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episoudo:7
#3
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「……主任、……の、わからず屋……。頑……固、もの……」
主任に抱き寄せられた腕の中、私の言葉なんか聞いちゃくれない俺様主任に向けて、もう言い返す力をなくした私がボソッと返せば。
さっきから、凄い勢いで怒ってて、ピリピリしていた筈の周りの空気と、強い力がこめられてた主任の腕の力が何故かフッと緩んで。
未だ泣き続ける私の顔をソっと上げさせたかと思えば。
涙で濡れてグチョグチョの頬を指で優しく拭いながら、さっきまでの般若顔と同一人物なのかと疑ってしまうくらいの、フッと柔らかい極上の笑みを浮かべた主任が、
「あぁ、なんとでも言えばいい……。何言われたって、やっと手に入れたお前のこと、離してなんかやんねぇからな。こうやって、お前が弱気なこと言って泣くの見てるだけで、可愛くて、愛おしくて堪んねぇんだから……。もう、諦めろ」
笑顔と同様、柔らかくて優しくて、とっても穏やかな口調で囁くように言葉を紡ぎだした。
主任が最後に悪戯っ子のように『もう、諦めろ』って言いながら浮かべた笑顔が涙で歪んでいても眩いくらいに輝いて見える。
――どうしてなんだろう……。
さっきまで、主任に嫌われるのが、あんなに不安でしょうがなかった筈なのに……。
もしかしたら、主任なら、過去にあった嫌な記憶ごと、私のことを受入れてもらえるんじゃないかって。
そんな自分勝手なことを思ってしまう。
さっきは、あんなに怖くて、大好きな筈の主任のことをどうしても受け入れることができなかったっていうのに……。
主任の眩いくらいに輝いて見える、何もかもをあたたかく包み込んでくれるんじゃないかってくらいに、あったかくて優しい太陽みたいな笑顔に縋ってしまいたくなる。
――でも、やっぱり怖くて……。
どうしても、この一歩を踏み出すことを躊躇ってしまう。
主任の笑顔を見つめながら、今までのように怖気づいてしまいそうになるのを、主任の笑顔に後押ししてもらいながら、なんとかして一歩を踏み出すべく。
主任の眩しい太陽みたいな笑顔目掛けて、震えてしまいそうになる声を抑えつつ、声を振り絞った。
「……私、高校の時、大学生の彼とその友人に、……襲われ、そうになって……。けど、……もう大丈夫だって、思ってた。……なのに、主任のこと、怖いと思っちゃって。……ずっとそうだったらどうしようって、凄く、不安で……。こんな私でも、……す、好きで、いてくれますか?」
――主任の反応がどんなものなのか怖くて堪らない……。
けど、怖いクセに、怖いもの見たさからなのか、主任から視線を逸らすこともできなくて。
涙で歪んで見える主任の笑顔を見つめたまんま動けないでいると。
私の頬を優しくてあったかい主任の両掌がまるで大事なものを包み込むみたいにして。
ソっと滑るように優しく添えられたかと思えば、涙で歪んだ主任の笑顔が、涙で霞む私の視界一杯に映しだされた。
そうして、ゆっくりと私の耳元に近づいてくると、
「あぁ。お前がイヤだって言っても、ずっと、ずっと、好きでいてやる。俺が、お前の背負ってきた色んなもん全部取っ払ってやるから、そんな不安そうにするなよ、な?」
優しく囁きかけながら、私の身体を優しく包み込むようにして頬に添えられてた両手を私の背中に回し、ゆっくりと自分のあったかい胸へと優しく抱き寄せてくれた。
ひだまりのようにあったかくて心地良くて頼もしい大きな胸に。
主任の囁いた言葉に、感極まってしまった私は、涙腺が決壊したように涙が溢れ出して止まらない。
主任に抱き寄せられた腕の中、私の言葉なんか聞いちゃくれない俺様主任に向けて、もう言い返す力をなくした私がボソッと返せば。
さっきから、凄い勢いで怒ってて、ピリピリしていた筈の周りの空気と、強い力がこめられてた主任の腕の力が何故かフッと緩んで。
未だ泣き続ける私の顔をソっと上げさせたかと思えば。
涙で濡れてグチョグチョの頬を指で優しく拭いながら、さっきまでの般若顔と同一人物なのかと疑ってしまうくらいの、フッと柔らかい極上の笑みを浮かべた主任が、
「あぁ、なんとでも言えばいい……。何言われたって、やっと手に入れたお前のこと、離してなんかやんねぇからな。こうやって、お前が弱気なこと言って泣くの見てるだけで、可愛くて、愛おしくて堪んねぇんだから……。もう、諦めろ」
笑顔と同様、柔らかくて優しくて、とっても穏やかな口調で囁くように言葉を紡ぎだした。
主任が最後に悪戯っ子のように『もう、諦めろ』って言いながら浮かべた笑顔が涙で歪んでいても眩いくらいに輝いて見える。
――どうしてなんだろう……。
さっきまで、主任に嫌われるのが、あんなに不安でしょうがなかった筈なのに……。
もしかしたら、主任なら、過去にあった嫌な記憶ごと、私のことを受入れてもらえるんじゃないかって。
そんな自分勝手なことを思ってしまう。
さっきは、あんなに怖くて、大好きな筈の主任のことをどうしても受け入れることができなかったっていうのに……。
主任の眩いくらいに輝いて見える、何もかもをあたたかく包み込んでくれるんじゃないかってくらいに、あったかくて優しい太陽みたいな笑顔に縋ってしまいたくなる。
――でも、やっぱり怖くて……。
どうしても、この一歩を踏み出すことを躊躇ってしまう。
主任の笑顔を見つめながら、今までのように怖気づいてしまいそうになるのを、主任の笑顔に後押ししてもらいながら、なんとかして一歩を踏み出すべく。
主任の眩しい太陽みたいな笑顔目掛けて、震えてしまいそうになる声を抑えつつ、声を振り絞った。
「……私、高校の時、大学生の彼とその友人に、……襲われ、そうになって……。けど、……もう大丈夫だって、思ってた。……なのに、主任のこと、怖いと思っちゃって。……ずっとそうだったらどうしようって、凄く、不安で……。こんな私でも、……す、好きで、いてくれますか?」
――主任の反応がどんなものなのか怖くて堪らない……。
けど、怖いクセに、怖いもの見たさからなのか、主任から視線を逸らすこともできなくて。
涙で歪んで見える主任の笑顔を見つめたまんま動けないでいると。
私の頬を優しくてあったかい主任の両掌がまるで大事なものを包み込むみたいにして。
ソっと滑るように優しく添えられたかと思えば、涙で歪んだ主任の笑顔が、涙で霞む私の視界一杯に映しだされた。
そうして、ゆっくりと私の耳元に近づいてくると、
「あぁ。お前がイヤだって言っても、ずっと、ずっと、好きでいてやる。俺が、お前の背負ってきた色んなもん全部取っ払ってやるから、そんな不安そうにするなよ、な?」
優しく囁きかけながら、私の身体を優しく包み込むようにして頬に添えられてた両手を私の背中に回し、ゆっくりと自分のあったかい胸へと優しく抱き寄せてくれた。
ひだまりのようにあったかくて心地良くて頼もしい大きな胸に。
主任の囁いた言葉に、感極まってしまった私は、涙腺が決壊したように涙が溢れ出して止まらない。
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