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甘くて苦いビターチョコのように
#22
しおりを挟む「ヒャッ!!」
たった今、要さんからお見舞いされた言葉の数々に、ただでさえ驚いているというのに……。
その興奮冷めやらぬなか、今度はいきなり抱き上げられて、体勢まで変えられてしまい。
変な声を上げて、要さんの腕の中にすっぽりと収まった私の心臓は、もはや爆発寸前ってくらいに、バックンバックン暴れまくっている。
要さんの腕の中で、こんなにピッタリと身体をくっつけているのだから、きっとこの煩いくらい騒がしい鼓動だって伝わっているに違いない。
でも、こうして要さんとピッタリとくっついていると、さっき、要さんが言ってくれたことを裏付けるように。
要さんの胸からも、私と同じように速いリズムを刻み続ける鼓動の振動が、互いの肌を伝って直に伝わってくる。
さっきまで、あんなに不安だった筈なのに……。
それが今は、嘘みたいに、騒がしい鼓動とは裏腹に、心の方は穏やかに凪いでいく。
要さんの身体に身を委ね、要さんの肩に顎を乗せて、ボンヤリとそんなことを考えていたからだろうか。
変な声を上げただけで、なんの反応も示してこない私のことが、どうやら心配になってきた様子の要さん。
「美菜、やっぱりこの体勢、辛いか?」
『中断しない』なんて、高圧的に言ってた割には、私の返事次第では、中断してしまいそうな雰囲気を醸し出してるようにしか聞こえない、要さんの不安げな声に。
言葉なんかでは、言い尽くせないほどの愛しさが込み上げてくる。
さっきみたいに、ことあるごとに、膨れ上がってしまう不安材料は、きっとこれからも尽きることはないんだろうと思う。
きっとその度に、私はことあるごとに、美優さんのことに結びつけてしまうんだろうと思う。
ーーそれでも私は、要さんの傍から離れることなんて、そんなこと、もう、できそうにない。
それに、もし、美優さんの存在がなかったら、私は今こうして、要さんの傍には居られなかったんだろうとも思う。
けれど、今こうして、要さんの傍に居るのは美優さんじゃなくて、私なんだもん。
『好きだ』、『愛してる』って言ってくれたんだもん。
ーー要さんの言葉を信じて、ずっと傍に居たい。
だったら、さっき要さんが言ってくれたように、私も、要さんにもっともっと好きになってもらって、ずっと一緒に居たいって思ってもらえるように頑張るしか、他に方法はない。
でも、やっぱり、どんなに私が頑張って足掻いても、美優さんには、一生かかっても敵わないかもしれない。
それでも、要さんが私のことを
『大事にしたい』
『好きだ』
『愛してる』
そう言ってくれるのなら、例え美優さんに敵わなくても、要さんの傍に居させて欲しい。
そしたら、いつか、要さんにとって、一番の存在になれる日がくるかもしれないし。
ーーだったら、やっぱり、これから先も、要さんにそう言ってもらえるように頑張るしかない。
要さんのことをこんなにも好きになっちゃってるんだもん。
考えても仕方のないことに囚われて、一人で落ち込んで、そんなことに時間を費やすなんて勿体ない。
ーー要さんを好きなこの想いも、要さんと一緒に過ごすこの時間も、大事にしたい。
大好きな要さんの言葉のお陰で、行ったり来たりの堂々巡りだった考えから抜け出して。
やっとそう思えるようになった私は、要さんの肩から顔を上げて、要さんへと向かい合って、まっすぐに見つめ返した。
そしたら、さっきの心配そうな声と同様、やっぱり心配そうな表情をした要さんの姿がそこにはあって。
さっき要さんの言ってくれた言葉通り、私のことを本当に大事にしてくれてるんだ、ってことを実感することができた。
もうそれだけで、単純な私の胸は満たされて、もう満タンで溢れてしまいそうだ。
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