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あの夜の続きを
⑤*
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奏の意味深発言に、穂乃香の意志とは関係なくご褒美を待ちわびるかのように、下腹部がキュンと切ないぐらいに疼いてしまう。
それに伴い、既に溢れた蜜で潤っている秘裂が微かにヒクヒクとひくつく感触と、新たな蜜がとろりとしたたり落ちる感触とが、内股にまで伝わってくる。
奏が言うように、あの夜確かに奏と一夜を共にしたのだという事実を物語るかのような身体の反応に戸惑うばかりだ。
なぜなら、元婚約者との経験しかない穂乃香には、胸だけで身を捩るほどの快感を得たこともなければ、言葉一つでこんな風に濡らしたこともなかったから。
もちろん達したこともあるのだが、このような著しい反応を示したのは今夜が初めてだ。
今にして思えば、元婚約者は己の欲を満たすだけで、穂乃香を気持ちよくさせて満たしてあげよう、などという気遣いがなかったからに違いない。
奏の口振りからして、どうやらあの夜も今と同じように著しい反応を見せていたようだし、奏が以前言っていたように、身体の相性が良いからなのだろう。
もしくは、秀でた嗅覚のせいで交際が長続きしなかっただけで、奏にはこういう経験が数え切れないほどあって、女性を悦ばせる手腕に長けているのかもしれない。
――そりゃあ、そうよね。こんなに素敵な男性なんだもん。
ふとそんな思考が穂乃香の脳裏を掠めた。途端に、胸がキュッと強く締め付けられる。ズキズキと痛いくらいだ。
穂乃香が胸の痛みに苛まれていると、奏の心配そうな声音が思考に割り込んできた。
「穂乃香?」
ハッとした穂乃香が奏に視線を投げると、不安げに揺らめく奏の瞳が待ち受けていた。かち合った刹那、バツ悪そうな奏から思いがけない言葉が飛び出してくる。
「悪い。年甲斐もなく、がっつきすぎたようだな。穂乃香のことを優しくとろとろに甘やかすなんて言っておきながら、気遣ってやる余裕がないなんて、呆れるよな」
穂乃香が思考に耽っていたせいで機嫌を損ねてしまった、と勘違いさせてしまったらしい。
奏に申し訳ないと思う一方で、奏をそうさせているのが自分なのだと思うと、あんなにも痛かった胸の痛みは、綺麗さっぱりどこかに吹き飛んでしまっている。
現金すぎる自分に呆れつつも、早く奏の誤解を解いて不安を払拭してあげたい。そう考えた穂乃香は奏の首に両腕を絡めてぎゅっと抱きついた。
「まだ胸だけなのにこんなにも感じて、このままだと、どうなっちゃうんだろうって、怖くなっただけですから、もう平気です」
するとどういうわけか奏の動きがピタリと止まった。
どうしたのかと穂乃香が不思議に思っているところに、奏がほっと安堵の息を漏らす気配がして束の間。
先ほどとは打って変わって、自信に満ちた奏のバリトンボイスが穂乃香の鼓膜だけでなく心までをも打ち震わす。
「だったら、怖いなんて思っているような余裕もなにもかも全部、今すぐこの俺が拭い去ってやる」
少々傲慢な物言いとは裏腹に穂乃香の不安を何とか拭おうと、抱きついた穂乃香を逞しい胸に抱き寄せ、頭と背中とを大きな手でポンポンと優しく撫でてくれる。
穂乃香を気遣う優しさと、穂乃香を好きだという熱い想いとが、奏の言動からも触れ合っている身体からも温かな体温と一緒にひしひしと伝わってくる。
元彼と比較するのもどうかと思うが、それらは元彼には欠けていたものだ。
だからこそ、奏の想いが心の奥の深いところにまで染み入ってくるのかもしれない。
感極まった穂乃香は、奏の首にぎゅっとしがみつきながら細い声を放った。
「……はい」
それを聞き届けた奏が穂乃香の身体を滑らかなシーツの波間へ、慎重にそうっと優しく横たえる。
片膝を突いた奏は身に纏っているカットソーを脱ぎ捨てた。すると、ジムで鍛えていたという、均整のとれた逞しい体躯が姿を現した。
