【R18】ありえない恋。

羽村美海

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episoudo:4

#9 *黒木愛side*

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「はぁ!? いくら直樹さんの好きな女のタイプが自分と全然違うからって……。直樹さんが愛のことどう思ってるかなんて、そんなの本人にちゃんと聞いてみないと解んないでしょー? それに、どうして直樹さんの友人の、その相川さん? なんで、その人と映画になんて行くことになっちゃうのよっ? もう、意味解かんないんだけど? ちょっと愛、聞いてるの?」

「……聞こえてるわよ。私だって、どうしてかなんて解んないわよ…」


 定時で仕事が終わってからも、ウジウジと後悔ばかりを繰り返していた私は、なんとかこの無限に続いてしまいそうな、負のループから抜け出したくて。

 チャラ男と付き合いだした悪趣味の舞に電話を入れて、チャラ男よりも先に舞を捕まえたまでは良かったんだけど……。

 電話で簡単に、今日のランチタイムでのありえない出来事の数々を簡単に説明したところ、すんごい勢いで私の部屋に押しかけてきた舞によって、すんごい形相で鼻息荒く、只今絶賛お叱りを賜っているのだった。

 いつもは、おっとりしていて穏やかな性格の筈の舞が、呆れ果て怒ってしまい興奮気味なのに対して。

 一方の私はというと、いつものツンケンした威勢はどこえやら、シュンとしょげた状態になってしまっている。

 いつもの私たちとは違っていて、まるで中身が入れ替わってしまったような真逆の状態だ。


「ちょっと、愛? 何泣いてんのよ……。泣いても、なかったことになんかなんないのよ?」

「……解ってるわよ……。解ってるけど、勝手に出てきちゃうんだから、しょうがないじゃない……。ねぇ? どうして? どうして、こんなに苦しいのかな? いつの間に、こんなに好きになってたのかな? もう、ヤダよ……。どうしてこんなに苦しい想いしなきゃなんないの?」

「……愛ってば、もう……。そんなに泣かないの? ヨシヨシ、それだけ直樹さんのこと好きなんだったら、もう、言っちゃえば良いのに…」

「そんなこと言えないよ……。フラれちゃっても、ずっと一緒に仕事しなきゃなんないんだよ? そんなの、耐えられないもん…」

「そりゃそうだけど、相川さんって人に付き合おうとか言われても、今度はちゃんと断んなきゃダメだからね?」

「……うん」

 舞と話してるうちに、主任への想いが溢れて止まらなくなってしまった私は、舞に抱きついて泣くことしかできなくなってしまって。

 舞は舞で、私に貰い泣きしてしまったようで、私の頭を優しく撫でながら抱きついてきた。

 そして、優しく言い聞かせるように言ってくれるから、その優しさに余計涙が溢れてくる。

 お互いの涙が止まるまでの間、二人で抱き合いながら泣き続けた。

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