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episoudo:10
#5 *直樹side*
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俺の元から……
一目散に逃げ出すようにして、愛が泣きながら飛び出してしまってから、一体、どれくらいの時間が経過してしまっただろうか……。
なんも返すことができなかった俺に、見事にトドメを刺すようにして、愛に勢いよく踏みつけられてしまった、俺の可哀想な分身がようやく息を吹き返してきた。
それなのに、想像もしなかったありえない展開に、物凄い衝撃をまともに食らってしまった俺は、文字通り茫然自失っていう状態で。
凄い音を響かせて閉ざされてしまったドアをただただ呆然と見つめ続けてしまっていた。
そんな俺の視界に、チカチカと色とりどりの光を放つ物体が入ってきて。
ベッドの上で、力なく項垂れるように両手をついていた俺は、ノロノロとベッドから這い出るように起き上がり。
その色とりどりの光へと手を伸ばしてみれば。誰かの着信を知らせ続けている見慣れた俺のスマホだった。
愛かもしれないと、慌ててロック解除して画面を覗き込んでみると。
思った通り、たった今送られてきた愛からのメールで。
【信じてたのにバカ】
いつもは、可愛らしい絵文字を使う愛のモノとは思えないような、素っ気ない文字たちが表示されてて。
涙でグチャグチャになって、子供みたいにワンワン泣き続ける愛のとても悲しそうな表情が脳裏に浮かび上がった。
胸が何かに押し潰されたみてぇに痛くてたまんねぇ……。
「……くそっ!」
俺は、どこにもぶつけらんねぇ憤りを、拳を作りベッドの布団にムチャクチャにねじ込んだ。
あの時、どうして俺は、愛が高岡芽衣の身代わりなんかじゃないって言ってやれなかったんだろうか……。
もしかしたら、自分でも気づかないうちに、愛に高岡芽衣を重ねてしまってたんだろうか?
初めは、もしかしたら、そうだったかもしれねぇけど、今の俺の中には愛のことしかないってハッキリ言える。
やっと、正気を取り戻した俺は、慌てて身支度を整えて愛の後を追いかけた。
焦る俺のことなんかお構い無しで、時間はあっという間に過ぎ去って。
もう日付も変わってしまった日曜の午前零時、愛の住んでるマンションまで辿り着いたものの、
インターホンを押してもなんの反応も返っちゃこない。
仕方がないので、駐車場で待つことにして、車のドアに背中を預けるように凭れかけた。
もしかしたら、部屋に一人で居るのが嫌で、親友の舞ちゃんのとこにでも行ってるのかもしれない。
いつもツンケンしてて、一人でもヘッチャラだなんて顔して、虚勢はって強がってる愛だけれど……。
本当は、結構寂しがやりで人一倍臆病な愛。
そんな愛は、親友の舞ちゃん以外の他人に、悔しいけれど弱ったとこなんて晒さないし。
彼氏である俺にもあんま甘えちゃくれやしない……。
以前なら、舞ちゃんの彼氏であるチャラ男に連絡して、愛の様子をうかがってるとこなのだが……。
慌ててた俺は、あろうことかスマホを部屋に忘れてしまったうえに。
チャラ男が舞ちゃんと別れてしまった今となっては、俺に成す術なんてなんにもない……。
俺って、実は愛にとったら、ただ付き合ってる彼氏ってだけで、特別でもなんでもねぇんじゃねぇのか?
