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一難去ったその後で

#15

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そこへ、私の首筋に顔を埋めて荒い呼吸を繰り返していた要さんが、唇を耳元まで寄せてきて、まだ整い切らない荒い呼吸のままでしゃべり始めた。
 
「……『どうして邪魔するんですか?』って、そんなのイキそうになったからに決まってるだろう? 可愛い美菜に、『気持ちよくしてあげたい』なんて、上目遣いの可愛い顔で見つめられながら可愛いこと言われただけでもヤバいっていうのに……。
さっきみたいに健気に頑張ってご奉仕なんてされたら、気持ちよくなりすぎて、すぐにイキそうになるのは当然だ。けど、俺はどうせイクなら美菜のナカがいいから止めただけだ」
 
――なんだ、そうだったんだ。ちゃんと気持ちよくなってくれてたんだ。良かった。
 
私のことを要さんが何度も『可愛い』というその根拠はよく分からないし、男の人がこういう時に口にする常套句だとしても、大好きな人から『可愛い』なんて言ってもらえたらやっぱり嬉しい。
 
『イクなら美菜のナカがいい』なんて言ってもらえたのも嬉しい。
 
ついさっきまであんなにシュンとなってしまってたクセに、要さんの言葉ひとつでこんなにも変われるもんなんだな、とゲンキンすぎる自分に感心しているところへ、またまた要さんの声が聞こえてきた。
 
「こんな風に美菜に寄りかからなきゃならないくらい、俺から余裕を奪って追い込んでおいて、それをどう解釈したら、『気持ちよくなかった』になったかは知らないが……。まぁ、いい。俺の可愛い婚約者である美菜がしてくれたんだもんなぁ」
 
何やら意地悪気な口調でそう言ってきた要さんの口調が、途中で悪巧みでも思いついたような、そんな物言いに変わってしまった。
 
しかも、何やら意味深に、言葉の一部分だけを強調させているようだったし。
 
一体どうしちゃったんだろうか、と私が思案する暇もなく。
 
要さんは、四つん這いになっている私の腰の括れを掴んで、背後から覆い被さっている自分のお腹のほうへ、グイッと引き寄せたかと思うと。  
 
要さんの滾るように熱くなって、これ以上にないってほどに硬度マシマシの昂りを、私の蕩け切った泥濘へと、後ろからゆっくりとあてがってきた。
 
「ひゃっ」
 
その瞬間、甘やかな刺激に襲われ、短い悲鳴のような声をあげてしまった。
 
それだけでも恥ずかしいというのに……。

身体が昂ぶりを受け入れた時の感覚を思い出したように、その先の行為への期待感に、昂ぶりを求めるように腰は勝手に揺らめき、最奥までがキュンと疼いてしまう。
 
それと同時に、蜜口からは蜜までとろりと溢れてくるものだから、恥ずかしくて堪らない気持ちになってくる。
 
もうそれだけで火を噴いてしまうんじゃないかというくらい、首から上が熱くなってしまう。
 
なんとか少しでも火照ってしまった顔を冷まそうと、ベッドに突いていた両手で目の前にあった枕を抱え込み、枕へ顔を突っ伏して逃げ込んだ可哀想な私。
 
まさかこの直後、私のこれらの一連の行動のすべてが、裏目に出るとは、思いもしなかったのだ。
 
そんな可哀想な私に、まるでトドメでも刺すかのように、自身の昂ぶりで、泥濘を上下に撫でつけるようにしてじっくり勿体ぶるようにして、何度も行き来させつつ、
 
「速く挿入してほしいからって、そんなに蜜を垂らしてぐちゃぐちゃにさせて、腰を揺らして、尻まで突き出して。そんなに焦るな。そんなに焦らなくても、礼として、今度は俺が、今からたーっぷりと気持ちよくさせてやる。さっきのような妙な心配なんてできないくらい、余裕なんてなくしてやるから、覚悟しろ」 
 
さっきの私の一連の行動を意地悪な口調で指摘した直後、もう何度聞いたか分からないくらいの、あのお決まりのセリフを口にした要さん。

さっきまでの余裕なさげな様子が嘘のように、要さんは、もうすっかり余裕を取り戻してしまったご様子で、ヤル気も充分なようだ。
 
私なんて、要さんの言葉に、何かを返すような、そんな余裕なんて、もうとっくの昔に手放してしまっているというのに……。

枕に突っ伏し、一連の行動まで指摘され倍増しになった羞恥に身悶えていた私は、僅かに後ろへ腰を引いた要さんによって、パンッと腰を強く打ち付けられ、一気に昂りを穿たれてしまっていた。

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