【R18】ありえない恋。

羽村美海

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episoudo:8

#4*愛side*

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 私の瞳の奥をうかがうようにして、優しく細められた瞳で真っ直ぐに見つめられると。

 ついさっきまで繰り広げられてた熱いキスの余韻が蘇ってくる。

 瞬く間に……

 真っ赤になってしまった顔を自分じゃどうすることもできなくて――。

 それだけじゃなく。

 それ以上のことにこれから及ぶんだと思っただけで。

 首から上は火を吹くんじゃないかってくらいに火照ってしまって、恥ずかしいなんてもんじゃない――。

 そんな言いようのない恥ずかしさから、優しく声をかけてくれた主任の顔を真正面から見ることもできず。

 ただただ顔を俯かせてコクコク何度か頷くと、


「初めてだもんな?そりゃ怖いよな?無理強いしないから安心しろって。な?」


勘違いして、ポンポンと私の頭を優しく撫でつつそう言って、フワリと優しく抱きしめてくれる主任に、


「は、恥ずかしいけど、怖くないっ!」


捲し立てるようにして言い切る前に、主任の逞しくて大きな胸に顔を埋めてから、主任が私から離れてしまわないように、無我夢中で両手を主任の背中へと伸ばしてしっかりと抱きついた。

 それなのに、何故だか主任には、私が無理しているようにしか見えないようで……。


「無理して強がってんじゃねぇよ……。そんなに焦らなくても、俺がそのうちちゃんとお前の初めてもらってやるから。な?」


 なぁんて、まるで駄々をこねる小さな子供に言い聞かせるようにして、ヤッパリ私の頭を優しく撫でながら、優しく優しくそっと静かに囁きかけてくる。

 そりゃあ、すっごく恥ずかしいし、"全然怖くない"なんて言ったら嘘になるけど……。

 それでも、6つ年上の大人な主任に、もっと近付きたいって思っちゃうんだもん……。

 確かな“絆“って言えるモノが欲しいって、どうしても思っちゃうんだもん……。

 だって、当たり前だけど会社での主任は、私と付き合う前と全くおんなじで、主任としての仕事をこなしつつも。

 御曹司としての勉強なんかもシレッとやってて超がつくほど忙しいクセに。

 自分の立場を鼻にかけるでもなく、誰に対してもヘラヘラしていて優しくって。

 当然主任の可愛い隠れファンが至る所に蔓延《はびこ》っている訳で。

 それが、私にとってはすっごく不安で、心配でしょうがない……。

 だって、素直じゃなく可愛くもない、オマケに処女で面倒臭い私のことを、主任にいつ嫌われてしまうかって、ただ指を咥えてビクビクして待ってるだけなんて嫌なんだもん……。

 けど、そんなこと、主任に言っちゃったら、ただでさえ可愛くできない私のことを、重くてウザいヤツだって、思われて嫌われそうで、怖くてとてもじゃないけど言えっこない。

 それでも、私がなんにも言わなかったら、きっと主任は勘違いしたままで、今まで同様私に何もしようとしないに決まってる……。

 ――そんなの嫌だ!

 頭の中で、あーだこーだとゴチャゴチャ考えてるうちに、冷静さを失った私の脳裏を最悪なことばかりが掠めていく。

 冷静さを失って、後先なんて考えてる余裕なんかなくした私は、


「『そのうち』なんて、ヤだっ!!そんなの待てないっ! だって、主任のことすっごく好きなんだもん。だから、ずっと不安で舞にも相談してたのに……。好きな人に、抱いて欲しいって思っちゃいけないのっ?」


 なぁんて恥ずかしいことを、いつものように主任めがけて勢い任せに言い放っていたのだった。
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