なんて、いつ帰ってくるかも解らない愛を待っていると、良くないことばっかりが頭を過ぎってゆく……。
愛のこととなると、どこまでもらしくなくて、情けないことばかりを考えてしまう俺は、これ以上余計なことを考えたりしてしまわないように、愛と付き合うようになってからやめてたタバコを咥えて、その先に火をつけ白い煙を冬の冷たい空へとくゆらせた。
そんなことしたって、愛のことばっかが頭ん中を占領してしまう。
ーー早く愛に逢いてぇよ……。
空高く立ち上る白い煙が、冷たい風に掻き消されるのを見ていると。
俺の愛への想いまで虚しく掻き消されてくようで。
どうしようもなく情けないヘタレな俺は、どこまでも女々しいことばかりを考えてしまっていた。
一目散に逃げ出すようにして、愛が泣きながら飛び出してしまってから、一体、どれくらいの時間が経過してしまっただろうか……。
なんも返すことができなかった俺に、見事にトドメを刺すようにして、愛に勢いよく踏みつけられてしまった、俺の可哀想な分身がようやく息を吹き返してきた。
それなのに、想像もしなかったありえない展開に、物凄い衝撃をまともに食らってしまった俺は、文字通り茫然自失っていう状態で。
凄い音を響かせて閉ざされてしまったドアをただただ呆然と見つめ続けてしまっていた。
そんな俺の視界に、チカチカと色とりどりの光を放つ物体が入ってきて。
ベッドの上で、力なく項垂れるように両手をついていた俺は、ノロノロとベッドから這い出るように起き上がり。
その色とりどりの光へと手を伸ばしてみれば。誰かの着信を知らせ続けている見慣れた俺のスマホだった。
愛かもしれないと、慌ててロック解除して画面を覗き込んでみると。
思った通り、たった今送られてきた愛からのメールで。
【信じてたのにバカ】
いつもは、可愛らしい絵文字を使う愛のモノとは思えないような、素っ気ない文字たちが表示されてて。
涙でグチャグチャになって、子供みたいにワンワン泣き続ける愛のとても悲しそうな表情が脳裏に浮かび上がった。
胸が何かに押し潰されたみてぇに痛くてたまんねぇ……。
「……くそっ!」
俺は、どこにもぶつけらんねぇ憤りを、拳を作りベッドの布団にムチャクチャにねじ込んだ。
あの時、どうして俺は、愛が高岡芽衣の身代わりなんかじゃないって言ってやれなかったんだろうか……。
もしかしたら、自分でも気づかないうちに、愛に高岡芽衣を重ねてしまってたんだろうか?
初めは、もしかしたら、そうだったかもしれねぇけど、今の俺の中には愛のことしかないってハッキリ言える。
やっと、正気を取り戻した俺は、慌てて身支度を整えて愛の後を追いかけた。
焦る俺のことなんかお構い無しで、時間はあっという間に過ぎ去って。
もう日付も変わってしまった日曜の午前零時、愛の住んでるマンションまで辿り着いたものの、
インターホンを押してもなんの反応も返っちゃこない。
仕方がないので、駐車場で待つことにして、車のドアに背中を預けるように凭れかけた。
もしかしたら、部屋に一人で居るのが嫌で、親友の舞ちゃんのとこにでも行ってるのかもしれない。
いつもツンケンしてて、一人でもヘッチャラだなんて顔して、虚勢はって強がってる愛だけれど……。
本当は、結構寂しがやりで人一倍臆病な愛。
そんな愛は、親友の舞ちゃん以外の他人に、悔しいけれど弱ったとこなんて晒さないし。
彼氏である俺にもあんま甘えちゃくれやしない……。
以前なら、舞ちゃんの彼氏であるチャラ男に連絡して、愛の様子をうかがってるとこなのだが……。
慌ててた俺は、あろうことかスマホを部屋に忘れてしまったうえに。
チャラ男が舞ちゃんと別れてしまった今となっては、俺に成す術なんてなんにもない……。
俺って、実は愛にとったら、ただ付き合ってる彼氏ってだけで、特別でもなんでもねぇんじゃねぇのか?
なんて、いつ帰ってくるかも解らない愛を待っていると、良くないことばっかりが頭を過ぎってゆく……。
愛のこととなると、どこまでもらしくなくて、情けないことばかりを考えてしまう俺は、これ以上余計なことを考えたりしてしまわないように、愛と付き合うようになってからやめてたタバコを咥えて、その先に火をつけ白い煙を冬の冷たい空へとくゆらせた。
そんなことしたって、愛のことばっかが頭ん中を占領してしまう。
ーー早く愛に逢いてぇよ……。
空高く立ち上る白い煙が、冷たい風に掻き消されるのを見ていると。
俺の愛への想いまで虚しく掻き消されてくようで。
どうしようもなく情けないヘタレな俺は、どこまでも女々しいことばかりを考えてしまっていた。
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