4 / 427
私、捕まっちゃいました
#3
しおりを挟む
木村先輩オススメのバーへと辿り着いた私は、これから脚を踏み入れる大人の世界に、期待と不安で胸をわくわくドキドキさせながら脚を進ませた。
そこは、大人の隠れ家って感じの、しっとり落ち着いた大人な雰囲気が静かに漂っているオシャレな空間で。
スマートに出迎えてくれたスタッフさんに、奥のソファー席に案内してもらった私と木村先輩。
洗練された大人のオーラを身に纏った、モデル並にカッコいいバーテンダーさんが、作ってくれた甘くて美味しい綺麗なカクテルを堪能しつつ、向かえ合わせでテーブルを挟んだ私たちは、楽しいお喋りに花を咲かせていた。
ちょっと軽くて明るい気さくな木村先輩の人柄と、アルコールの威力も手伝ってか、バーに来るのが初めてで緊張気味だった私でも、少しも臆することなく、楽しい一時を過ごしていたのだった。
そして現在、程よく酔いも回って、ほろ酔い状態の私は、気になって気になって……仕方のなかった副社長と、あのすかしたインテリ銀縁メガネのことを聞いていたのだが……。
「あー、まー、いろいろ?
噂は聞くんだけどさぁ……。副社長と秘書の夏目さんって、大学からの親友らしいんだけど。三年前って言ってたかなぁ?
副社長に就任するときに、どうしても秘書は夏目でなきゃってんで。商社だったか、定かじゃないけど、就職してバリバリ仕事してた夏目さんを引き抜いたって話は有名で……って。あれ? 美菜ちゃん、大丈夫?
なんか眠そうだけど。もしかして酔っちゃった?」
「へへへぇ……らいじょーぶれしゅよー。きーむらしぇーんぱぁい」
心配そうに私を気遣ってくれている木村先輩に、そういって返していた私は、全然大丈夫ではなくて。
美味しく呑んでいた筈だったお酒に、完全に呑まれてしまっていたのだった。
その証拠に、私には、それからの記憶なんて、全くといっていいほど残ってはいなかったのだから。
♪゜・*:.。. .。.:*・♪
ふわふわとしたあったかいぬくもりに包まれているような、そんな心地よさに頬をスリスリと摺り寄せて、頬ずりをしながら至福の時を味わっていた私が、そうっと重い瞼を上げたその先には……。
白いワイシャツのようなものがあって。
そのワイシャツの襟もとは、何故か色っぽく大胆に肌蹴けられていて。
寝惚けているのか、ハタマタまだ夢の中にいるのか……そう思った私が、眠気眼をパチパチと何度も何度もしつこいくらいに瞬きを繰り返した後、もう一度、目をよーく凝らして見てみると。
そこにはやっぱり、さっきと同じ光景があって。
白いワイシャツの肌蹴たその隙間からは、喉仏らしきものが見て取れる。
でも、その喉仏が誰のものかなんて、そんなことを確認するような冷静さも余裕なんかも、今の私が持ち合わせている訳もなく、ただただ見つめることしかできない。
よくよく見てみれば、私は、どこの誰かも分からない喉仏の持ち主であるその男の人の背中にまで腕を伸ばしていて。
あろうことか、ぴったりとくっつくように、寄り添うようにして、しっかりと抱き着いてしまっている。
そして、ここまでくればお察しいただけるだろうが、当然のように、何も身に纏《まと》っていていない素肌を晒《さら》している私の胸は、白いワイシャツに押し付けるようにして密着しているのだった。
そんな、ありえないような衝撃的な事実に直面してしまった私は、次の瞬間には、
「ギャァ―――!!!」
という静寂だった空間をつんざくような大きな大きな叫び声をあげていて。
……まったく、色気もへったくれもあったもんじゃなかった。
そこは、大人の隠れ家って感じの、しっとり落ち着いた大人な雰囲気が静かに漂っているオシャレな空間で。
スマートに出迎えてくれたスタッフさんに、奥のソファー席に案内してもらった私と木村先輩。
洗練された大人のオーラを身に纏った、モデル並にカッコいいバーテンダーさんが、作ってくれた甘くて美味しい綺麗なカクテルを堪能しつつ、向かえ合わせでテーブルを挟んだ私たちは、楽しいお喋りに花を咲かせていた。
ちょっと軽くて明るい気さくな木村先輩の人柄と、アルコールの威力も手伝ってか、バーに来るのが初めてで緊張気味だった私でも、少しも臆することなく、楽しい一時を過ごしていたのだった。
そして現在、程よく酔いも回って、ほろ酔い状態の私は、気になって気になって……仕方のなかった副社長と、あのすかしたインテリ銀縁メガネのことを聞いていたのだが……。
「あー、まー、いろいろ?
