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まさかのハピエン!?

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 あの日は、前に勤めていた職場のパワハラ上司に酔わされて危うくホテルに連れ込まれそうになって、たまたま通りがかった秀に助けてもらい事なきを得た。

 秀が女装していたのは、直前まで一緒にいたらしい、同人作家である従姉妹の悪ふざけのせいだったらしい。

 恋が男性恐怖症のようだったため、女装男子という設定に加えてゲイという設定も継続させてしまい、今に至るのだという。

 本当は、偽りの結婚を申し込んだあの日、全てを話そうとは思ったそうだが、恋の反応が怖くて言い出せなかったらしい。

 それから男性恐怖症の症状が出なかったことで、恋にとって自分が稀有で特別な存在なら、そのうち男性恐怖症も克服できるかもしれない。

 偽りの婚約者として過ごすうちに恋に男として意識してもらえるかもしれない。

 偽りとはいえ、結婚して同じ時間を共有していくうち、好きになってくれるかもしれない。

 けれど恋のことを騙したままでは結婚なんてできない。という想いからプロポーズを決行してくれたのだという。

 秀の医療秘書として恋が働くようになった裏には、諸々の事情を熟知していた青山が、恋に少しでも秀の良さを知ってもらおうという、少々いきすぎた根回しのせいだったらしい。

 その根回しのおかげで秀のことを好きだと自覚することになったのだから、さすがは切れ者執事。

「……そう、だったんだ」

 正直、驚きでしかなかった。

 今の心境を表現するなら、この言葉に尽きる。

 女装男子の件は、できすぎのような気もしたが、自分のためにそこまでしてくれていたことに対しては、素直に嬉しい。

 ーーいや、大いに嬉しい。メチャクチャ嬉しい。

「ああ。俺が意気地がないばっかりに、本当に悪かった」

 それに、男性恐怖症のことを思えば、秀がそうするより他に術がなかったことも理解できる。

 恋がそう思っているとも知らずに、猛省しきりの秀はシュンとした声音を震わせる。

「許してもらえなくても当然だと思うし、気持ち悪い男だって思われても仕方ないって思っている」

 もういいから。そう声をかけようとしたとき、秀が息を大きく吸い込んだ。

 そうして恋の身体の向きを変えて正面から向かい合い、真っ直ぐに見つめてくる。

「それでも諦められない。恋に出会っとき、一目惚れしたんだ。雷にでも打たれたような気がした。一緒に過ごすうち、楽しそうに笑ったり、怒ったり、色んな表情を見せてくれる恋のことをどんどん好きになった。言葉では言い表せないくらい好きだ。愛してる。絶対に幸せにするから、俺と結婚してほしい」

 これまで見てきた中で一番だと思う。

 怖いくらいに真剣で、それでいてどこか不安そうにしている秀の姿に、恋の胸は、息もできないほどに締め付けられる。

 苦しくてどうしようもないくらいに、胸がときめく。

 秀のことが好きだと、秀から一ミリも離れたくないと、心が身体に訴えかけてくる。

 もう迷いなんて微塵もなかった。

「私も秀が好き。大好き。自覚してなかっただけで、ずっと好きだったんだと思う。こんなにも好きにさせたんだから、責任とって結婚してくれなきゃ、困る」

 想いをぶつけた瞬間、秀に物凄い力でぎゅうっと掻き抱かれていた。

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