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episoudo:7
#2 *黒木愛side*
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主任の言葉が耳に流れ込んできた瞬間。
私を抱きしめている主任の腕の力が強くなった瞬間。
主任の胸からのトクントクンと一定の穏やかなリズムと、優しさがあったかい体温と一緒に伝わってきた。
その優しさが、心のずっと奥の方に染みこんでくるようで、流れ出る涙の後を追いかけるようにして、新たな涙が一杯溢れて止まらなくなってしまった。
思い出したくもない嫌なモノ何もかもをなかったコトにして、このまま主任の優しさに縋ってしまいたくなる。
けど、大好きな筈の主任と、思い出したくもない嫌な記憶とが重なって。
怖くて堪らなくなってしまった私は、主任のことをどうしても受け入れることができなかった。
こんなんじゃ、いくら優しい主任だって、いつかきっと私のことが嫌になるに決まってる。
――イヤだ、そんなの耐えられない。
だったら、いっそのこと、なんにもなかったコトにしてしまった方がマシだ。
そう思ってしまった私は、泣きながらメチャクチャなことを口走ってしまっていた。
「イヤだっ! ……や、やっぱり、主任と私って、上司と部下だし、合わないんですよ? だから、なかったコトにしてください。ワガママに付き合わせて、すみませんでした」
本当に、自分でもメチャクチャだなって思う。
それでも、こんな私じゃ、主任にずっと好きで居てもらえるなんてこと……
――ありえるはずもない。
主任にいつ嫌われてしまうか、ずっと怯えて過ごすなんて、とてもじゃないけど耐えられない。
だから、これで良かったんだと思う。
主任だって、こんなメチャクチャなことを言う私のことを呆れているに違いない。
今はちょっと辛いけど、そのうちにまたいつもどおりになれる筈。
――舞には、メチャクチャ怒られるんだろうな。
不意に凄い怖い表情をした舞の姿が脳裏を掠めていく。
それは、時間にすると、ほんの数秒間だと思うけれど、私にはとても長い時間に感じられた。
その間に、自分にそう何度も何度も言い聞かせるようにして固く心に決めた私は、主任の腕の中から逃れるべく。
最後の力を振り絞るようなつもりで、主任の胸に両掌をついて力一杯押し返した。
けれど、そんな私の浅はかな決断は、いつもの俺様主任によって呆気無く打ち砕かれることになる。
「お前、バカじゃねぇのっ!? んなこと言われたからって……。この俺が、ハイ、そうですかって、納得するとでも思ってんのかっ!?」
舞の怖い表情なんて霞んでしまう程。
本物の般若にでもなったのかってくらいの。
今の今まで、一度も見たことが無いような、メチャクチャ怖い表情をした主任によって。
その余りの気迫と、般若の如き形相へと豹変した主任の顔に慄《おのの》き、鼻息荒く怒った主任の地を這うような重低音ボイスに思わず、目を強く瞑ってビクッと肩を跳ね上がらせてしまった。
それでも、こんなことで怯んでる場合じゃないと、強く閉ざした瞼をなんとか上に押し上げて、再び主任の胸に無理やり強く引き寄せられた身体を、両手でエイッとばかりに引き剥がしながら、必死になって喉から声を絞り出した。
「……納得、……して、くださいよ。じゃないと、主任に、……いつ、嫌われるかって……、ビクビク……するの、イヤ、なんだもんっ」
それでも、どうしても主任の殺気立ったような気迫に圧され、ただ声が震えるだけじゃなくって、無理やりなんとか引っ込めてた筈の涙も、ほんのひと雫、零れ出ただけで。
それらが呼び水となり再び溢れ出してしまって。
今度こそ止まらなくなって、自分じゃどうすることもできなくなってしまったのだった。
直後、やっとのことで主任との間に僅かな隙間ができたというのに……。
主任はそんなことさせるかって勢いで、泣きじゃくる私のことを自分の胸に、もっと強く押し付けるようにして抱き寄せた。
そして、私の言葉に大噴火をおこしたんじゃないかって程に。
憤慨してマグマをぶち撒けるかのように、今は胸に顔ごと押し付けられているせいで、主任の表情なんてうかがい知ることはできないけのだけれど……。
さっきと同様、般若の如く怖い表情をしているであろう主任によって、私の放ったモノの何倍もの威力を込めた言葉が矢継ぎ早に返された。
「お前さぁ、仕事ん時はスッゲー自信たっぷりで、色々突っかかってくるくせに……。まだ俺と付き合ってもねぇうちに、俺に嫌われるのが怖いから、なかったコトにしてくれだ!? 誰だって……不安なんだよ。俺だってお前に嫌われたくなんかねぇんだよ。
けど、俺は、まだどうなるかも解んねぇ先のこと悲観して、なかったコトになんかしてやらねぇからなっ!」
