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#3
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相沢咲(アイサワ サキ)
一人っ子の俺にとっては2つ年下の妹のような存在。
いわゆる幼馴染でありそれ以上に大切な特別な存在だった。
咲の母親は、お袋の幼馴染の相沢菫(スミレ)、咲の父親は咲が小さい時に亡くなってて。
確か、母親の仕事の都合で引っ越した翌年には、咲の母親は医者と再婚したって聞いた気がする。
おそらく、この青山って医者がそうなんだろう……。
けど、去年だったか、咲の母親は病気で亡くなってる筈だ。
でも、お袋からは、咲自身のことは一度も聞いたことがないような気がする。
咲に逢うのは、10年ぶりくらいだろうか……。
この10年間、俺は親父に認めてもらう為だけに、ガムシャラにただただ突っ走ってきた。
きっとお互いこの10年の間、色んなことがあったんだろう……。
あの頃よりも、大人びた咲の姿を見ているうちに、遠くに霞んでいたあの頃の記憶が色鮮やかに蘇ってくる。
そうだあれは、高校3年の大学受験をひかえた頃だった。
当時、俺が18才で咲が16才……。
あの日、親父が倒れてこの病院に運ばれて。
そして、俺が駆けつけた病室の前で、五十嵐海翔を腹違いの弟だと知った。
あの時も、俺の傍には……
当たり前のように咲が居たんだ。
***
あの時、親父の裏切りにショックを受けた俺は、扉の向こう側の親父や五十嵐に気づかれる前に、フリーズしてしまってる身体を無理矢理動かせた。
病室の前から、この受け入れがたい現実から一刻も早く逃げ出すために。
それは、これまでの俺には、考えられないような……
ありえないような行動だった。
そんなこと、俺自身一番良く解っていたことだったんだ。
でも、俺にとっての将来の目標は、ガキの頃から変わらず親父以外には居なかった。
そんな存在であった筈の親父に俺以外にも息子が居て。
挙句の果てには、俺以外のソイツに、自分が築き上げてきた大事な会社を任せたいだ?
ーーふざけんな!
俺って、親父にとって一体何なんだよっ!?
それも、よりにもよって、俺の恋敵であり、親友の五十嵐だったなんて……。
ーーあんまりじゃねーか!
突然食らってしまったあまりの衝撃に、冷静さを失ってしまってた俺の耳に流れ込んできた聞き慣れた声。
その声は、俺の後方2、3メートルくらい離れた距離を息を切らせながらも、これ以上俺から離れてしまわないようにと言うように、距離を詰めようと追いかけてくる咲の苦しそうな声だった。
「……ちょっ、ちょっとぉ!直ちゃんっ!そんなに速く走んないでよー!」
あの日は確か、二学期の期末試験の勉強を俺の部屋で咲と一緒にしてたんだっけ。
そしたら親父の秘書の松方さんから、仕事中に親父が倒れたとの連絡が入ったんだ。
急いで咲と共に訪れた病室の前、扉を開けようと手を伸ばそうとしたその時、
「ーーアンタの会社の後継者になんて、冗談じゃないっ! 俺は松岡を兄だなんて思えないし、アンタのことを父親だなんて、そんなこと絶対に認めないっ!」
聞き覚えのある低い怒声が聞こえてきて。
その内容に、時が止まってしまったかのような錯覚に陥ってしまった俺の心も身体も、一瞬にして、その何もかも全てが凍り付いてしまった。
文字通り、完全に機能停止状態となってしまったのだった。
でも、そのことで、妙に納得してしまってる自分が存在していたのも事実だったーー。
親父もお袋も表面上は仲良くやってたように見えてはいたが、お袋はいつも親父の機嫌をうかがってるような、微妙な距離感のようなものがあったといえなくもない。
一人っ子の俺にとっては2つ年下の妹のような存在。
いわゆる幼馴染でありそれ以上に大切な特別な存在だった。
咲の母親は、お袋の幼馴染の相沢菫(スミレ)、咲の父親は咲が小さい時に亡くなってて。
確か、母親の仕事の都合で引っ越した翌年には、咲の母親は医者と再婚したって聞いた気がする。
おそらく、この青山って医者がそうなんだろう……。
けど、去年だったか、咲の母親は病気で亡くなってる筈だ。
でも、お袋からは、咲自身のことは一度も聞いたことがないような気がする。
咲に逢うのは、10年ぶりくらいだろうか……。
この10年間、俺は親父に認めてもらう為だけに、ガムシャラにただただ突っ走ってきた。
きっとお互いこの10年の間、色んなことがあったんだろう……。
あの頃よりも、大人びた咲の姿を見ているうちに、遠くに霞んでいたあの頃の記憶が色鮮やかに蘇ってくる。
そうだあれは、高校3年の大学受験をひかえた頃だった。
当時、俺が18才で咲が16才……。
あの日、親父が倒れてこの病院に運ばれて。
そして、俺が駆けつけた病室の前で、五十嵐海翔を腹違いの弟だと知った。
あの時も、俺の傍には……
当たり前のように咲が居たんだ。
***
あの時、親父の裏切りにショックを受けた俺は、扉の向こう側の親父や五十嵐に気づかれる前に、フリーズしてしまってる身体を無理矢理動かせた。
病室の前から、この受け入れがたい現実から一刻も早く逃げ出すために。
それは、これまでの俺には、考えられないような……
ありえないような行動だった。
そんなこと、俺自身一番良く解っていたことだったんだ。
でも、俺にとっての将来の目標は、ガキの頃から変わらず親父以外には居なかった。
そんな存在であった筈の親父に俺以外にも息子が居て。
挙句の果てには、俺以外のソイツに、自分が築き上げてきた大事な会社を任せたいだ?
ーーふざけんな!
俺って、親父にとって一体何なんだよっ!?
それも、よりにもよって、俺の恋敵であり、親友の五十嵐だったなんて……。
ーーあんまりじゃねーか!
突然食らってしまったあまりの衝撃に、冷静さを失ってしまってた俺の耳に流れ込んできた聞き慣れた声。
その声は、俺の後方2、3メートルくらい離れた距離を息を切らせながらも、これ以上俺から離れてしまわないようにと言うように、距離を詰めようと追いかけてくる咲の苦しそうな声だった。
「……ちょっ、ちょっとぉ!直ちゃんっ!そんなに速く走んないでよー!」
あの日は確か、二学期の期末試験の勉強を俺の部屋で咲と一緒にしてたんだっけ。
そしたら親父の秘書の松方さんから、仕事中に親父が倒れたとの連絡が入ったんだ。
急いで咲と共に訪れた病室の前、扉を開けようと手を伸ばそうとしたその時、
「ーーアンタの会社の後継者になんて、冗談じゃないっ! 俺は松岡を兄だなんて思えないし、アンタのことを父親だなんて、そんなこと絶対に認めないっ!」
聞き覚えのある低い怒声が聞こえてきて。
その内容に、時が止まってしまったかのような錯覚に陥ってしまった俺の心も身体も、一瞬にして、その何もかも全てが凍り付いてしまった。
文字通り、完全に機能停止状態となってしまったのだった。
でも、そのことで、妙に納得してしまってる自分が存在していたのも事実だったーー。
親父もお袋も表面上は仲良くやってたように見えてはいたが、お袋はいつも親父の機嫌をうかがってるような、微妙な距離感のようなものがあったといえなくもない。
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