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深まる疑惑

#24

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酔っぱらって隼さんと静香さんに支えられてた筈の要さんは、大きな声を放った直後。


隼さんと静香さんから素早く離れ、ドアをバッタンとこれまた凄い勢いで叩きつけるようにして閉ざしすと、


「塩でも撒いておけ」


ドア近くの夏目さんに苛ついたような低い声でそう吐き捨てた要さん。


かなり酔っぱらっている様子の要さんの足取りは覚束なくて、壁に手をついてやっと立っているようなそんな感じで、ご機嫌だって頗《すこぶ》る悪いご様子だ。


「……あっ、あぁ。それより大丈夫なのかよ?ずいぶん酔ってるようだけど」
「これくらいなんでもない」
「いやいや、ふらついてんじゃん。ほら、肩貸すって」
「平気だと言ってるだろっ!」
「……はいはい、分かったよ」


要さんのことを案じて肩を貸そうとしてくれている夏目さんにまで苛ついた低い声を放つ始末。


夏目さんは慣れた調子で、久々のお手上げポーズで要さんから身を引くと、私の方に苦笑いを浮かべている。


もしかしたら、要さんも、私や夏目さんと同じように、隼さんに色々と腹の立つようなことを言われたのかもしれないし、静香さんと何かがあったのかもしれない。


でも、隼さんと静香さんのことを追い払うような要さんの、さっきの態度を見る限り、要さんと静香さんとの間には、私が心配していたようなことはないのかもしれない。


――まぁ、けどそれは、要さんの口から聞くまでは、安心なんてできはしないのだけれど……。


どちらにしても、こんなに酔っぱらって機嫌の悪い要さんの姿を見るのは初めてで、どうすればいいかが分からない私は、二人の様子をただ黙って見守ることしかできないでいる。


シーンと緊張感に包まれて静かだった空間に、要さんと夏目さんのやり取りに続いて、隼さんと静香さんがドアをドンドンと叩くような音が微かに響いてきた。


そんなものなど、全く聞こえていないかのように、要さんがふらつきながらも靴を脱ぎ、廊下を歩いて私の傍までくる頃には、部屋は元の静けさを取り戻していて。


夏目さんも、自分の部屋へと戻っていったようだった。


「美菜、ついててやれず、すまなかった。大丈夫だったか?」


要さんに手を貸してもいいものかと思案しつつも、見守ることしかできずにいた私の身体を、ぎゅうっと自分の胸へと抱き寄せた要さんの思いの外優しい声が私の耳に流れ込んできて。


私のことを抱き寄せてくれた要さんの酔ってる所為で、いつもより熱い体温がじんわりと伝わってくる。


隼さんのお陰で、あんなに不安だった筈なのに、こうして要さんの腕に抱かれているだけで、不安なんてどこかに吹き飛んでしまったかのように安心できるから不思議だ。


ようやくホッとすることができた私は、要さんをなんとか安心させようと、


「はい。雅さんや麗子さんが居なくなってすぐに夏目さんが来てくれたので、大丈夫でした」


出来る限りの明るい声でそう返せば……。


なにやら小さな声で、呟くように独り言《ごち》た要さんの、


「……俺が心配になって様子を見に行った時も、夏目のお陰で、美菜はずいぶん楽しそうだったもんな」


ただでさえ酔ってて、掠れてしまってる声の所為で、所々しか聞き取ることができなかった私が「……え!?」と、聞き返しても、


「……いや、なんでもない」
「え!?でも……」


答えてくれる気のない要さんに、それでも気になる私が食い下がろうとするも、要さんは完全スルーで、


「そんなことより、美菜を今すぐ抱きたい」


唐突に私の着ているワンピースの裾を手で捲り上げ、太股を厭らしく撫でながら、そんなことを言ってきた。


「……えっ!?」


私は驚くばかりだ。


そうかと思えば、今度は強引に、身体を廊下の壁へと、いともたやすく背中から追い込むようにして張り付けられ、


「嫌なのか?」


そう迫られて。


「いや、そうじゃなくて」


……嫌である筈がない。


嫌である筈がないのだけれど……。


……酔ってる所為か、要さんの表情から感情が読み取れないから、なんだか胸がザワザワとして落ち着かない。


「だったら問題ないだろ?夏目も自分の部屋に戻ったようだし」
「……あっ、や、あんっ……」


けれども、要さんに全てを知り尽くされ、慣らされてしまっている私の身体は、耳元や首筋、胸などの弱いポイントに、燃えるように熱い舌や唇で貪るようにして愛撫をなされてしまえば、もう私の口からは甘い嬌声しか出てはこないのだった。

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