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甘くて苦いビターチョコのように
#13
しおりを挟むせっかく泣き止んでたっていうのに……。
副社長の言葉を耳にした途端に、止まってた筈の涙は再び零れ始めてしまって。
「嫌です。続けてくだしゃい……」
私の放った声は、またまた子供っぽいものになってしまうのだった。
こんな幼稚な私の相手をさせられる副社長にとってみれば、本当に迷惑極まりないことだろうと、自分でも思うのだけれど……。
涙を止めることなんてできそうにない。
ーーどうしようもなく、副社長のことが好きなんだもん。
ーー好きで好きで、もうどうしようもないんだもん。
私がこんなにやめるのが嫌だって言ってるのに……。
ーー副社長にとって、やっぱり私は、それだけの存在だったんだ。
だから、これ以上お子ちゃまな私なんかの相手をするのが嫌になっちゃったんだ……。
ーーそうか、私のことが煩わしくなっちゃったんだ。
副社長は、煩わしいのが嫌いだって言ってたもんね?
こんな風に、私の頭の中では、嫌なことばかっりが、行ったり来たり忙しなく繰り返されるばかりだ。
そんなネガティブ思考にとりつかれた私に、
「美菜、どうした? そんなに泣かなくてもいいだろう?」
副社長はさっきと変わらず、優しく訊いてはくれるのだけれど……。
「……だって」
ーーそんなこと、言える訳がない。
言っちゃったら最後、今よりもっと煩わしく思われてしまうだけだ。
「ん? どうした?」
けれど、副社長は、懲りもせずに、相変わらずの優しい眼差しを向けてくれている。
私がどうして泣いているのか、その想いをちゃんと汲もうとしてくれているのが分かる。
そんな副社長の優しさが、頬を伝う雫を拭ってくれている大きな手からも、ぬくもりと一緒にジンワリと伝わってくる。
「ど、どうしてですか? どうして……途中でやめるなんて、そんなこと……言うんですか?」
私は、副社長の優しさを信じることにして、理由だけでも聞いてみようと思ったのだ。
「どうしてって……それは、今までさんざん無理をさせてきた俺が言うのも説得力に欠けるし、今さらなんだが……。これからは、美菜のことを大事にしたい……そう思ってのことだ」
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