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甘くて苦いビターチョコのように
♯5
しおりを挟む副社長に、早く可愛がって欲しいなんてこと言っちゃったから、副社長のことを追いこんで、こんなに辛い想いをさせちゃってるんだ。
さっきから、自分のことしか考えてなかった。
美優さんの身代わりでもいいなんて言ってたクセに、こんなんじゃ身代わりにもなれないじゃないか。
ただ傍に居られるだけでいいなんて言いながら、どんどん欲張りになってしまってた。
結果、大好きな副社長のことを困らせるなんて、何やってるんだろう。
ーー身の程知らずにも程がある。
副社長の言葉で、ようやく、自分の身勝手さに気付くことができた私は、
「たっぷり可愛がってなんて言って、ごめんなさい。こうやって、ただ傍に居てくれるだけで充分です。だからもう、そんな表情《かお》しないでください。
困らせちゃって、ごめんなさい」
泣きながらそう言って、副社長の背中にギュッと抱き着いた。
そしたら、副社長は私の身体を優しく包み込むようにして抱きしめると、
「美菜は何も悪くない。そんなこと気にしなくていいから、もう泣くな」
とびっきりの優しい声で囁いてくれて。
額から始まって目尻、頬に唇を寄せて、そうっと涙を拭うようにして何度も何度も優しくキスをしてくれている。
どうやら副社長は、泣いてしまっている私が落ち着くのを待ってくれているようだ。
そんな優しい副社長のキスが心地よくて、泣き止んでからも、そのままされるがままでいると……。
「美菜、泣かしてしまってから言いにくいんだが……その、美菜が強く抱き着いてるせいで、元気になってきたみたいだ」
副社長がなにやら言いにくそうに、ボソボソと呟くように言ってきた。
「……ええぇっ!? ほっ、本当ですかっ!?」
はしたないことこの上ないのだけれど、副社長の思ってもみなかった言葉に、驚きすぎたおバカな私は、ガバッと起き上った勢いでベッドの上へと副社長の無防備な身体ごと一緒に押し倒してしまってて、そのままの勢いで副社長のことを組み敷いていたのだった。
「・・・」
「・・・」
副社長も私も、一体何がどうなってこんな状況になってしまったのかが、すぐには理解できずに、言葉を失ったままで、お互い驚いて目を大きく見開いたまんま見つめ合うこと数秒。
その沈黙を破ったのは、私に組み敷かれてしまっている副社長が可笑しくて堪らないって感じで「プッ」と吹き出した音で。
その音が耳に流れ込んできたと同時、いつの間にか組み敷いてしまっている副社長の笑いを堪えるような苦悶の表情が視界に飛び込んできた瞬間、私はこれ以上にないってくらいに真っ赤になってしまったのだった。
今にも、湯気が立ち上るんじゃないかってくらいに熱くて熱くて堪らない。
「////」
それなのに、それを副社長は、さも楽しそうに、
「そんなに喜んでもらえるとは思わなかった。なんなら、触って確かめてみるか? 美菜が触ったら、もっと元気になるかもしれないぞ?」
なーんて笑いながら、そんな意地悪なことを言ってくる。
「////」
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