241 / 427
揺らめく心と核心~前編~
#7
しおりを挟む
光石総合病院に到着した私は、学会に出席中のため不在だった譲さんの代理だという若くて綺麗な女性医師に出迎えられた。
やたら夏目さんに話しかけてくる女医さんに、いつものインテリ銀縁メガネ仕様の冷たい口調で、素っ気なく対応する夏目さん。
冷ややかな口調に態度、トレードマークの銀縁メガネは確かにいただけないけれど、それを除けば、要さんには適わないにしてもイケメンな夏目さん。
今までそんな風に見たことも考えたこともなかったけれど、女性には相当おモテになるらしい。
……そういえば、以前、話してくれた女性とはどうなったんだろう?
最近は話すどころか、避けられてるとしか思えないほどに距離を置かれてしまってるから、聞くに聞けないし。
でも、夏目さんには幸せになってほしいから、その女性と上手くいったらいいのになぁ……。
なんて思いながら、夏目さんに付き添われて諸々の検査を済ませた私は、検査結果が出るまでの間用意してくださった病室とは思えないほど広くて綺麗な病室のベッドに横になっているうち、吐き気も眩暈も収まってくれた所為で、心底ホッとしたのか、いつの間にか眠ってしまっていたようだった。
それから、どれほど時間が経ったのか……。
心地よい深い眠りについていた私は、誰かに優しく髪を撫でられているような気配でふと目を覚ました。
目を覚ました私が重たい瞼を上げれば、そこには、心配そうに私のことを見つめてくれている大好きな要さんの姿が待っていて。
ホッとした私が泣きながら、私の髪を優しく撫でてくれていた要さんの手をそっと自分の方に手繰り寄せて、何度も頬擦りをしてうっとりとしていると。
要さんの心配そうだった表情がみるみる緩んで、とびきりの微笑を満面に綻ばせたかと思えば……。
「長い間EDだったし、もう諦めかけていたが、美菜のお陰でようやく跡取りを設けることができた。ありがとう、美菜。これで会長夫婦にも恩返しができる。報酬は弾むから安心しろ。夏目、小切手を早急に用意してくれ」
要さんの口からは、信じられない言葉が次々に飛び出してきた。
――え!? どういうこと?
「かしこまりました副社長」
驚きすぎてパニックに陥ってしまった私が、ベッドに横になったまんま要さんと夏目さんのことを交互に見比べるようにして、忙しなく視線を行き来させていると。
インテリ銀縁メガネ仕様の夏目さんが、冷ややかな口調で要さんに返事を返す声が聞こえてきて。
頭を鈍器か何かで殴られてしまったような衝撃をくらってしまった私は、あまりのショックに、両手で頭を抱え込んだ。
その瞬間、
「どうした、美菜ちゃん? おいっ、大丈夫かっ?」
さっきのインテリ銀縁メガネ仕様の冷ややかな口調とはまるで違う、普段の素に戻った夏目さんの慌てふためく声が私の耳に流れ込んできた。
やたら夏目さんに話しかけてくる女医さんに、いつものインテリ銀縁メガネ仕様の冷たい口調で、素っ気なく対応する夏目さん。
冷ややかな口調に態度、トレードマークの銀縁メガネは確かにいただけないけれど、それを除けば、要さんには適わないにしてもイケメンな夏目さん。
今までそんな風に見たことも考えたこともなかったけれど、女性には相当おモテになるらしい。
……そういえば、以前、話してくれた女性とはどうなったんだろう?
最近は話すどころか、避けられてるとしか思えないほどに距離を置かれてしまってるから、聞くに聞けないし。
でも、夏目さんには幸せになってほしいから、その女性と上手くいったらいいのになぁ……。
なんて思いながら、夏目さんに付き添われて諸々の検査を済ませた私は、検査結果が出るまでの間用意してくださった病室とは思えないほど広くて綺麗な病室のベッドに横になっているうち、吐き気も眩暈も収まってくれた所為で、心底ホッとしたのか、いつの間にか眠ってしまっていたようだった。
それから、どれほど時間が経ったのか……。
心地よい深い眠りについていた私は、誰かに優しく髪を撫でられているような気配でふと目を覚ました。
目を覚ました私が重たい瞼を上げれば、そこには、心配そうに私のことを見つめてくれている大好きな要さんの姿が待っていて。
ホッとした私が泣きながら、私の髪を優しく撫でてくれていた要さんの手をそっと自分の方に手繰り寄せて、何度も頬擦りをしてうっとりとしていると。
要さんの心配そうだった表情がみるみる緩んで、とびきりの微笑を満面に綻ばせたかと思えば……。
「長い間EDだったし、もう諦めかけていたが、美菜のお陰でようやく跡取りを設けることができた。ありがとう、美菜。これで会長夫婦にも恩返しができる。報酬は弾むから安心しろ。夏目、小切手を早急に用意してくれ」
要さんの口からは、信じられない言葉が次々に飛び出してきた。
――え!? どういうこと?
「かしこまりました副社長」
驚きすぎてパニックに陥ってしまった私が、ベッドに横になったまんま要さんと夏目さんのことを交互に見比べるようにして、忙しなく視線を行き来させていると。
インテリ銀縁メガネ仕様の夏目さんが、冷ややかな口調で要さんに返事を返す声が聞こえてきて。
頭を鈍器か何かで殴られてしまったような衝撃をくらってしまった私は、あまりのショックに、両手で頭を抱え込んだ。
その瞬間、
「どうした、美菜ちゃん? おいっ、大丈夫かっ?」
さっきのインテリ銀縁メガネ仕様の冷ややかな口調とはまるで違う、普段の素に戻った夏目さんの慌てふためく声が私の耳に流れ込んできた。
0
お気に入りに追加
1,141
あなたにおすすめの小説
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました
瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる