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#2
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……けど、こんなことで愛のことを失いたくなんてない。
愛のことを手放せるはずがない。
たとえ、この想いが俺だけの独りよがりであったとしても。
イヤ、そんなことあるはずない。
きっと愛だって、同じ想いでいてくれてるはずだ……。
チャラ男の声が響く中、やっとそう思うことができた俺は、さっきまでの弱気だった己を吹き飛ばすくらいの強気な口調で、まずは部外者であるチャラ男へと言葉を投げ付けてやった。
「チャラ男。お前、さっきからゴチャゴチャうっせーんだよっ! それに、勘違いしてんじゃねーよ……。俺は、誰になんて言われよーと、愛と別れたりしねーからなっ!」
直後、ついさっきまで、なんにも言わなかった俺から、まさかそんなことが返ってくるとは思わなかっただろうチャラ男は、
「はぁっ!? 何、意味わかんねーこと言っちゃってんの? 黒木のこと、好きな女の身代わりにしてたクセによー! それとも……何? 黒木のこと、俺にとられんのが惜しくなったのかよ?」
ガキの頃から慕ってた俺に対して、敵意剥き出しで刺々しい言葉を躊躇なくぶん投げてくる。
このままじゃラチなんてあかない……。
そう判断した俺は、
「勘違いしてんのは、お前のほーだバカヤロー!
そこで頭冷やしてろっ!」
チャラ男へ言葉だけを投げつけて、腕に閉じ込めたままの愛を瞬時に抱き上げた。
そうして、背後にあった非常階段へと続く非常ドアを背中で押し開け、目の前のチャラ男から素早く逃げ込むようにして飛び込んだ。
本来ならば、シーンと、静かな筈の休日の朝の廊下に、俺達3人のクソやかましい騒音がこだまする中。
とんでもない勘違い発言を連発していたチャラ男を置き去りにして。
強引ではあったものの、やっとの思いで、愛と二人っきりになれたのにもかかわらず。
肝心な愛はといえば、抱き上げた瞬間には驚いて可愛く、『ヒャッ』っと俺にしがみついてきたけれど……。
それきり俺にしがみついたまま泣きじゃくってばかりいる。
チャラ男はチャラ男で、今度は非常ドアをドンドンと勢いに任せて叩き続けている。
俺は、そんな諦めの悪いチャラ男に、
「静かにしろっ!!」
苛立ちを抑えることなく低い声を投げつけてやった。
そうして、愛の背中を片腕でシッカリと支えた体勢で、空いたもう片方の腕はドアに力強く叩きつけてやったのだった。
苛立った俺が、ドアの向こうのチャラ男へと、力強く腕を叩きつけてやったその時、腕の中の愛がビクッと身体を跳ね上がらせた。
「ゴメン、愛。怖かったよな?」
怯えた様子を見せる愛に、ようやく冷静さを取り戻すことができた、どうしようもないバカな俺。
そんな俺の謝る声に、何故か腕の中の愛が忙しなく首を左右に何度も振り始めた。
そうして、
「ご、め……な、さい…」
しゃくり上げながらも、何度も、何度も、今にも消えそうなくらいの小さな震える声で繰り返す愛。
気づけば俺は、片腕でドアを押さえて固定させたまんまで、愛の背中をドアに預けるようにもたれさせた。
ちゃんと、愛と向き合うために。
愛の可愛い顔を正面から見つめながら。
「何謝ってんだよ? 謝ってんじゃねーよっ。前は悪くねーだろっ?」
愛は泣きながら不安げに俺の顔を恐る恐る見上げると。
涙で濡れてしまっている顔をグニャリと歪ませて、グッと瞑った目尻から尚も悲しそうな涙を溢れさせた。
愛の悲しげな表情に、俺が堪らず涙で濡れた頬にそっと手を差し伸べようとした瞬間、
「……らってぇ……ヒクッ……。直樹、のことっ、裏…切っ…ちゃったん、だよっ?
『俺以外の……ヤツとっ、酒なんか、飲む……な』って言われてたのに……。
……いく、ら、謝ってもっ、謝り……きれないよっ……。もう……一緒に、居られないよぅ」
ヒック、ヒックと、しゃくり上げながらも。
一生懸命気持ちを伝えようと、途切れ途切れに、何度も、何度も。
震える声を絞り出すようにしてそう口にする愛。
俺の思った通り、愛は酒に酔ってチャラ男と間違いを犯したようで。
そのことを後悔して、俺に申し訳ないと言って別れをほのめかす。
ーーふざけんなっ! そんなこと誰が了承してやるもんかっ!