噂は聞くんだけどさぁ……。副社長と秘書の夏目さんって、大学からの親友らしいんだけど。三年前って言ってたかなぁ?
副社長に就任するときに、どうしても秘書は夏目でなきゃってんで。商社だったか、定かじゃないけど、就職してバリバリ仕事してた夏目さんを引き抜いたって話は有名で……って。あれ? 美菜ちゃん、大丈夫?
なんか眠そうだけど。もしかして酔っちゃった?」
「へへへぇ……らいじょーぶれしゅよー。きーむらしぇーんぱぁい」
心配そうに私を気遣ってくれている木村先輩に、そういって返していた私は、全然大丈夫ではなくて。
美味しく呑んでいた筈だったお酒に、完全に呑まれてしまっていたのだった。
その証拠に、私には、それからの記憶なんて、全くといっていいほど残ってはいなかったのだから。
♪゜・*:.。. .。.:*・♪
ふわふわとしたあったかいぬくもりに包まれているような、そんな心地よさに頬をスリスリと摺り寄せて、頬ずりをしながら至福の時を味わっていた私が、そうっと重い瞼を上げたその先には……。
白いワイシャツのようなものがあって。
そのワイシャツの襟もとは、何故か色っぽく大胆に肌蹴けられていて。
寝惚けているのか、ハタマタまだ夢の中にいるのか……そう思った私が、眠気眼をパチパチと何度も何度もしつこいくらいに瞬きを繰り返した後、もう一度、目をよーく凝らして見てみると。
そこにはやっぱり、さっきと同じ光景があって。
白いワイシャツの肌蹴たその隙間からは、喉仏らしきものが見て取れる。
でも、その喉仏が誰のものかなんて、そんなことを確認するような冷静さも余裕なんかも、今の私が持ち合わせている訳もなく、ただただ見つめることしかできない。
よくよく見てみれば、私は、どこの誰かも分からない喉仏の持ち主であるその男の人の背中にまで腕を伸ばしていて。
あろうことか、ぴったりとくっつくように、寄り添うようにして、しっかりと抱き着いてしまっている。
そして、ここまでくればお察しいただけるだろうが、当然のように、何も身に纏《まと》っていていない素肌を晒《さら》している私の胸は、白いワイシャツに押し付けるようにして密着しているのだった。
そんな、ありえないような衝撃的な事実に直面してしまった私は、次の瞬間には、
「ギャァ―――!!!」
という静寂だった空間をつんざくような大きな大きな叫び声をあげていて。
……まったく、色気もへったくれもあったもんじゃなかった。
0
お気に入りに追加
1,142
あなたにおすすめの小説
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
婚約破棄された公爵令嬢は、真実の愛を証明したい
香月文香
恋愛
「リリィ、僕は真実の愛を見つけたんだ!」
王太子エリックの婚約者であるリリアーナ・ミュラーは、舞踏会で婚約破棄される。エリックは男爵令嬢を愛してしまい、彼女以外考えられないというのだ。
リリアーナの脳裏をよぎったのは、十年前、借金のかたに商人に嫁いだ姉の言葉。
『リリィ、私は真実の愛を見つけたわ。どんなことがあったって大丈夫よ』
そう笑って消えた姉は、五年前、首なし死体となって娼館で見つかった。
真実の愛に浮かれる王太子と男爵令嬢を前に、リリアーナは決意する。
——私はこの二人を利用する。
ありとあらゆる苦難を与え、そして、二人が愛によって結ばれるハッピーエンドを見届けてやる。
——それこそが真実の愛の証明になるから。
これは、婚約破棄された公爵令嬢が真実の愛を見つけるお話。
※6/15 20:37に一部改稿しました。
いつもだれかに殺される。
豆狸
恋愛
薄れていく意識の中、私の吐いた血溜まりに転がるそれは釦(ボタン)でした。
旧大陸で発見された古代魔導呪文を思わせる文様が描かれた、どこかで見たことのある釦です。
死に逝くものの見た幻覚だったのかもしれませんが、その釦は私の血の上を転がって、うっすらと光り始めました。
【完結】何度時(とき)が戻っても、私を殺し続けた家族へ贈る言葉「みんな死んでください」
リオール
恋愛
「リリア、お前は要らない子だ」
「リリア、可愛いミリスの為に死んでくれ」
「リリア、お前が死んでも誰も悲しまないさ」
リリア
リリア
リリア
何度も名前を呼ばれた。
何度呼ばれても、けして目が合うことは無かった。
何度話しかけられても、彼らが見つめる視線の先はただ一人。
血の繋がらない、義理の妹ミリス。
父も母も兄も弟も。
誰も彼もが彼女を愛した。
実の娘である、妹である私ではなく。
真っ赤な他人のミリスを。
そして私は彼女の身代わりに死ぬのだ。
何度も何度も何度だって。苦しめられて殺されて。
そして、何度死んでも過去に戻る。繰り返される苦しみ、死の恐怖。私はけしてそこから逃れられない。
だけど、もういい、と思うの。
どうせ繰り返すならば、同じように生きなくて良いと思うの。
どうして貴方達だけ好き勝手生きてるの? どうして幸せになることが許されるの?
