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揺らめく心と核心~前編~

#7

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光石総合病院に到着した私は、学会に出席中のため不在だった譲さんの代理だという若くて綺麗な女性医師に出迎えられた。

やたら夏目さんに話しかけてくる女医さんに、いつものインテリ銀縁メガネ仕様の冷たい口調で、素っ気なく対応する夏目さん。

冷ややかな口調に態度、トレードマークの銀縁メガネは確かにいただけないけれど、それを除けば、要さんには適わないにしてもイケメンな夏目さん。

今までそんな風に見たことも考えたこともなかったけれど、女性には相当おモテになるらしい。

……そういえば、以前、話してくれた女性とはどうなったんだろう? 

最近は話すどころか、避けられてるとしか思えないほどに距離を置かれてしまってるから、聞くに聞けないし。

でも、夏目さんには幸せになってほしいから、その女性と上手くいったらいいのになぁ……。

なんて思いながら、夏目さんに付き添われて諸々の検査を済ませた私は、検査結果が出るまでの間用意してくださった病室とは思えないほど広くて綺麗な病室のベッドに横になっているうち、吐き気も眩暈も収まってくれた所為で、心底ホッとしたのか、いつの間にか眠ってしまっていたようだった。

それから、どれほど時間が経ったのか……。

心地よい深い眠りについていた私は、誰かに優しく髪を撫でられているような気配でふと目を覚ました。

目を覚ました私が重たい瞼を上げれば、そこには、心配そうに私のことを見つめてくれている大好きな要さんの姿が待っていて。

ホッとした私が泣きながら、私の髪を優しく撫でてくれていた要さんの手をそっと自分の方に手繰り寄せて、何度も頬擦りをしてうっとりとしていると。

要さんの心配そうだった表情がみるみる緩んで、とびきりの微笑を満面に綻ばせたかと思えば……。

「長い間EDだったし、もう諦めかけていたが、美菜のお陰でようやく跡取りを設けることができた。ありがとう、美菜。これで会長夫婦にも恩返しができる。報酬は弾むから安心しろ。夏目、小切手を早急に用意してくれ」

要さんの口からは、信じられない言葉が次々に飛び出してきた。

――え!? どういうこと?

「かしこまりました副社長」

驚きすぎてパニックに陥ってしまった私が、ベッドに横になったまんま要さんと夏目さんのことを交互に見比べるようにして、忙しなく視線を行き来させていると。

インテリ銀縁メガネ仕様の夏目さんが、冷ややかな口調で要さんに返事を返す声が聞こえてきて。

頭を鈍器か何かで殴られてしまったような衝撃をくらってしまった私は、あまりのショックに、両手で頭を抱え込んだ。

その瞬間、

「どうした、美菜ちゃん? おいっ、大丈夫かっ?」

さっきのインテリ銀縁メガネ仕様の冷ややかな口調とはまるで違う、普段の素に戻った夏目さんの慌てふためく声が私の耳に流れ込んできた。
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