【R18】訳あり御曹司と秘密の契約【本編完結・番外編不定期更新中】

それぞれの思惑～後編～

#２３

それは、まるで我儘な子供が駄々を捏ねるみたいな言い方で。 

退院する時に、副社長の従兄である譲さんが言ってたことを思い出してしまった私は、思わずフッと笑みを零してしまうのだった。

ついさっきまで、この想いが迷惑だったんじゃないかと不安でしょうがなかったというのに……。 

こうやって、副社長の言葉一つで、こうも簡単に呆気なく変えられてしまうとは、恐るべし恋の威力。 

――副社長、もう、覚悟なんてできちゃってます。 

――もう、とっくに副社長なしでは居られなくなっちゃってますから。

ーー副社長こそ『一生』なんて言っちゃっていいんですか？　信じちゃいますよ。 

「今、笑ったのか？」 

どうやら、さっき零してしまった笑い声は、副社長にも聞こえていたようで。

副社長は、それはそれは盛大に不機嫌そうな低い声を響かせたかと思えば、抱きしめていた筈の私の身体を呆気なくソファへと押し倒してしまわれた。 

麗しい副社長のお顔を見上げてみれば、不機嫌そうに眉間に皺を寄せていらっしゃる。

なんとかご機嫌を取ろうと、 

「笑ってなんかいません」 

放った声は逆効果だったようで。 

「嘘をつくな。顔がだらしなくニヤけてる」 

そう言ってソファに組み敷いた私のことを見下ろしながら拗ねたような表情をしている副社長。 

……その言いか方は酷いと思います。 

「副社長が子供みたいなこと言うからです」 

あまりの言われようにムッとして返せば。 

相変わらず不機嫌そうにムッと拗ねた表情の副社長は、 

「それだけ、美菜のことが好きってことだ。子供みたいに必死になっても仕方ないだろ？」 

さらっと、そんなことをおっしゃった。

とうとう『好き』なんて言葉を言ってきた副社長。 

その言葉は、私を縛り付けておくための鎖だって分かってる筈なのに……。 

直接、しかも面と向かって副社長の口から聞いてしまったら、威力は凄まじいものだった。