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煌めく未来へ
#1
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♪゜・*:.。. .。.:*・♪
深い眠りから目を覚ました私の視界に映し出されたものは真っ暗な暗闇だった。
――あれ? ここはどこだろう?
いくら目を凝らしてみても、ただ真っ暗な闇が広がっているだけで、音だって何も聴こえない。
寝惚けてるのかな? もうひと眠りしようかなぁ、なんて思い再び瞼を閉ざした私の耳に、突如小さな女の子の泣いているような声が飛び込んできた。
そして、不思議なことに、瞼を閉じたままだというのに、視界になのか脳裏になのかは不明だけど、泣き声の主であろう小さな女の子の姿がぼんやりと浮かんできて。
両手で顔を覆い尽くして大泣きしているらしいその女の子は、どうやらデパートのフロアらしき場所で、迷子になってしまったようだ。
顔を覆い隠いているからよく分からないけど、服装や背格好からして、たぶん四、五歳?、小さかった頃の私のようだった。
何故なら、私がその頃お気に入りだった、地元のマスコットキャラクターのぬいぐるみのキーホルダーを、肩に斜め掛けされた、これまたお気に入りだったピンクのフリフリが付いたポシェットにつけているからだ。
それに、目を覚ましたと思っていたけど、どうも私は、まだ夢の中にいるようだった。
小さかった頃、お母さんやお祖母ちゃんによく連れて行ってもらった地元のデパートを懐かしいなぁ、なんて思いつつ、その光景を眺めていると。
「どうしたの? 迷子になっちゃったのかな?」
見た感じ、中学生くらいだろうか、とても綺麗な顔立ちをした優しそうなお兄ちゃんが泣きじゃくる私に声を掛けてくれたようで。
「……ママと……ばぁば……かうのッ」
「……え? ママとばぁばを買う? あぁ、ママとお祖母ちゃんと何か買いに来たってことかな?」
「……うん」
「じゃぁ、ママとお祖母ちゃん、一緒に探そうか?」
「うんッ!」
なんとか話は伝わったようだった。
その頃からゲンキンだったらしい私は、そのお兄ちゃんの言葉に、泣いてたのも忘れ、満面の笑顔で応えている。
そこへ、近くにいたらしい、黒いスーツを着た男性が加わって、
「坊ちゃん、その子は私《わたくし》にお任せください」
そういって、私のことを抱き上げて笑いかけてくれたようだけれど。
見知らねおじさんに急に抱きかかえられて怖かったのか、私は手足をバタバタとさせてギャン泣きし始めた。
「あーあー、せっかく泣き止んでたのに。泣かせちゃったじゃんっ」
「……も、申し訳ありません」
きっと、迷子の私のことをデパートの店員さんにでも託そうとしてくれていたのだろう、そのおじさんは、可哀想なことに、お兄ちゃんに呆れた声を浴びせられ、申し訳なさそうに、深々と頭まで下げている。
一方、私はと言えば……。
おじさんの抱っこが相当怖かったようで、おじさんから離れると、お兄ちゃんに後ろからぎゅっと抱き着いて、
「おにーちゃんがいーのッ!」
キッとおじさんを睨み付け、怒った口調でそう言い放った私は、お兄ちゃんから何が何でも離れる気はなさそうだ。
「ハハハッ、しょうーがないなぁ。じゃぁ、このチョコあげるから、泣き止んで名前教えてくれる?」
「知らない人にお菓子もらったらダメ、名前も言っちゃダメッって、ママが言ってたもん」
「ハハハッ、分かった分かった。お兄ちゃんは神宮寺要っていうんだ。もう知らない人じゃないよね。だから君の名前も教えてもらえないかな?」
「じん……ぐーじー? かーなーめぇ? 変な名前ぇ。私は綾瀬美菜ちゃん、可愛い名前でしょ」
「ハハハッ、美菜ちゃんか。うん、ホントだ。可愛い名前だね」
「うんッ!おにーちゃんありがとー!だーいすきぃ!」
そういって、おませだったらしい私は、あろうことか、そのお兄ちゃんの口にチュッとキスをお見舞いしたのだった。
♪゜・*:.。. .。.:*・♪
そこで、プッツリと映像が途切れて、気づけば、私は、病室のベッドの上だった。
ふふっ、いくら要さんのことが好きだからって、ご都合主義にも程がある。
そんな、どこかの恋愛小説のようなロマンチックな話、あるわけないのに……。
っていっても、夢だからしょうがないか。
そんなことをぼんやり考えていた私が辺りに視線をさまよわせた先には、当たり前のように、大好きな要さんの姿があって。
ぼやけていた視界が徐々にクリアになると、要さんの途轍もなく心配そうな表情が私を待ち構えていて。
「良かった。美菜、ごめんな。また俺のせいで嫌な思いをさせてしまって。本当にすまない」
気づけば私は、そういって申し訳なさそうに謝ってきた要さんの胸に抱き寄せられていた。
私を大事そうに抱き寄せてくれた要さんの声は微かに震えていて、その振動とぬくもりと鼓動の音とが、私の身体に確かに伝わってくる。
どうやら、今度こそ、私は目を覚ましたらしい。
深い眠りから目を覚ました私の視界に映し出されたものは真っ暗な暗闇だった。
――あれ? ここはどこだろう?
