【R18】訳あり御曹司と秘密の契約【本編完結・番外編不定期更新中】

羽村美海

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揺らめく心と核心~後編~

#4

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♪゜・*:.。. .。.:*・♪



夜になって、夕食を済ませた私は、広いリビングのソファで、大好きな要さんと寄り添いあい、絶賛幸せな一時を過ごしている真っ最中だ。

今日一日、立て続けに色んなことがあったけれど……。

一体どうなるのだろうと心配だった隼さんのことも、あの後なんとか一件落着し、私の心は幸せ一色、真っピンク、すっかりお花畑の住人と化していた。

そんな私と要さんとの幸せな一時に突入してしまう前に、今から数時間前、私たちが隼さんからどんな話を聞かされたかというと――。

隼さん曰く、ことの発端は、数か月前の海外出張中、オーストラリア在住の西園寺静香さんの演奏会に招かれ、そこで知り合った白人女性とのトラブルだったらしい。

その女性とは、静香さんが用意してくれたホテルで出逢い、意気投合し、隼さんは女性と一夜を共にすることになったらしいのだが……。

事が進むにつれ、以前私にも話していた通り、少々人には理解されがたい性癖の持ち主だという隼さんのそういうに、拒絶反応を示した女性が、『そんなの聞いてない!騙された!』と騒ぎだし、警察官まで呼ぶ騒ぎになったという。

でも、その女性がたまたま静香さんの知り合いだったため、事なきを得たらしい。

こうして、完全に静香さんの策略に嵌ってしまった隼さんは、静香さんのある目的のために、散々利用されたのだという。

ある目的とは、海外の有名な指揮者と不倫関係にあった静香さんは、その不倫相手の奥さんと修羅場になり、結局、奥さんを選んだ男性にはフラれてしまい、その噂はすぐに広まり、プライドの高い静香さんは、拠点を日本に移すことにしたらしく。

日本での活動を始めるにあたっての話題作りに、『YAMATO』の次期社長である要さんと結婚しようと画策、それで私の存在が邪魔だったという。

そこで、隼さんを使って嫌がらせをし、それでも別れる気配のない私に業を煮やし、バーに居合わせた木村先輩に、あたかも自分が要さんの本命であるように振舞って、私のことを心配した木村先輩の気持ちを利用したらしいのだ。

隼さんは、静香さんのやり方に嫌気がさしながらも、弱みを握られていた手前、従うしかなく、音声まで録音させられていた……ということだった。

隼さんは、本当に申し訳なさそうに、私に何度も頭を下げて謝ってくれて、要さんも私が許すならと、なんとか丸く収まったのだった。

そして、要さんのお陰でどう解決したのかというと……。

静香さんは、自分と要さんとの過去を知らない父親である西園寺社長が、要さんのことを大層気に入っていたことを利用し、縁談話を持ち掛けたらしいのだが、当然それを袖にした要さん。

困った静香さんは、自分の昔からの熱烈なファンであり、西園寺社長にも大変な恩があるという大物代議士を巧みに利用し、陰でこっそり『YAMATO』に色々な圧力をかけさせていたらしい。

けれど、例のキス動画辺りから、そうじゃないかと勘ぐっていた要さんは、西園寺社長に静香さんとの過去を話し、今回のこともすべて話し、今回のことを他言しない代わりにすべてが丸く収まるようにお願いし、解決したのだという。

ちなみに、静香さんは父親に激怒され、許す代わりに、近々お見合いをさせられてしまうらしい。

要さんは、あまり細かいことまでは話してくれなかったものの……。

『兄さんは、自分のプライドよりも美菜さんのことを最優先させたんですよ。それほど美菜さんのことが大事だということです』

という隼さんの言葉に、

『……ウルサイ、さっさと帰れっ』

そう吐き捨て、私の視線から逃げるように、綺麗なお顔を明後日の方向に向けてしまった要さん。

要さんは、至極気恥ずかしそうに、耳まで紅く色づけてしまっていて。

そんな要さんの姿に、お決まりのように、ジーンと胸が熱くなってしまった私は、これ以上にないってくらい幸せで、済んでしまったことなど、もうどうでもよくなってしまうのだった。


「隼のことだが、簡単に許して良かったのか?」

「……要さん。その話、もうかれこれ十回は聞きました。そのたびに、『隼さんには、夏目さんがたーっぷりとお灸をすえてくれているようだから、私はもうそれで充分です』って、なんども言ったじゃないですか?」

「まぁ、そうなんだが……。俺としては、今後のことを考えたら、やはり会長夫婦にも相談して、もっと厳しく処分したほうが良かったんじゃないかと思って……。そうじゃないと、また美菜に何かあってからでは――」

「要さんがそうやって私のことを心配してくれるのは、とっても嬉しいし、物凄くありがたいことなんですけど……。

要さんだって、隼さんを"クビにしない代わり"に、隼さんになにやら耳打ちして、出してたじゃないですか。

兄弟なんだし、それでもういいじゃないですかね?」

「……まぁ、美菜がそういうなら」

「ところで要さん? 隼さんに出したって、一体なんだったんですか?」

「……ん? あぁ。それは、作者に口止めされてるんだが、いずれスピンオフが公開されるらしいから、その時がきたら分かるんじゃないか?」

「えー、そんなのズルいっ!」

「そんなに怒って脹れてたら胎教に悪いだろ? 隼の話はもう終わりだ。そんなことより、今は美菜との時間を大事にさせてほしい」

「////」

隼さんの話を持ち出してきたのは自分だったのに、いつものようにそんなことは棚に上げてしまった要さん。

それが、どんなに納得いかないことであったとしても、愛おし気に優しい眼差しで見つめられ、とびきり甘い声で囁かれてしまえば、ポーっとしてしまう私はたちまち何も言えなくなってしまう。

――こういう時の要さんは、いつもズルいって思う。

だって、大好きな人にそんなこと言われちゃったら、嬉しくて堪らなくて、他のことなんて、もう、どうでもよくなっちゃうんだもん。

そんな私の気持ちなんて知らないんだろう要さんは、ムッとしてしまった私のことを、愛おし気に自分の逞しくて広い胸に抱き寄せると、ぎゅっと抱きしめてくれること数十秒。

――大好きな人にこんなに大事にしてもらって、赤ちゃんまで授かって、幸せだなぁ……。

なんてことを思っていた私から少し離れて、これまたとびきり優しい眼差しで見つめてきた要さん。

今度はどんな甘い言葉を囁かれるのだろうか、それとも蕩けるような甘いキスをされちゃうんだろうか……と。

大好きな要さんとの幸せで甘い一時に夢心地で、ドキドキと胸を高鳴らせ、期待に胸を膨らませてしまっていた私は、

「少々順序が違ってしまったが……。こうして、子供まで授かったことだし。入籍だけでも先に済ませておかないか?」

要さんから、不意打ちのように投げかけられた提案に、失礼にも肩透かしを食らってしまい。

「――へ!? にゅっ、にゅう……せき?……ですか?」

素っ頓狂な声を返してしまうという、なんともおバカな大失態を犯してしまうのだった。




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