まるで、私が何を言っても、聞いてなんかやらねぇって感じで一一取り付く島もない。
私を抱きしめている主任の腕の力が強くなった瞬間。
主任の胸からのトクントクンと一定の穏やかなリズムと、優しさがあったかい体温と一緒に伝わってきた。
その優しさが、心のずっと奥の方に染みこんでくるようで、流れ出る涙の後を追いかけるようにして、新たな涙が一杯溢れて止まらなくなってしまった。
思い出したくもない嫌なモノ何もかもをなかったコトにして、このまま主任の優しさに縋ってしまいたくなる。
けど、大好きな筈の主任と、思い出したくもない嫌な記憶とが重なって。
怖くて堪らなくなってしまった私は、主任のことをどうしても受け入れることができなかった。
こんなんじゃ、いくら優しい主任だって、いつかきっと私のことが嫌になるに決まってる。
――イヤだ、そんなの耐えられない。
だったら、いっそのこと、なんにもなかったコトにしてしまった方がマシだ。
そう思ってしまった私は、泣きながらメチャクチャなことを口走ってしまっていた。
「イヤだっ! ……や、やっぱり、主任と私って、上司と部下だし、合わないんですよ? だから、なかったコトにしてください。ワガママに付き合わせて、すみませんでした」
本当に、自分でもメチャクチャだなって思う。
それでも、こんな私じゃ、主任にずっと好きで居てもらえるなんてこと……
――ありえるはずもない。
主任にいつ嫌われてしまうか、ずっと怯えて過ごすなんて、とてもじゃないけど耐えられない。
だから、これで良かったんだと思う。
主任だって、こんなメチャクチャなことを言う私のことを呆れているに違いない。
今はちょっと辛いけど、そのうちにまたいつもどおりになれる筈。
――舞には、メチャクチャ怒られるんだろうな。
不意に凄い怖い表情をした舞の姿が脳裏を掠めていく。
それは、時間にすると、ほんの数秒間だと思うけれど、私にはとても長い時間に感じられた。
その間に、自分にそう何度も何度も言い聞かせるようにして固く心に決めた私は、主任の腕の中から逃れるべく。
最後の力を振り絞るようなつもりで、主任の胸に両掌をついて力一杯押し返した。
けれど、そんな私の浅はかな決断は、いつもの俺様主任によって呆気無く打ち砕かれることになる。
「お前、バカじゃねぇのっ!? んなこと言われたからって……。この俺が、ハイ、そうですかって、納得するとでも思ってんのかっ!?」
舞の怖い表情なんて霞んでしまう程。
本物の般若にでもなったのかってくらいの。
今の今まで、一度も見たことが無いような、メチャクチャ怖い表情をした主任によって。
その余りの気迫と、般若の如き形相へと豹変した主任の顔に慄《おのの》き、鼻息荒く怒った主任の地を這うような重低音ボイスに思わず、目を強く瞑ってビクッと肩を跳ね上がらせてしまった。
それでも、こんなことで怯んでる場合じゃないと、強く閉ざした瞼をなんとか上に押し上げて、再び主任の胸に無理やり強く引き寄せられた身体を、両手でエイッとばかりに引き剥がしながら、必死になって喉から声を絞り出した。
「……納得、……して、くださいよ。じゃないと、主任に、……いつ、嫌われるかって……、ビクビク……するの、イヤ、なんだもんっ」
それでも、どうしても主任の殺気立ったような気迫に圧され、ただ声が震えるだけじゃなくって、無理やりなんとか引っ込めてた筈の涙も、ほんのひと雫、零れ出ただけで。
それらが呼び水となり再び溢れ出してしまって。
今度こそ止まらなくなって、自分じゃどうすることもできなくなってしまったのだった。
直後、やっとのことで主任との間に僅かな隙間ができたというのに……。
主任はそんなことさせるかって勢いで、泣きじゃくる私のことを自分の胸に、もっと強く押し付けるようにして抱き寄せた。
そして、私の言葉に大噴火をおこしたんじゃないかって程に。
憤慨してマグマをぶち撒けるかのように、今は胸に顔ごと押し付けられているせいで、主任の表情なんてうかがい知ることはできないけのだけれど……。
さっきと同様、般若の如く怖い表情をしているであろう主任によって、私の放ったモノの何倍もの威力を込めた言葉が矢継ぎ早に返された。
「お前さぁ、仕事ん時はスッゲー自信たっぷりで、色々突っかかってくるくせに……。まだ俺と付き合ってもねぇうちに、俺に嫌われるのが怖いから、なかったコトにしてくれだ!? 誰だって……不安なんだよ。俺だってお前に嫌われたくなんかねぇんだよ。
けど、俺は、まだどうなるかも解んねぇ先のこと悲観して、なかったコトになんかしてやらねぇからなっ!」
まるで、私が何を言っても、聞いてなんかやらねぇって感じで一一取り付く島もない。
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