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揺らめく心と核心~後編~
#1
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隼さんの姿を目にするや否や、さっきまで穏やかな表情をしていた要さんの表情は、見る間に鬼の形相へと早変わりしていて。
今にも、怒りに任せて大噴火を起こしてしまいそうな、そんな緊張感を孕んでいる。
「隼っ、お前とは兄弟の縁を切ると言ったはずだ。今更なんの用だ!? さっさと失せろっ!」
けれど、傍に居る私のことを自分の背後に隠すようにして、隼さんの正面に立ちはだかると。
要さんは、なんとか怒りに任せて激昂してしまわないように、思いのほか静かに、それでも、怒りに満ちた地を這うような低い声を轟かせた。
「夏目、悪いが頼む」
「あぁ、了解」
そして、運転席の夏目さんに目配せすると同時、指示を出した要さんの声を聞き終えるまでもなく。
素早い身のこなしで、運転席から隼さんのところに移動した夏目さんは、隼さんの胸倉を掴んで、車のトランクルームの辺りに、隼さんの身体を背中から押し付けて動きを封じていて。
殺気だった夏目さんの表情からは、会議室の時同様、今にも殴ってしまいそうな緊迫した雰囲気がひしひしと伝わってくる。
「美菜、見苦しいところを見せてしまって悪かった。あんな奴に構うことはない。行くぞ?」
突然のことに驚きすぎて、言葉を失ってしまってた私は、要さんの優しい声で、ようやく我に返ることができたのだけれど……。
「――えぇっ!? ……でも」
そんなものしか出てはこない。
その間にも、夏目さんは隼さんのネクタイを片手で締め上げようとしているようだった。
私は私で、要さんに優しく腰を引き寄せられ、ヒョイとお姫様抱っこの体勢にされたかと思えば、そのまま後部座席へと、今まさに乗せられようとしている。
そこへ、今にも殴られそうな状況だというのに、なりふり構わず、
「そのことは重々心得ていますっ!僕はただ、いくら静香さんに弱みを握られていたとはいえ、美菜さんに酷いことをしてしまったことを、謝りに来ただけですっ!美菜さん!?お手間は取らせませんっ!どうか少しだけ、お時間いただけませんかっ!?お願いしますっ!」
必死になって懇願し続ける隼さんの声が響き渡った。
その瞬間。
『……まっ、まさか、ご懐妊されていたとは知らずに、もっ……申し訳ありませんっ! 美菜さん、大丈夫ですか? どっ、どういたしましょうか? あっ、救急車をお呼びしますので、少々待ちいただけますかっ?』
『こんな時に申し訳ありません。すぐに済ませますが、無理そうなら美菜さんを優先させます。お加減はどうですか?』
『あっ! そういえば、今日は終日社内での業務だったはず。兄に連絡いたしましょう』
『……ああ、はい、そうですね。その手がありましたね。美菜さんはこういう時にも兄さんのことを気遣うことができるお方なのですね』
『なるほど、兄さんが西園寺社長に全てお話ししたということですか……。あぁ、それなら僕の件も帳消しになりますね? いえ、そんなことを僕に言われましても……。もとより僕は、『YAMATO』のことを一番に考えてのことでしたので。それでは静香さんもお元気で、失礼いたします』
『ご安心ください。静香さんのことでしたら、兄さんのお陰でたった今解決いたしましたから。美菜さんはご自分のお身体のことだけをお考え下さい』
会議室で耳にした隼さんの言葉の数々が頭に浮かんできた私は、
「夏目さんっ!ヤメテーッ!殴っちゃダメーッ!!」
掲げた拳を隼さんに向け、今まさに振り下ろそうとしている夏目さん目掛けて、必死になって声を張り上げていた。
今にも、怒りに任せて大噴火を起こしてしまいそうな、そんな緊張感を孕んでいる。
「隼っ、お前とは兄弟の縁を切ると言ったはずだ。今更なんの用だ!? さっさと失せろっ!」
けれど、傍に居る私のことを自分の背後に隠すようにして、隼さんの正面に立ちはだかると。
要さんは、なんとか怒りに任せて激昂してしまわないように、思いのほか静かに、それでも、怒りに満ちた地を這うような低い声を轟かせた。
「夏目、悪いが頼む」
「あぁ、了解」
そして、運転席の夏目さんに目配せすると同時、指示を出した要さんの声を聞き終えるまでもなく。
素早い身のこなしで、運転席から隼さんのところに移動した夏目さんは、隼さんの胸倉を掴んで、車のトランクルームの辺りに、隼さんの身体を背中から押し付けて動きを封じていて。
殺気だった夏目さんの表情からは、会議室の時同様、今にも殴ってしまいそうな緊迫した雰囲気がひしひしと伝わってくる。
「美菜、見苦しいところを見せてしまって悪かった。あんな奴に構うことはない。行くぞ?」
突然のことに驚きすぎて、言葉を失ってしまってた私は、要さんの優しい声で、ようやく我に返ることができたのだけれど……。
「――えぇっ!? ……でも」
そんなものしか出てはこない。
その間にも、夏目さんは隼さんのネクタイを片手で締め上げようとしているようだった。
私は私で、要さんに優しく腰を引き寄せられ、ヒョイとお姫様抱っこの体勢にされたかと思えば、そのまま後部座席へと、今まさに乗せられようとしている。
そこへ、今にも殴られそうな状況だというのに、なりふり構わず、
「そのことは重々心得ていますっ!僕はただ、いくら静香さんに弱みを握られていたとはいえ、美菜さんに酷いことをしてしまったことを、謝りに来ただけですっ!美菜さん!?お手間は取らせませんっ!どうか少しだけ、お時間いただけませんかっ!?お願いしますっ!」
必死になって懇願し続ける隼さんの声が響き渡った。
その瞬間。
『……まっ、まさか、ご懐妊されていたとは知らずに、もっ……申し訳ありませんっ! 美菜さん、大丈夫ですか? どっ、どういたしましょうか? あっ、救急車をお呼びしますので、少々待ちいただけますかっ?』
『こんな時に申し訳ありません。すぐに済ませますが、無理そうなら美菜さんを優先させます。お加減はどうですか?』
『あっ! そういえば、今日は終日社内での業務だったはず。兄に連絡いたしましょう』
『……ああ、はい、そうですね。その手がありましたね。美菜さんはこういう時にも兄さんのことを気遣うことができるお方なのですね』
『なるほど、兄さんが西園寺社長に全てお話ししたということですか……。あぁ、それなら僕の件も帳消しになりますね? いえ、そんなことを僕に言われましても……。もとより僕は、『YAMATO』のことを一番に考えてのことでしたので。それでは静香さんもお元気で、失礼いたします』
『ご安心ください。静香さんのことでしたら、兄さんのお陰でたった今解決いたしましたから。美菜さんはご自分のお身体のことだけをお考え下さい』
会議室で耳にした隼さんの言葉の数々が頭に浮かんできた私は、
「夏目さんっ!ヤメテーッ!殴っちゃダメーッ!!」
掲げた拳を隼さんに向け、今まさに振り下ろそうとしている夏目さん目掛けて、必死になって声を張り上げていた。
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