺から顔を隠すようにして俯いたまま、声を震わせながら泣き始めてしまった。
きっと、医者に病気のことを聞かされてから、誰にも言えず、今までひとりであれこれ思い悩んでいたのだろうことが溢れて止まらなくなってしまったのだろう……。
そんな美優の座るソファの隣に移動した俺は、持っていたハンカチを差し出して、無遠慮に向けられる好奇な視線に美優が触れないように、震え続ける肩をそっと抱き寄せてやることしかできないでいた。
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