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甘くて苦いビターチョコのように

#17

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要さんに組み敷かれて、優しい眼差しで見下ろされながら、要さん自身の全てを受け入れることができた私は、嬉しさのあまり胸が一杯で苦しくなってしまって。

要さんがさっき唇で優しく拭ってくれたばかりだというのに、感極まった私の瞳から、またまた大粒の涙が溢れてきてしまうから。

涙と一緒に、「……くる……しぃ」という言葉まで雫してしまうのだった。

「み、美菜? そんなに、泣くほど痛いのか? ごめん、すぐやめるから、待ってーー」

それを心配してくれたらしい要さんが、やっと念願かなって結ばれたというのに、中断しようとして、身体を起こそうとするから堪らない。

「ち、違、そうじゃなくて、嬉しすぎて、胸がイッパイで、苦しい、っていう意味です」

慌てた私が要さんの身体を強く引き寄せ、首元に顔を埋めて、阻止するために放った言葉を聞いた要さんから返ってきたモノは思いもよらないモノだった。

「そんな可愛いこと言われたら、美菜が痛がっても、無茶苦茶に動きたくなるだろう?」

そして、その言葉を言い終えるとほぼ同じタイミングで、私の中の要さんが容量を増したのが分かって。

その途端、私の中で、ちゃんと気持ち良くなってくれてることがなにより嬉しくて。

こんな時だというのに、子供みたいにはしゃいでしまった私は、

「ウソ、要さん、凄いっ! い、今、大きくなった! 少しは、気持ち良くなってくれてるってことですよね? 嬉しい!

要さんが気持ち良くなるなら、早く動いてください」

どこまでも無邪気なことを言って要さんに抱きついてしまうのだった。

「……いや、でも、痛いんだろう?」

それなのに、どこまでも優しい要さんは、またまたそんなことを言ってくる。

ーーもう、そんな痛みなんてどうでもいいくらい、要さんと結ばれたことがクチャクチャ嬉しいというのに……。

「少し。でも、そんなこと言ってたら、いつまで経っても要さんのものになれないじゃないですか。

それに、このままだったら、きっと、いつまで経っても痛いままです。その方がもっと辛いです。だから、早く気持ち良くしてください」

だから、要さんに、なんとか私のこの気持ちを少しでも分かってもらえるように、続けて欲しいと訴えたというのに。

一方の要さんは、想いを告げたあの日、私が痛いのを我慢してた所為か、まだ疑ってるようで、何も返してはくれなくて……。

こうやって、優しくしてくれるのは嬉しいんだけど。

それでも、ここでやめてしまえるということは、要さんにとって、それくらいの想いでしかないんだろうから。

それに、この優しさは、美優さんの身代わりであるんだろう私を失うのが怖いからなのかもしれない。

想いを告げたあの日、要さんのアレの処理のお手伝いをした時、要さんが漏らした『美菜、ごめんな』というあの言葉は、美優さんの身代わりにしたことに対してのモノだった気がして……。

数日経った今でも、あの言葉が頭から離れてくれない。

やっぱりそうなんだと思うと、切なくて、悲しくて、泣いちゃいそうになる。

でも、本当は、要さんが言ってくれたことをこんな風に疑ったりせずに、信じたいとも思う。

だって、優しくされたらやっぱりメチャクチャ嬉しいんだもん。

けれど、優しくされて嬉しいからって、鵜呑みにしてしまうと、要さんのことをもっともっと好きになっちゃいそうで、怖くもなる。

いつか、要さんが私のことを煩わしくなった時、私は要さんから離れられなくなっちゃいそうなんだもん。

私は、これ以上余計なことは考えないように、要さんへと向き合って。

「最近の要さんは優しすぎです。

あんまり優しくされちゃったら、私、調子に乗って、ワガママになっちゃいますよ?」

『そんなに優しくしないで』ってつもりで言った後、

「……要さんなしじゃ居られなくなっちゃうじゃないですか」

思わず本音をポロリと雫してしまった私の言葉を聞いた要さんから返ってきた言葉は、私の想像を遥かに越えたモノで。

「じゃあ、もっともっと優しくして、とろっとろに甘やかして、俺から一生離れられなくしないとな? 

俺のできうる限りの力を発揮して、今から精一杯気持ち良くさせてやるから、覚悟しろ」 

私の全ての機能を緊急停止状態に陥らせるには充分すぎるモノだった。

ついさっきまでは、中断してしまいそうな勢いだった筈の要さんの雰囲気が、一瞬にしてガラリと塗り替えられてしまって。

いつも以上に、余裕綽々って感じで、妖艶さを増した色気半端ない要さんが、なんの反応も示さない私の様子を窺うべく、私の腕をやんわりと解いて見下ろしてくる。 

そのなんとも言えない艶っぽい色を孕んだ怖いくらい綺麗な瞳に見詰められると、私の身も心も囚われて、何も考えられなくなっていく。

まるで、蜘蛛の糸に捕らえられてしまった獲物のような気持ちになってくる。

もう、逃げるなんてことを考える余裕なんて微塵もない。

ただただ、ポカンと放心してしまっている私は、色気半端ない要さんの綺麗な瞳に囚われたまま、身動ぎもできずに、瞬きするのが精一杯。

そんな私の顔へと要さんの綺麗なお顔がゆっくりと近付いてきて、互いの視線とが交わった刹那、要さんの形のいい唇に私の唇は深く口づけられてしまうのだった。
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