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揺らめく心と核心~side要~
#7
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すると、腹の立つことに、夏目は、酷く感心したように、ははぁーんというような妙な表情をしたかと思えば、
「美菜ちゃん、あの時確か、『副社長じゃなくて、夏目さんなら良かったのに』って言ってなかったっけ?」
今度は、俺の揚げ足を取るようなことを言ってきやがった。
俺は思わず、「どっちでも一緒だろうがっ!!」声を荒げてしまったのだが……。
次に返ってきた夏目の言葉で、俺の頭はクエスチョンマークでいっぱいになるのだった。
「いやいや、全然違うんだって。それにしても、どうしてそんなピンポイントで聞いてるんだよ。聞くなら最初から聞いとけって。 あー、お前ら二人って、どうしてこーも手間がかかんだよ。ったく。俺の身にもなってほしいよなぁ、ほんと」
それに、なにやら、心底呆れたっていうか、疲れ果てたっていうような表情で項垂れてしまっている夏目。
――あ!? どういうことだ? さっぱり分からん。
「意味が分からん。俺にも分かるように説明しろ。寝不足で頭が回らん」
「……まさかお前、美菜ちゃんに心変わりされたと思って、夜も眠れないくらい落ち込んでたのか? 子供までデキたのに? ハハッ、お前何やってんの?」
「何がおかしいっ!? そんなことより、どうなんだ? お前はなんて言ったんだ?」
「フハハッ、そんなに鬼みたいな顔で怒るなよ。お前が怒った顔って迫力あんだからさぁ……。ハハッ、わりぃ、ちょっとタンマ……」
「……ウルサイッ!俺はもともとこーいう顔だっ!それより、笑う間があったら、さっさと説明しろっ!」
「フハハハッ、もとからって、よくいうよ。ハハハッ」
「だから笑うなと言ってるだろうがっ!」
挙句の果てには、俺の言葉を聞いたとたんに、何がそんなに可笑しいのか、笑いがおさまらない様子の夏目は、とうとう腹を抱えて笑い出してしまう始末。
お陰で、苛立ちがどんどん蓄積されていく俺の怒りはピークに達しかけていた。
そんなタイミングで、やっと笑いをおさめた様子の夏目が、目尻にたまった涙を指で拭いつつ、俺の方に向き直ってきて、ふうと息をついた。
どうやらようやく話す気になったらしい。
「いやさぁ、美菜ちゃん、検査結果が出るまで寝ちゃっててさ。あの時、寝起きで、なんか変な夢見ちゃったみたいでさ。『跡取りのためだったらどうしよう?副社長の要さんが私のこと好きになるワケないのに、好きって言われてその気になっちゃった』とかって、訳わかめなこと言っててさ」
「――夢!?」
「そう。んで、俺が宥めててもしばらく泣いちゃって。でもお前いないし。いやぁ、焦った焦った。あれだな、妊婦って本当に情緒不安定になるんだな?」
「……あぁ、そういえば、小石川がそんなことをいってたような気がするな」
「まぁ、それで最後には、どうも、『要さんが副社長じゃなくて、夏目さんだったら良かったのに』って言ってたから。
きっと、”要が副社長の立場じゃなくて、俺みたいな立場だったら、そんな心配なかったのに”って、言うことだと思う。
まぁ、安心しろって。美菜ちゃんはお前のことで頭がいっぱいだからさぁ」
いつものように面白おかしくおどけて、事の詳細を説明し始めて。
俺がそれに相づちをうちながら、頭の中を整理し、ようやく理解にいたったという訳だったのだが……。
「……なんだよ……そう……だったのか」
「おいおい、泣くなよ、要」
どうやら俺は、説明を聞いてるうちに、寝不足が祟って、気が緩んでしまったのか、ホッとして涙を流してしまってたようだった。
まぁ、そんなこんなで、すべてが誤解だったと分かった俺の気持ちも幾分落ち着き、今度は無性に美菜に逢いたくなってしまうのだった。
実は、今日は、昨日のこともあり、美菜は大事を取って休暇をとっているため、会社には居ないから余計だ。
どうしても美菜に直接逢って、昨日素直に手放しで喜べなかった分、子供を授かった喜びを分かち合いたかった。
それなのに……。
「はぁっ!? 午後からでもいいから、帰らせてほしいだぁ!? お前、何言ってんの? お前が美菜ちゃんとの結婚式早めたいって言って、朝一で、会長にも社長にも掛け合って。
来春社長になるんだったら、結婚早めてもいいって条件で、OKだしてもらったんだろうがっ!? なのに、んな暇あるワケねーじゃんっ!