いくら目を凝らしてみても、ただ真っ暗な闇が広がっているだけで、音だって何も聴こえない。
寝惚けてるのかな? もうひと眠りしようかなぁ、なんて思い再び瞼を閉ざした私の耳に、突如小さな女の子の泣いているような声が飛び込んできた。
そして、不思議なことに、瞼を閉じたままだというのに、視界になのか脳裏になのかは不明だけど、泣き声の主であろう小さな女の子の姿がぼんやりと浮かんできて。
両手で顔を覆い尽くして大泣きしているらしいその女の子は、どうやらデパートのフロアらしき場所で、迷子になってしまったようだ。
顔を覆い隠いているからよく分からないけど、服装や背格好からして、たぶん四、五歳?、小さかった頃の私のようだった。
何故なら、私がその頃お気に入りだった、地元のマスコットキャラクターのぬいぐるみのキーホルダーを、肩に斜め掛けされた、これまたお気に入りだったピンクのフリフリが付いたポシェットにつけているからだ。
それに、目を覚ましたと思っていたけど、どうも私は、まだ夢の中にいるようだった。
小さかった頃、お母さんやお祖母ちゃんによく連れて行ってもらった地元のデパートを懐かしいなぁ、なんて思いつつ、その光景を眺めていると。
「どうしたの? 迷子になっちゃったのかな?」
見た感じ、中学生くらいだろうか、とても綺麗な顔立ちをした優しそうなお兄ちゃんが泣きじゃくる私に声を掛けてくれたようで。
「……ママと……ばぁば……かうのッ」
「……え? ママとばぁばを買う? あぁ、ママとお祖母ちゃんと何か買いに来たってことかな?」
「……うん」
「じゃぁ、ママとお祖母ちゃん、一緒に探そうか?」
「うんッ!」
なんとか話は伝わったようだった。
その頃からゲンキンだったらしい私は、そのお兄ちゃんの言葉に、泣いてたのも忘れ、満面の笑顔で応えている。
そこへ、近くにいたらしい、黒いスーツを着た男性が加わって、
「坊ちゃん、その子は私《わたくし》にお任せください」
そういって、私のことを抱き上げて笑いかけてくれたようだけれど。
見知らねおじさんに急に抱きかかえられて怖かったのか、私は手足をバタバタとさせてギャン泣きし始めた。
「あーあー、せっかく泣き止んでたのに。泣かせちゃったじゃんっ」
「……も、申し訳ありません」
きっと、迷子の私のことをデパートの店員さんにでも託そうとしてくれていたのだろう、そのおじさんは、可哀想なことに、お兄ちゃんに呆れた声を浴びせられ、申し訳なさそうに、深々と頭まで下げている。
一方、私はと言えば……。
おじさんの抱っこが相当怖かったようで、おじさんから離れると、お兄ちゃんに後ろからぎゅっと抱き着いて、
「おにーちゃんがいーのッ!」
キッとおじさんを睨み付け、怒った口調でそう言い放った私は、お兄ちゃんから何が何でも離れる気はなさそうだ。
「ハハハッ、しょうーがないなぁ。じゃぁ、このチョコあげるから、泣き止んで名前教えてくれる?」
「知らない人にお菓子もらったらダメ、名前も言っちゃダメッって、ママが言ってたもん」
「ハハハッ、分かった分かった。お兄ちゃんは神宮寺要っていうんだ。もう知らない人じゃないよね。だから君の名前も教えてもらえないかな?」
「じん……ぐーじー? かーなーめぇ? 変な名前ぇ。私は綾瀬美菜ちゃん、可愛い名前でしょ」
「ハハハッ、美菜ちゃんか。うん、ホントだ。可愛い名前だね」
「うんッ!おにーちゃんありがとー!だーいすきぃ!」
そういって、おませだったらしい私は、あろうことか、そのお兄ちゃんの口にチュッとキスをお見舞いしたのだった。
♪゜・*:.。. .。.:*・♪
そこで、プッツリと映像が途切れて、気づけば、私は、病室のベッドの上だった。
ふふっ、いくら要さんのことが好きだからって、ご都合主義にも程がある。
そんな、どこかの恋愛小説のようなロマンチックな話、あるわけないのに……。
っていっても、夢だからしょうがないか。
そんなことをぼんやり考えていた私が辺りに視線をさまよわせた先には、当たり前のように、大好きな要さんの姿があって。
ぼやけていた視界が徐々にクリアになると、要さんの途轍もなく心配そうな表情が私を待ち構えていて。
「良かった。美菜、ごめんな。また俺のせいで嫌な思いをさせてしまって。本当にすまない」
気づけば私は、そういって申し訳なさそうに謝ってきた要さんの胸に抱き寄せられていた。
私を大事そうに抱き寄せてくれた要さんの声は微かに震えていて、その振動とぬくもりと鼓動の音とが、私の身体に確かに伝わってくる。
どうやら、今度こそ、私は目を覚ましたらしい。
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