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まさかのハピエン!?
②
しおりを挟むまさか、酔った勢いで言ったことを覚えてくれているとは思いもしなかった。
こんなサプライズのようなことをされたら、今度こそ勘違いしてしまいそうだ。
そんな恋の心情にトドメでも刺すかのような言葉が秀の口から紡ぎ出される。
「貸し切ったもののイベントがあるとかで二時間が限度だったけどな」
ーーもしかしなくても、私のために、わざわざ貸し切ってくれたんだ。そんなことされたら、もう。
恋が今度こそ降参しかけたところに、秀の急かす声がして。
「時間がもったいない。ほら、行くぞ」
しっかりと手を繋ぎとめられた恋は秀に手を引かれるままに足を踏み出していた。
「あっ、ちょっと。待ってよ、秀ッ!」
どうやら本当に貸し切ってくれているようで、小走りで駆けていく秀と恋、従業員らしき人以外には行き交う人は誰もいない。
どれほどの距離を走っただろうか。観覧車の全貌を正面に望める広場までくると、秀はメリーゴーラウンドの前でピタリと止まり、クルリと振り返ってくるなり、なぜか足元に跪いてしまった。
あたかもお姫様の足元で王子様が傅くように片膝をついて、恋のことを熱の籠もった眼差しでまっすぐに見上げてくる。
何が始まるのだろうかという期待感からのドキドキか走ったせいか、それとも胸のときめきか。もはや何からくるのかわからない胸の高鳴りを感じつつ、恋は秀のことをただただ見下ろしていた。
「まずはこれを受け取ってほしい。恋に出会ったとき、恋にはこの可憐な花がよく似合うと思ったんだ」
秀がそう言って胸の前で掲げるようにして恋に差し出してきたのは、淡いピンクと紫と白、三色の釣り鐘型の花弁が印象的な、カンパニュラの可愛らしいブーケだった。
母が大好きだった花だ。
その見た目から風鈴草とも呼ばれているカンパニュラの花言葉には、感謝、誠実な愛、共感、節操、想いを告げる。などがあるが。
母は生前幼い恋に、『誰に対しても感謝を忘れず誠実にね』とよく言って聞かせていたらしい。
それを父が引き継ぎ、今では家訓のようになっている。
遠い母との記憶を手繰り寄せていた恋の意識に秀の凜とした声音が届いて鼓膜と胸とを打ち震わす。
辺りから全ての音が消え去り、あたかも時間までが止まったような錯覚を覚える。
「恋と出会ったときからずっとずっと好きだった。偽りじゃなく、俺の本物の奥さんになってほしい」
目の前の光景が信じられず、恋は呼吸も身動ぎも忘れてただただ呆然と秀の姿を凝視したままでいる。
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