コホンッ、さぁて、副社長、冗談はここまでにして。先ほど社長の麗子様より、諸々の案件を引き継ぎましたので。その確認からしていただきましょうかぁ」
「……」
俺の願いは、質の悪い鬼と化した夏目によって却下された挙句。
いつものすかしたインテリ銀縁メガネ仕様の畏まった口調で、どこに隠し持っていたのか、大きな書類の山をドンっと目の前に突き付けられてしまい。
俺としたことが、黙らされてしまう羽目になった。
「美菜ちゃん、あの時確か、『副社長じゃなくて、夏目さんなら良かったのに』って言ってなかったっけ?」
今度は、俺の揚げ足を取るようなことを言ってきやがった。
俺は思わず、「どっちでも一緒だろうがっ!!」声を荒げてしまったのだが……。
次に返ってきた夏目の言葉で、俺の頭はクエスチョンマークでいっぱいになるのだった。
「いやいや、全然違うんだって。それにしても、どうしてそんなピンポイントで聞いてるんだよ。聞くなら最初から聞いとけって。 あー、お前ら二人って、どうしてこーも手間がかかんだよ。ったく。俺の身にもなってほしいよなぁ、ほんと」
それに、なにやら、心底呆れたっていうか、疲れ果てたっていうような表情で項垂れてしまっている夏目。
――あ!? どういうことだ? さっぱり分からん。
「意味が分からん。俺にも分かるように説明しろ。寝不足で頭が回らん」
「……まさかお前、美菜ちゃんに心変わりされたと思って、夜も眠れないくらい落ち込んでたのか? 子供までデキたのに? ハハッ、お前何やってんの?」
「何がおかしいっ!? そんなことより、どうなんだ? お前はなんて言ったんだ?」
「フハハッ、そんなに鬼みたいな顔で怒るなよ。お前が怒った顔って迫力あんだからさぁ……。ハハッ、わりぃ、ちょっとタンマ……」
「……ウルサイッ!俺はもともとこーいう顔だっ!それより、笑う間があったら、さっさと説明しろっ!」
「フハハハッ、もとからって、よくいうよ。ハハハッ」
「だから笑うなと言ってるだろうがっ!」
挙句の果てには、俺の言葉を聞いたとたんに、何がそんなに可笑しいのか、笑いがおさまらない様子の夏目は、とうとう腹を抱えて笑い出してしまう始末。
お陰で、苛立ちがどんどん蓄積されていく俺の怒りはピークに達しかけていた。
そんなタイミングで、やっと笑いをおさめた様子の夏目が、目尻にたまった涙を指で拭いつつ、俺の方に向き直ってきて、ふうと息をついた。
どうやらようやく話す気になったらしい。
「いやさぁ、美菜ちゃん、検査結果が出るまで寝ちゃっててさ。あの時、寝起きで、なんか変な夢見ちゃったみたいでさ。『跡取りのためだったらどうしよう?副社長の要さんが私のこと好きになるワケないのに、好きって言われてその気になっちゃった』とかって、訳わかめなこと言っててさ」
「――夢!?」
「そう。んで、俺が宥めててもしばらく泣いちゃって。でもお前いないし。いやぁ、焦った焦った。あれだな、妊婦って本当に情緒不安定になるんだな?」
「……あぁ、そういえば、小石川がそんなことをいってたような気がするな」
「まぁ、それで最後には、どうも、『要さんが副社長じゃなくて、夏目さんだったら良かったのに』って言ってたから。
きっと、”要が副社長の立場じゃなくて、俺みたいな立場だったら、そんな心配なかったのに”って、言うことだと思う。
まぁ、安心しろって。美菜ちゃんはお前のことで頭がいっぱいだからさぁ」
いつものように面白おかしくおどけて、事の詳細を説明し始めて。
俺がそれに相づちをうちながら、頭の中を整理し、ようやく理解にいたったという訳だったのだが……。
「……なんだよ……そう……だったのか」
「おいおい、泣くなよ、要」
どうやら俺は、説明を聞いてるうちに、寝不足が祟って、気が緩んでしまったのか、ホッとして涙を流してしまってたようだった。
まぁ、そんなこんなで、すべてが誤解だったと分かった俺の気持ちも幾分落ち着き、今度は無性に美菜に逢いたくなってしまうのだった。
実は、今日は、昨日のこともあり、美菜は大事を取って休暇をとっているため、会社には居ないから余計だ。
どうしても美菜に直接逢って、昨日素直に手放しで喜べなかった分、子供を授かった喜びを分かち合いたかった。
それなのに……。
「はぁっ!? 午後からでもいいから、帰らせてほしいだぁ!? お前、何言ってんの? お前が美菜ちゃんとの結婚式早めたいって言って、朝一で、会長にも社長にも掛け合って。
来春社長になるんだったら、結婚早めてもいいって条件で、OKだしてもらったんだろうがっ!? なのに、んな暇あるワケねーじゃんっ!
コホンッ、さぁて、副社長、冗談はここまでにして。先ほど社長の麗子様より、諸々の案件を引き継ぎましたので。その確認からしていただきましょうかぁ」
「……」
俺の願いは、質の悪い鬼と化した夏目によって却下された挙句。
いつものすかしたインテリ銀縁メガネ仕様の畏まった口調で、どこに隠し持っていたのか、大きな書類の山をドンっと目の前に突き付けられてしまい。
俺としたことが、黙らされてしまう羽目になった。
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