そんなこと、許さない。私が許さない。
もう何度目か数える事もしなかった時間の戻りを経て──私はようやく家族に告げる事が出来た。
最初で最後の贈り物。私から贈る、大切な言葉。
「お父様、お母様、兄弟にミリス」
みんなみんな
「死んでください」
どうぞ受け取ってくださいませ。
※ダークシリアス基本に途中明るかったりもします
※他サイトにも掲載してます
夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す
夏目萌
恋愛
レノアール地方にある海を隔てた二つの大国、ルビナとセネルは昔から敵対国家として存在していたけれど、この度、セネルの方から各国の繁栄の為に和平条約を結びたいと申し出があった。
それというのも、セネルの世継ぎであるシューベルトがルビナの第二王女、リリナに一目惚れした事がきっかけだった。
しかしリリナは母親に溺愛されている事、シューベルトは女好きのクズ王子と噂されている事から嫁がせたくない王妃は義理の娘で第一王女のエリスに嫁ぐよう命令する。
リリナには好きな時に会えるという条件付きで結婚に応じたシューベルトは当然エリスに見向きもせず、エリスは味方の居ない敵国で孤独な結婚生活を送る事になってしまう。
そして、結婚生活から半年程経ったある日、シューベルトとリリナが話をしている場に偶然居合わせ、実はこの結婚が自分を陥れるものだったと知ってしまい、殺されかける。
何とか逃げる事に成功したエリスはひたすら逃げ続け、力尽きて森の中で生き倒れているところを一人の男に助けられた。
その男――ギルバートとの出逢いがエリスの運命を大きく変え、全てを奪われたエリスの幸せを取り戻す為に全面協力を誓うのだけど、そんなギルバートには誰にも言えない秘密があった。
果たして、その秘密とは? そして、エリスとの出逢いは偶然だったのか、それとも……。
これは全てを奪われた姫が辺境地に住む謎の男に溺愛されながら自分を陥れた者たちに復讐をして居場所を取り戻す、成り上がりラブストーリー。
※ ファンタジーは苦手分野なので練習で書いてます。設定等受け入れられない場合はすみません。
※他サイト様にも掲載中。
「おまえを愛している」と言い続けていたはずの夫を略奪された途端、バツイチ子持ちの新国王から「とりあえず結婚しようか?」と結婚請求された件
ぽんた
恋愛
「わからないかしら? フィリップは、もうわたしのもの。わたしが彼の妻になるの。つまり、あなたから彼をいただいたわけ。だから、あなたはもう必要なくなったの。王子妃でなくなったということよ」
その日、「おまえを愛している」と言い続けていた夫を略奪した略奪レディからそう宣言された。
そして、わたしは負け犬となったはずだった。
しかし、「とりあえず、おれと結婚しないか?」とバツイチの新国王にプロポーズされてしまった。
夫を略奪され、負け犬認定されて王宮から追い出されたたった数日の後に。
ああ、浮気者のクズな夫からやっと解放され、自由気ままな生活を送るつもりだったのに……。
今度は王妃に?
有能な夫だけでなく、尊い息子までついてきた。
※ハッピーエンド。微ざまぁあり。タイトルそのままです。ゆるゆる設定はご容赦願います。
新人魔女は、のんびり森で暮らしたい!
田古みゆう
ファンタジー
見習い学校を卒業して、正式に魔女になったばかりの新人魔女リッカは、就活解禁日となったその日、いくつかの求人票が貼り付けられた掲示板を睨みつけていた。
「おっ? どうした嬢ちゃん? 職探しか?」
就労斡旋所の所長ジャックスは、そんなリッカの姿を見かけ、声をかける。
新人魔女リッカの希望就職先は、森の中の工房。そこでのんびりと見習い仕事をしながら、実習に明け暮れる日々を送ることがリッカの希望だった。
しかし、そんなに都合の良い就職先を見つけることは出来るのか?
新人魔女のほのぼの(?)スローライフが始まります。
※表紙画像及び挿絵は、フリー素材を加工使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる