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甘くて苦いビターチョコのように

#12

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そんな私の必死な言葉に対して返されたものは意外なものだったのだ。 

私の放った言葉を聞いた副社長は、私の両脚の間で全ての動きをピタリと停止してしまったかと思えば……。 

私の顔を正面に捉えるようにして、自身の綺麗なお顔をズイッと息のかかる距離まで寄せてきた。 

「美菜、まさかと思うが、最後まで挿入したら、それで終わりだと思ってるのか?」 

そして、いつになく真剣な眼差しで私の顔を見下ろしながら、そう訊ねてきたのだった。

ーーん?

一瞬、何を訊きかれたのか分からず、放心しかけたものの。 

それに対して、私は、 

「……あの、そうじゃないんですか?」

副社長の様子を窺いながら、恐る恐る、そう訊き返すのだった。 

そしたら副社長は、フッと柔らかで優しい微笑みを浮かべたかと思えば……。 

今度は、逞しい腕で優しく包み込むようにして私のことを抱きしめると、

「美菜は何もかも真っ白で、綺麗なまんまなんだな?」 

耳元にゆっくりと唇を寄せてきて、落ち着きのある低い声で甘く囁いてきた。

けれど、私はといえば、副社長の言葉の意味がよく分からなくて、ただただ大人しく抱きしめられたままでいるのだった。 

副社長の逞しい腕の中で、ただただされるがままの私の耳には、 

「美菜が真っ白なら……俺なんて……真っ黒に汚れてしまってるんだろうなぁ」 

なにやらボソボソと呟くような小さな副社長の声が聞こえてきて。 

けれど、副社長にスッポリと包み込むようにして抱き締められているため、副社長が何を言っていたか聞き取ることのできなかった私が、 

「……えっ? 今、なんて言ったんですか?」

副社長の腕の中で身動ぎしながら問いかけてみれば……。 

私を腕から解放して、真っ直ぐに優しい眼差しでやんわりと見下ろしつつ、 

「……ん? あぁ……いや、別に、只の独り言だ。気にしなくていい」 

キョトンとしてしまっている私の目尻に、そうっと優しく指で触れてくると、滲んだ雫を撫でてくれる優しい副社長。

副社長の優しい指の感触に、私は思わずうっとりとしてしまって、麗しい副社長に見惚れてしまうのだった。

そんな私の耳には、

「それより、美菜」 麗しい副社長の落ち着いた低くて優しい声音が流れ込んできて。

「はい」 

素直に答えた私のことをさっきと変わらず優しい眼差しで見詰めてくれている副社長の次の言葉を待っていると……。 

優しかった眼差しを少しずつ真剣なものへと変えてしまった副社長の口からは、

「今日はここまでにさせてほしい」 

ついさきほどの私の願いもむなしく、とうとう、こんな言葉が出てきてしまうのだった。 

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