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女装男子とまさかの熱夜!?

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 それらはおそらく、派遣の契約が解除されてしまうことに落ち込んでいた、恋のことを励まそうとしての言葉だったに違いない。

 そうだとわかってはいるのに、カレンに縋ってしまいたくなる。

 否、もう既にカレンに縋っているから、こうなってしまっているのだ。こうなってしまった以上、前に進むしかない。

 幸いなことに、どんなに大きなリスクを伴ってしまうとしても、酔ったせいにできる。

 この場合のリスクとは、親友であるカレンとの関係が壊れてしまうことだ。

 ーーうん。だったら恥ずかしがっている場合じゃない。女は度胸だ。どうせ明日になったら覚えてないんだし。

 楽観的思考を発揮しているところに、再びカレンの声が届いた。

「どうした? 我に返って、俺とこうなったことを後悔でもしてるのか?」

 先程と同じ、傲慢な物言いだ。

 けれど悲しい色を孕んでいるように聞こえてしまう。

 きっと恋と同じで、これまでの関係が壊れてしまうのが怖いからに違いない。

 ここで後悔していると勘違いされたら、カレンはおそらく中断してしまうだろう。

 ーーそれは困る。せっかくのチャンスなのに。ここまできて、なかったことにされては堪らない。早く再開してもらわなきゃ。

 心なしか心配そうに恋の瞳の奥を覗き込むようにして様子を窺っているカレンの首にぎゅっと抱きつき、精一杯のお強請りを繰り出した。

「ちょっと恥ずかしかっただけだから。続けて。お願い」

 恋が言い切った刹那。恋の身体は見る間にベッドへと組み伏せるようにして覆い被さってきたカレンにより組み敷かれ、濃厚なキスにより思考もろとも奪われてしまう。

「ーーん、ふッ……んんぅ!?」

 気づいたときには、恍惚の中で酔い痴れ、ぐったりと力の抜けきった身体をシーツの波に投げ出していた。

 そんな恋の両脚は大胆に押し開かれていて、その間に押し入るように身を割り込ませたカレンの熱くねっとりとした舌をむりくり捩じ込むようにして穿たれている、というなんとも恥ずかしすぎる体勢で、骨抜きにされている真っ最中だ。

 赤子の頃ならあるかもしれないが、生まれてこの方、口に出すのもはばかられるような恥ずかしいところを誰かに見られたこともなければ、触れられたこともない。

 ましてや誰かに舌を捩じ込まれることになろうとは、夢にも思っていなかったことだ。

 いくら未経験で処女の恋にも、セックスの知識くらいはある。

 けれど、まさか自分がそんな状況に置かれることになるなんて、あるはずないとさえ思っていた。

 本来ならばあり得ないことだったのだ。

 ーーやっぱりカレンは特別なんだ。

 恋はぐったりと力の抜けきった身体を投げ出したまま、羞恥と快楽の大波にもまれ悶えに悶えながらも、頭の片隅でそのことを確信していた。

 恋の潤みきった瞳の周りには性的な涙で溢れかえっていたはずが、胸の奥深くからじんわりと込み上げてくる喜悦を孕んだあたたかな雫が頬を伝い落ちてゆく。

 カレンによって生まれて初めて味わわされる、この世のものとは思えぬほどの甘味な快感の大きな波に呑み込まれ、どうにかこうにか保っていられた意識が混沌とし始める。

 いつしか閉ざした瞼の裏では眩いばかりの閃光が弾け飛ぶ。

 その瞬間、頬を流れ落ちてゆくあたたかな感触を感じたのを最後に、恋は意識を手放してしまう。

 それは、心地いいぬくもりに優しくけれでもしっかりと、あたかもふわふわと柔らかな真綿で大事に包まれているような夢心地で、このまま昇天でもしてしまうかのような、そんな幸せな心地だった。

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