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というのも、「相手の匂いが好き」イコール「その人の遺伝子を求めているから」なんだそうだ。
遺伝子学的にも、「種の保存のためにより強く優れた遺伝子を持つ子孫を残すための本能」だとされているらしい。
近頃流行っているという『DNA婚活』では、実際にDNAを採取しなくても、匂いとスキンシップだけで相性の良さが判断できるのだという。
つまりは、社長の妙な能力というのが、その本能がなせる技だと言いたいようだ。
だがその能力が災いし、社長はどんなに魅力的な女性にも本気にはなれず、最近では女性と関わるのも避けていたらしい。
社長のデリケートな事情は柳本しか知らないため、柳本に女性の対応を任せているうち、いつしか女嫌いだとか、男にしか興味がないだとか、そんなおかしな噂まで囁かれるように。
それを耳にした父親である会長が案じて、縁談を持ちかけてくるようになったらしい。
というのも、会長の跡を継ぐには一族間での暗黙のルールがあるそうで、三十五歳までには結婚し後継者をもうけなければならないのだという。
何でもその昔、年老いてもうけた子ども可愛さに過保護となり、結果として商才のないぼんくら後継者を生み出してしまった。おかげで、経営難に陥って危うく倒産寸前にまで追い込まれたらしい。
以来暗黙のルールとなっているらしいのだ。
奏が社長に就任したことで、ますます焦りを覚えた会長からひっきりなしに縁談話が舞い込んでくるわ、ことあるごとに呼び出され結婚はまだかと急き立てられるわで、気の休まる暇もないのだという。
「だがあの夜、穂乃香に出会い一嗅ぎ惚れをしてからというもの、君のことが頭から離れないんだ。これはきっと穂乃香に心から惹かれているからに違いない。穂乃香との出会いは運命としか言い様がないんだ。それを確かめるためにも、俺と結婚してほしい」
「お可哀想でしょう? なので、どうか社長をお救いください」
終いには、運命という言葉まで持ち出して結婚を迫ってくる社長の援護とばかりに、いつ戻ってきたのか嘆く柳本にまでそう言って泣きつかれてしまう始末。
困惑しきりで苦笑を浮かべたまま引き気味の穂乃香に、大の男が二人して泣きつくという、何とも異様な光景だ。
気の毒だとは思うが、だからといって了承できるわけがないし、おかしなことに関わりたくない。
今は自分のことで精一杯なのだからーー
「事情はわかりましたが、いくらお願いされても無理なものは無理です。第一私は社長のことを何も存じ上げません」
「水臭いな。あんなに濃厚な夜を過ごしたというのに」
「あっ、あれは、酔った上でのことですし、記憶だって曖昧ですので」
キッパリと断った穂乃香に社長は意味ありげに微笑みながら悪戯っぽい口調で、あの夜の情事を仄めかす。その言葉に、何かを思い出しそうになった穂乃香は羞恥を煽られカッと全身を赤らめた。
「ふうん、その割には顔が紅いようだが」
「こ、これは、社長がおかしなこと言うからですッ!」
穂乃香は社長とのやり取りの中で、あの夜、見かけ同様に紳士だとばかり思っていた男が、変態だったばかりか、意地の悪い性格の持ち主であるのを確信していた。
そんなタイミングで、穂乃香は社長からある提案を受けることになる。
遺伝子学的にも、「種の保存のためにより強く優れた遺伝子を持つ子孫を残すための本能」だとされているらしい。
近頃流行っているという『DNA婚活』では、実際にDNAを採取しなくても、匂いとスキンシップだけで相性の良さが判断できるのだという。
つまりは、社長の妙な能力というのが、その本能がなせる技だと言いたいようだ。
だがその能力が災いし、社長はどんなに魅力的な女性にも本気にはなれず、最近では女性と関わるのも避けていたらしい。
社長のデリケートな事情は柳本しか知らないため、柳本に女性の対応を任せているうち、いつしか女嫌いだとか、男にしか興味がないだとか、そんなおかしな噂まで囁かれるように。
それを耳にした父親である会長が案じて、縁談を持ちかけてくるようになったらしい。
というのも、会長の跡を継ぐには一族間での暗黙のルールがあるそうで、三十五歳までには結婚し後継者をもうけなければならないのだという。
何でもその昔、年老いてもうけた子ども可愛さに過保護となり、結果として商才のないぼんくら後継者を生み出してしまった。おかげで、経営難に陥って危うく倒産寸前にまで追い込まれたらしい。
以来暗黙のルールとなっているらしいのだ。
奏が社長に就任したことで、ますます焦りを覚えた会長からひっきりなしに縁談話が舞い込んでくるわ、ことあるごとに呼び出され結婚はまだかと急き立てられるわで、気の休まる暇もないのだという。
「だがあの夜、穂乃香に出会い一嗅ぎ惚れをしてからというもの、君のことが頭から離れないんだ。これはきっと穂乃香に心から惹かれているからに違いない。穂乃香との出会いは運命としか言い様がないんだ。それを確かめるためにも、俺と結婚してほしい」
「お可哀想でしょう? なので、どうか社長をお救いください」
終いには、運命という言葉まで持ち出して結婚を迫ってくる社長の援護とばかりに、いつ戻ってきたのか嘆く柳本にまでそう言って泣きつかれてしまう始末。
困惑しきりで苦笑を浮かべたまま引き気味の穂乃香に、大の男が二人して泣きつくという、何とも異様な光景だ。
気の毒だとは思うが、だからといって了承できるわけがないし、おかしなことに関わりたくない。
今は自分のことで精一杯なのだからーー
「事情はわかりましたが、いくらお願いされても無理なものは無理です。第一私は社長のことを何も存じ上げません」
「水臭いな。あんなに濃厚な夜を過ごしたというのに」
「あっ、あれは、酔った上でのことですし、記憶だって曖昧ですので」
キッパリと断った穂乃香に社長は意味ありげに微笑みながら悪戯っぽい口調で、あの夜の情事を仄めかす。その言葉に、何かを思い出しそうになった穂乃香は羞恥を煽られカッと全身を赤らめた。
「ふうん、その割には顔が紅いようだが」
「こ、これは、社長がおかしなこと言うからですッ!」
穂乃香は社長とのやり取りの中で、あの夜、見かけ同様に紳士だとばかり思っていた男が、変態だったばかりか、意地の悪い性格の持ち主であるのを確信していた。
そんなタイミングで、穂乃香は社長からある提案を受けることになる。
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