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捕らわれた檻のなかで
#12
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あの後、私が突然あんな大声を出したもんだから、リビングで寛《くつろ》いでいた副社長は、ビックリ仰天したらしい。
そのせいで、飛んで現れた副社長によって、強制連行された私は、着替えと朝食とを済ませて。
現在、リビングのソファに座って、二人からあることを聞かされていたのだが……。
……どうも、昨夜のアレの成果がなかったせいか、副社長はさっきからずっと黙り込んでいて、不機嫌モードのままだ。
副社長の隣に脚を組んで座っている夏目さんも、そんな副社長の様子にヤレヤレって感じで……。
テーブルを挟んで向かい合っている私に、それとなく視線を向けてくると、ワザとらしく肩を竦ませて、お手上げのポーズをして見せている夏目さん。
そんななか、不機嫌モードの副社長からは、驚きの事実が飛び出してくるのだった。
「今日から、ここに住んでもらう」
「えっ!? 急に、そんなこと言われても困りますっ!」
「会長にも許可は貰ってある。決定事項だ。お前に断る権限はない。
それに、お前の荷物は、昨日ここに運ばせてあるし、もう部屋も処分してある。
必要なものがあったら、夏目に言ってくれ」
そして、傍若無人な副社長の本領発揮とでもいうように、有無を言わせない威圧感満載で、一方的に言い渡されてしまっている、というのが現状だ。
そんな副社長に見かねた、インテリ銀縁メガネ……もとい、夏目さんが、
「美菜ちゃん、色々勝手にごめんね? 会長にも顔を見るたび『早く結婚して孫を』ってずっと言われてて、コイツだいぶ焦っちゃってるんだ。
そのせいで昨夜は、処女の美菜ちゃんにずいぶんとハードなことさせちゃったみたいだけど……。悪気はないから、許してやってほしい。
……で、実はさぁ。要って、こー見えて、結構、繊細なとこあってさぁ。アレがあんなことになってから、ずっと不眠症気味なんだよね。
でも、美菜ちゃんと一緒だと、ペットに癒される感じなのかな? あ、そういえば、小動物っぽいし。
まぁ、そんな感じで、不思議とグッスリ眠れるらしくてさぁ。アレのこともあるし、悪いんだけど、協力してやってほしい」
いつもの、あのお堅いお小言のような口調はどこへやら……。
ちょっとチャラくて軽い口調で、詳しい事情を補足してくれた。
理解はできたものの、ペットとか小動物っていうのは、全然フォローになってないとは、思いますけれど……。
合間で、眉間に深い深い皺を寄せた不機嫌モードマックスの副社長からも、
「夏目。余計なことをベラベラ喋るな」
とも言われていたけれど。
ちなみに、夏目さんがどうしてこんな風に別人なのかというと……。
処女の私にも、容赦してくれないような、傍若無人で自分勝手な副社長だけれど、女性にも男性にもオモテになるらしい麗しいお方なので、今までも、煩わしいこと、この上ない色々なことがあっのだという。
副社長のアレの件で、言い寄ってくる"女避け"のために、夏目さんが副社長と"只ならぬ仲"だというのを匂わすための演技だったらしいのだ。
あのトレードマークになっていた眼鏡も、伊達眼鏡だったらしい。
けれど、夏目さんも副社長と同じバイであるらしいので、二人の仲も怪しいものである。
だって、
「バイといっても、安心しろって。美菜ちゃんみたいなガキには興味ないから、俺。ナイスバディーな綺麗なお姉さんと、綺麗な大人な男にしか興味わかないからさぁ……。あぁ、それと、綺麗な美少年にもちょっとソソラれるかなぁ」
なんて、茶化したように言う夏目さん。
ーーだったら、副社長もそうなんじゃ?