細身ながらにしなやかな筋肉で覆われた美しい肉体に、知らず穂乃香の視線は惹きつけられる。
それに伴い、既に溢れた蜜で潤っている秘裂が微かにヒクヒクとひくつく感触と、新たな蜜がとろりとしたたり落ちる感触とが、内股にまで伝わってくる。
奏が言うように、あの夜確かに奏と一夜を共にしたのだという事実を物語るかのような身体の反応に戸惑うばかりだ。
なぜなら、元婚約者との経験しかない穂乃香には、胸だけで身を捩るほどの快感を得たこともなければ、言葉一つでこんな風に濡らしたこともなかったから。
もちろん達したこともあるのだが、このような著しい反応を示したのは今夜が初めてだ。
今にして思えば、元婚約者は己の欲を満たすだけで、穂乃香を気持ちよくさせて満たしてあげよう、などという気遣いがなかったからに違いない。
奏の口振りからして、どうやらあの夜も今と同じように著しい反応を見せていたようだし、奏が以前言っていたように、身体の相性が良いからなのだろう。
もしくは、秀でた嗅覚のせいで交際が長続きしなかっただけで、奏にはこういう経験が数え切れないほどあって、女性を悦ばせる手腕に長けているのかもしれない。
――そりゃあ、そうよね。こんなに素敵な男性なんだもん。
ふとそんな思考が穂乃香の脳裏を掠めた。途端に、胸がキュッと強く締め付けられる。ズキズキと痛いくらいだ。
穂乃香が胸の痛みに苛まれていると、奏の心配そうな声音が思考に割り込んできた。
「穂乃香?」
ハッとした穂乃香が奏に視線を投げると、不安げに揺らめく奏の瞳が待ち受けていた。かち合った刹那、バツ悪そうな奏から思いがけない言葉が飛び出してくる。
「悪い。年甲斐もなく、がっつきすぎたようだな。穂乃香のことを優しくとろとろに甘やかすなんて言っておきながら、気遣ってやる余裕がないなんて、呆れるよな」
穂乃香が思考に耽っていたせいで機嫌を損ねてしまった、と勘違いさせてしまったらしい。
奏に申し訳ないと思う一方で、奏をそうさせているのが自分なのだと思うと、あんなにも痛かった胸の痛みは、綺麗さっぱりどこかに吹き飛んでしまっている。
現金すぎる自分に呆れつつも、早く奏の誤解を解いて不安を払拭してあげたい。そう考えた穂乃香は奏の首に両腕を絡めてぎゅっと抱きついた。
「まだ胸だけなのにこんなにも感じて、このままだと、どうなっちゃうんだろうって、怖くなっただけですから、もう平気です」
するとどういうわけか奏の動きがピタリと止まった。
どうしたのかと穂乃香が不思議に思っているところに、奏がほっと安堵の息を漏らす気配がして束の間。
先ほどとは打って変わって、自信に満ちた奏のバリトンボイスが穂乃香の鼓膜だけでなく心までをも打ち震わす。
「だったら、怖いなんて思っているような余裕もなにもかも全部、今すぐこの俺が拭い去ってやる」
少々傲慢な物言いとは裏腹に穂乃香の不安を何とか拭おうと、抱きついた穂乃香を逞しい胸に抱き寄せ、頭と背中とを大きな手でポンポンと優しく撫でてくれる。
穂乃香を気遣う優しさと、穂乃香を好きだという熱い想いとが、奏の言動からも触れ合っている身体からも温かな体温と一緒にひしひしと伝わってくる。
元彼と比較するのもどうかと思うが、それらは元彼には欠けていたものだ。
だからこそ、奏の想いが心の奥の深いところにまで染み入ってくるのかもしれない。
感極まった穂乃香は、奏の首にぎゅっとしがみつきながら細い声を放った。
「……はい」
それを聞き届けた奏が穂乃香の身体を滑らかなシーツの波間へ、慎重にそうっと優しく横たえる。
片膝を突いた奏は身に纏っているカットソーを脱ぎ捨てた。すると、ジムで鍛えていたという、均整のとれた逞しい体躯が姿を現した。
細身ながらにしなやかな筋肉で覆われた美しい肉体に、知らず穂乃香の視線は惹きつけられる。
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