俺がどれだけお前のことを想っているか知りもしねーで……。
俺は微かに震える愛の身体を、そんな想いを込めて強く掻き抱くようにして腕の中に閉じ込めた。
愛のことを手放せるはずがない。
たとえ、この想いが俺だけの独りよがりであったとしても。
イヤ、そんなことあるはずない。
きっと愛だって、同じ想いでいてくれてるはずだ……。
チャラ男の声が響く中、やっとそう思うことができた俺は、さっきまでの弱気だった己を吹き飛ばすくらいの強気な口調で、まずは部外者であるチャラ男へと言葉を投げ付けてやった。
「チャラ男。お前、さっきからゴチャゴチャうっせーんだよっ! それに、勘違いしてんじゃねーよ……。俺は、誰になんて言われよーと、愛と別れたりしねーからなっ!」
直後、ついさっきまで、なんにも言わなかった俺から、まさかそんなことが返ってくるとは思わなかっただろうチャラ男は、
「はぁっ!? 何、意味わかんねーこと言っちゃってんの? 黒木のこと、好きな女の身代わりにしてたクセによー! それとも……何? 黒木のこと、俺にとられんのが惜しくなったのかよ?」
ガキの頃から慕ってた俺に対して、敵意剥き出しで刺々しい言葉を躊躇なくぶん投げてくる。
このままじゃラチなんてあかない……。
そう判断した俺は、
「勘違いしてんのは、お前のほーだバカヤロー!
そこで頭冷やしてろっ!」
チャラ男へ言葉だけを投げつけて、腕に閉じ込めたままの愛を瞬時に抱き上げた。
そうして、背後にあった非常階段へと続く非常ドアを背中で押し開け、目の前のチャラ男から素早く逃げ込むようにして飛び込んだ。
本来ならば、シーンと、静かな筈の休日の朝の廊下に、俺達3人のクソやかましい騒音がこだまする中。
とんでもない勘違い発言を連発していたチャラ男を置き去りにして。
強引ではあったものの、やっとの思いで、愛と二人っきりになれたのにもかかわらず。
肝心な愛はといえば、抱き上げた瞬間には驚いて可愛く、『ヒャッ』っと俺にしがみついてきたけれど……。
それきり俺にしがみついたまま泣きじゃくってばかりいる。
チャラ男はチャラ男で、今度は非常ドアをドンドンと勢いに任せて叩き続けている。
俺は、そんな諦めの悪いチャラ男に、
「静かにしろっ!!」
苛立ちを抑えることなく低い声を投げつけてやった。
そうして、愛の背中を片腕でシッカリと支えた体勢で、空いたもう片方の腕はドアに力強く叩きつけてやったのだった。
苛立った俺が、ドアの向こうのチャラ男へと、力強く腕を叩きつけてやったその時、腕の中の愛がビクッと身体を跳ね上がらせた。
「ゴメン、愛。怖かったよな?」
怯えた様子を見せる愛に、ようやく冷静さを取り戻すことができた、どうしようもないバカな俺。
そんな俺の謝る声に、何故か腕の中の愛が忙しなく首を左右に何度も振り始めた。
そうして、
「ご、め……な、さい…」
しゃくり上げながらも、何度も、何度も、今にも消えそうなくらいの小さな震える声で繰り返す愛。
気づけば俺は、片腕でドアを押さえて固定させたまんまで、愛の背中をドアに預けるようにもたれさせた。
ちゃんと、愛と向き合うために。
愛の可愛い顔を正面から見つめながら。
「何謝ってんだよ? 謝ってんじゃねーよっ。前は悪くねーだろっ?」
愛は泣きながら不安げに俺の顔を恐る恐る見上げると。
涙で濡れてしまっている顔をグニャリと歪ませて、グッと瞑った目尻から尚も悲しそうな涙を溢れさせた。
愛の悲しげな表情に、俺が堪らず涙で濡れた頬にそっと手を差し伸べようとした瞬間、
「……らってぇ……ヒクッ……。直樹、のことっ、裏…切っ…ちゃったん、だよっ?
『俺以外の……ヤツとっ、酒なんか、飲む……な』って言われてたのに……。
……いく、ら、謝ってもっ、謝り……きれないよっ……。もう……一緒に、居られないよぅ」
ヒック、ヒックと、しゃくり上げながらも。
一生懸命気持ちを伝えようと、途切れ途切れに、何度も、何度も。
震える声を絞り出すようにしてそう口にする愛。
俺の思った通り、愛は酒に酔ってチャラ男と間違いを犯したようで。
そのことを後悔して、俺に申し訳ないと言って別れをほのめかす。
ーーふざけんなっ! そんなこと誰が了承してやるもんかっ!
俺がどれだけお前のことを想っているか知りもしねーで……。
俺は微かに震える愛の身体を、そんな想いを込めて強く掻き抱くようにして腕の中に閉じ込めた。
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