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episoudo:2
#5
しおりを挟むそれでも、笑いを抑えて、
「……“イケメンさん“かどうかは別として……。まぁ、人並みにはな」
優しい口調でちゃんと答えてやると……。
「優しく、してくらしゃいね?」
黒木は、小さな声ではあるけれど、シッカリとした口調で返してきた。
「あぁ、精一杯優しくしてやる」
黒木の言葉を聞いた俺は、無意識にそう答えていた。
そしたら、俺の言葉を聞いてすぐ、俺にされるがままに抱きしめられていた黒木が躊躇いがちではあるけれど。
ゆっくりと俺の背中に腕を回してくると、覚悟ができたっていうように、俺にギュッとキツく抱きついてきた。
まぁ、でもそれは、俺の都合の良い解釈かもしれねぇけど……。
その瞬間、僅かに踏み留まっていた理性が、ガラガラと音を立てて崩れ去っていくのを感じた。
ゆっくりと黒木の身体をベッドに寝かせて組み敷くと、緊張してるであろう黒木はギュッと瞼を閉じたまま、身体もガチガチにして縮こまってしまって。
俺になんとか少しでも緊張を解いてやろうと、
「黒木、そんなに怖がんなよ……。心配しなくても、とって食ったりしねぇよ…」
やんわりと見つめて軽く笑いかけながら声をかけてやると、黒木は恐る恐るって感じでゆっくりと目を開けて、上目遣いに視線を俺へと向けてきた。
黒木のその潤んだ瞳には、もう不安の色しかないようで。
みるみるうちに憂いと一緒に、溢れんばかりの水気を帯びていく。
極度の緊張状態だったのが振り切れて、限界に達したかのように……。
とうとう俺の下で目に溜まった涙をポロポロと零し始め、本格的に泣きだしてしまった黒木。
「うぅ、……らって、怖いもんは怖いんらもん……ふぇ」
震える唇からも少し掠れた震えた声が零された。
俺は黒木の身体のすぐ隣に寝転んで、黒木の頭を抱え込むようにして胸に抱き寄せて。
「そうだよな……。怖えもんは怖えよな…」
優しく耳元で囁いてやりながら、背中へも腕を回してそっと包み込んでやった。
自分でもどうしてか解かんねぇけど、行為云々を続けたいとかじゃなくて。
ただ俺は、黒木をどうにか泣き止ませようと、そのことだけで頭の中は一杯だった。
泣き続ける黒木の背中をソっと撫でながら、俺は静かに安堵の息を漏らした。
もし、あのまま、黒木が泣いていなかったら、酔ってるコイツを利用して、未だ心ん中に居続ける高岡芽依の身代わりに、間違いなく俺はコイツを抱いてただろうと思う。
酔ってて、なんの判断も下せないコイツに、漬け込むような真似をして。
しかも、コイツが傷付くって解っていながら……。
そんなことしたからって、忘れることなんてできる筈なんかねぇのに……。
虚しくなるだけだって、そんなこと解っている筈なのに……。
泣かしてしまった黒木には悪いことしたけど、泣いてくれたお陰で本当に助かった。
そんなことを考えていた俺は、無意識に黒木の耳元で声を漏らしていた。
「……黒木、ありがとな…」
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