そう思って、疑いの眼差しで見つめていた私に、
「あぁ、要のこと? 要は、あー見えても、仕事とプライベートは区別する質《たち》だからさぁ。なんせ、煩わしいのが嫌いだから。だから俺なんて相手にしないから安心してよ」
なんて、笑ってはいたけれど、なんだかちょっと悲しそうに遠くを見詰めるような、そんな表情をチラリと覗かせた夏目さん。
きっと、副社長のことをただの友人だとは思ってないような、そんな気がして、少なくとも私には、何故かそう感じられて。
そんな夏目さんの切なげな表情を見ていると、何故か、こっちまで、切ない気持ちになってしまった。
まぁ、こんな風に、まだまだ、色々気になることはあるのだけれど、傍若無人な副社長の言いつけ通り、私はここで、奇妙な共同生活を送ることになってしまったのだった。
――が、しかし、この日は、これだけでは終わらなかった。
そのせいで、飛んで現れた副社長によって、強制連行された私は、着替えと朝食とを済ませて。
現在、リビングのソファに座って、二人からあることを聞かされていたのだが……。
……どうも、昨夜のアレの成果がなかったせいか、副社長はさっきからずっと黙り込んでいて、不機嫌モードのままだ。
副社長の隣に脚を組んで座っている夏目さんも、そんな副社長の様子にヤレヤレって感じで……。
テーブルを挟んで向かい合っている私に、それとなく視線を向けてくると、ワザとらしく肩を竦ませて、お手上げのポーズをして見せている夏目さん。
そんななか、不機嫌モードの副社長からは、驚きの事実が飛び出してくるのだった。
「今日から、ここに住んでもらう」
「えっ!? 急に、そんなこと言われても困りますっ!」
「会長にも許可は貰ってある。決定事項だ。お前に断る権限はない。
それに、お前の荷物は、昨日ここに運ばせてあるし、もう部屋も処分してある。
必要なものがあったら、夏目に言ってくれ」
そして、傍若無人な副社長の本領発揮とでもいうように、有無を言わせない威圧感満載で、一方的に言い渡されてしまっている、というのが現状だ。
そんな副社長に見かねた、インテリ銀縁メガネ……もとい、夏目さんが、
「美菜ちゃん、色々勝手にごめんね? 会長にも顔を見るたび『早く結婚して孫を』ってずっと言われてて、コイツだいぶ焦っちゃってるんだ。
そのせいで昨夜は、処女の美菜ちゃんにずいぶんとハードなことさせちゃったみたいだけど……。悪気はないから、許してやってほしい。
……で、実はさぁ。要って、こー見えて、結構、繊細なとこあってさぁ。アレがあんなことになってから、ずっと不眠症気味なんだよね。
でも、美菜ちゃんと一緒だと、ペットに癒される感じなのかな? あ、そういえば、小動物っぽいし。
まぁ、そんな感じで、不思議とグッスリ眠れるらしくてさぁ。アレのこともあるし、悪いんだけど、協力してやってほしい」
いつもの、あのお堅いお小言のような口調はどこへやら……。
ちょっとチャラくて軽い口調で、詳しい事情を補足してくれた。
理解はできたものの、ペットとか小動物っていうのは、全然フォローになってないとは、思いますけれど……。
合間で、眉間に深い深い皺を寄せた不機嫌モードマックスの副社長からも、
「夏目。余計なことをベラベラ喋るな」
とも言われていたけれど。
ちなみに、夏目さんがどうしてこんな風に別人なのかというと……。
処女の私にも、容赦してくれないような、傍若無人で自分勝手な副社長だけれど、女性にも男性にもオモテになるらしい麗しいお方なので、今までも、煩わしいこと、この上ない色々なことがあっのだという。
副社長のアレの件で、言い寄ってくる"女避け"のために、夏目さんが副社長と"只ならぬ仲"だというのを匂わすための演技だったらしいのだ。
あのトレードマークになっていた眼鏡も、伊達眼鏡だったらしい。
けれど、夏目さんも副社長と同じバイであるらしいので、二人の仲も怪しいものである。
だって、
「バイといっても、安心しろって。美菜ちゃんみたいなガキには興味ないから、俺。ナイスバディーな綺麗なお姉さんと、綺麗な大人な男にしか興味わかないからさぁ……。あぁ、それと、綺麗な美少年にもちょっとソソラれるかなぁ」
なんて、茶化したように言う夏目さん。
ーーだったら、副社長もそうなんじゃ?
そう思って、疑いの眼差しで見つめていた私に、
「あぁ、要のこと? 要は、あー見えても、仕事とプライベートは区別する質《たち》だからさぁ。なんせ、煩わしいのが嫌いだから。だから俺なんて相手にしないから安心してよ」
なんて、笑ってはいたけれど、なんだかちょっと悲しそうに遠くを見詰めるような、そんな表情をチラリと覗かせた夏目さん。
きっと、副社長のことをただの友人だとは思ってないような、そんな気がして、少なくとも私には、何故かそう感じられて。
そんな夏目さんの切なげな表情を見ていると、何故か、こっちまで、切ない気持ちになってしまった。
まぁ、こんな風に、まだまだ、色々気になることはあるのだけれど、傍若無人な副社長の言いつけ通り、私はここで、奇妙な共同生活を送ることになってしまったのだった。
――が、しかし、この日は、これだけでは終わらなかった。
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