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#3
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……なのに、そんな私の心情なんてお構いなしのチャラ男は、
「へぇ……。じゃぁ、こんなことされても、お前は平気なんだなぁ?」
認めたくはないけれど、直樹に少しだけ似た低い声でそう言うと。
僅かに片方の口角だけニヤリとイヤらしく吊り上げて、何故か手を差し出すように伸ばして。
冷たい壁に追い詰めるようにして、私の前へとにじり寄ってきた。
そして、あろうことか、私の着ているコートの裾に、伸ばした手をかけ捲り上げようとし始めた。
「ちょっ、ヤダ、触んないでっ!」
慌てて、チャラ男の手を叩いてやろうと手を振り上げるも。
悔しいけど、男であるチャラ男の力には敵わなくて。
簡単に手首を掴んで拘束されて元の状態に戻ってしまって。
せっかく、一階へと辿り着いてた四角い箱を、あっという間にボタンを押して元来た高層階へと逆戻りさせられた。
「ヤダ、戻りたくないっ!!」
すかさず叫ぶように強く抗議すれば、
「俺の部屋だ。言っとくが、俺は、お前を女と思ってねぇから安心しろ。着替えたらタクシー呼んでやる」
チャラ男のクセに……。
直樹みたいな偉そうな強い口調で言われると、途端に直樹の顔が頭の中に浮かんできてしまって。
また泣いてしまわないように、チャラ男の隣で俯いて涙を堪えてることしかできずにいた。
本当は、今、こうしている間にも、直樹が私を追ってきてくれてるかもしれないと思うと。
このまま帰ってしまうなんてことはできなかった……。
涙を堪えてる間に、私たちを乗せた四角い箱は、チャラ男の部屋がある高層階へと辿り着いていた。
直樹の部屋があるのは、もう一つ上の階になるから、エレベーターを降りて辺りを見渡してみたものの
ーー当然、直樹の姿は見当たらない。
チャラ男に手首を掴まれたまんまだし。
まるで連行でもされるように、トボトボチャラ男の後を歩きながら、辺りの殺風景な景色をボンヤリ眺めていると。
「ヤッパ直ちゃんとこ、行きたくなったんじゃねーの?」
私の方をチラリと振り返ったチャラ男が、フッと軽く笑ったかと思ったら、小馬鹿にするような口調で言ってきた。
その声に、カチンと来てしまった私は、いつものように……
「そんなこと思ってないしっ! いいからさっさと歩きなさいよっ!?」
捲し立てるようにしてキッツい口調で言い放つと。
チャラ男もいつものように、
「お前って、ホントに素直じゃねーよなぁ?」
何がそんなに可笑しいのか、
「ハハハッ」
なんて、ヤッパリ軽く笑いながら返してくる。
チャラ男と言い合いながら歩いていると、
ーーあ、今の、このヘラヘラした笑い方、ちょっとだけ直樹に似てるかも?
チャラ男の意外と大きな背中も、細身のクセして広くて大きな直樹の背中に似てるかも?
今まで、こんなこと思ったこともなかったのに……。
どことなく、声も背格好も似てるし、チャラ男が直樹の従兄弟だからか、そんなことばかり考えてしまう……。
ーーねぇ、直樹、直樹もこんな気持ちだったの?
直樹も、こうやって、私に芽衣さんを重ねて見ていたの?
芽衣さんだと思って私にキスしてたの?
芽衣さんだと思って私を抱いてたの?
……ふと、そんなことを思ってしまった私は、溢れてくる涙を止めることができなくなって。
その場で俯いて立ち止まったまんま動けなくなってしまった。
「……黒木?」
辺りには、チャラ男の心配そうな声と私のすすり泣く声だけが虚しく響いていく。
「へぇ……。じゃぁ、こんなことされても、お前は平気なんだなぁ?」
認めたくはないけれど、直樹に少しだけ似た低い声でそう言うと。
僅かに片方の口角だけニヤリとイヤらしく吊り上げて、何故か手を差し出すように伸ばして。
冷たい壁に追い詰めるようにして、私の前へとにじり寄ってきた。
そして、あろうことか、私の着ているコートの裾に、伸ばした手をかけ捲り上げようとし始めた。
「ちょっ、ヤダ、触んないでっ!」
慌てて、チャラ男の手を叩いてやろうと手を振り上げるも。
悔しいけど、男であるチャラ男の力には敵わなくて。
簡単に手首を掴んで拘束されて元の状態に戻ってしまって。
せっかく、一階へと辿り着いてた四角い箱を、あっという間にボタンを押して元来た高層階へと逆戻りさせられた。
「ヤダ、戻りたくないっ!!」
すかさず叫ぶように強く抗議すれば、
「俺の部屋だ。言っとくが、俺は、お前を女と思ってねぇから安心しろ。着替えたらタクシー呼んでやる」
チャラ男のクセに……。
直樹みたいな偉そうな強い口調で言われると、途端に直樹の顔が頭の中に浮かんできてしまって。
また泣いてしまわないように、チャラ男の隣で俯いて涙を堪えてることしかできずにいた。
本当は、今、こうしている間にも、直樹が私を追ってきてくれてるかもしれないと思うと。
このまま帰ってしまうなんてことはできなかった……。
涙を堪えてる間に、私たちを乗せた四角い箱は、チャラ男の部屋がある高層階へと辿り着いていた。
直樹の部屋があるのは、もう一つ上の階になるから、エレベーターを降りて辺りを見渡してみたものの
ーー当然、直樹の姿は見当たらない。
チャラ男に手首を掴まれたまんまだし。
まるで連行でもされるように、トボトボチャラ男の後を歩きながら、辺りの殺風景な景色をボンヤリ眺めていると。
「ヤッパ直ちゃんとこ、行きたくなったんじゃねーの?」
私の方をチラリと振り返ったチャラ男が、フッと軽く笑ったかと思ったら、小馬鹿にするような口調で言ってきた。
その声に、カチンと来てしまった私は、いつものように……
「そんなこと思ってないしっ! いいからさっさと歩きなさいよっ!?」
捲し立てるようにしてキッツい口調で言い放つと。
チャラ男もいつものように、
「お前って、ホントに素直じゃねーよなぁ?」
何がそんなに可笑しいのか、
「ハハハッ」
なんて、ヤッパリ軽く笑いながら返してくる。
チャラ男と言い合いながら歩いていると、
ーーあ、今の、このヘラヘラした笑い方、ちょっとだけ直樹に似てるかも?
チャラ男の意外と大きな背中も、細身のクセして広くて大きな直樹の背中に似てるかも?
今まで、こんなこと思ったこともなかったのに……。
どことなく、声も背格好も似てるし、チャラ男が直樹の従兄弟だからか、そんなことばかり考えてしまう……。
ーーねぇ、直樹、直樹もこんな気持ちだったの?
直樹も、こうやって、私に芽衣さんを重ねて見ていたの?
芽衣さんだと思って私にキスしてたの?
芽衣さんだと思って私を抱いてたの?
……ふと、そんなことを思ってしまった私は、溢れてくる涙を止めることができなくなって。
その場で俯いて立ち止まったまんま動けなくなってしまった。
「……黒木?」
辺りには、チャラ男の心配そうな声と私のすすり泣く声だけが虚しく響いていく。
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