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はじまりの夜 ♯2 ✱

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 私の返事を耳にした窪塚は、苦笑すると軽口を叩いてきた。

「こら、そんな可愛いこといってっと。俺のことだから、また我を忘れて暴走するぞ? それでもいーのかよ?」

 それはきっと、私が言い出しやすいように気を遣ってくれているからに違いない。

 情事の時には意地悪だけど、普段はとっても優しいし、生真面目なところもあるし、頼もしいところだってある。

 いつもいつも私のことだけを優先させてくれる。

 初めて出会ったときから、ずっとずっと好きでいてくれていて、今も変わらず好きでいてくれている。

 そして一生かけて幸せにしてくれると誓ってくれた。

 口下手なところや不器用なところもあって、ヘタレなところもあって……。

 長所も短所も何もかもひっくるめて全部全部好きだ。

 情事の時に意地悪だったりするけど、それは、我を忘れるくらい興奮して私のことだけを熱烈に求めてくれてるからだ。

 そういう窪塚のことも愛おしくてどうしようもない。

「いいよ。我を忘れるくらい、圭が私のことしか見えてないって証拠だもん。嫌なわけない」

 私の言葉を聞くやいなや窪塚は私のことをいつもそうしてくれているように、逞しい胸に抱き寄せるとぎゅうぎゅうに抱き竦めてきた。

 そこに窪塚から返事が返ってくる。

「だからそんな可愛いこと言われたら、マジでヤバいんだって。あー、くそッ」

 その苦しそうな物言いに余裕がないことが窺えて、私は大慌てで声を放った。

「あっ、でも、私たちにとって今夜は特別な夜だし。三年前のあの夜の記憶が曖昧な分、今夜ははじめから終わりまでずっと圭のこと感じてたいの。だからほどほどにして欲しい」

 それはいつもいつもすぐに達してしまって、気づいたときにはもう朝だった。なんてことが何度もあったからだ。

 初めてのあの夜の記憶が曖昧なので、せめて今夜のことは何もかも覚えていたいーー。

「ホントに、俺の奥さんは可愛いことばっか言ってくれるよな」

 窪塚は、ほとほと困ったというように呟きを落としてから。

「わかった。精一杯優しく手加減できるよう努める。その前に、鈴からキスして欲しい」

 しっかりと約束してくれたあとで、そんな可愛いお強請りをしてきた。

 自分から言ってきたクセに照れているのか、視線を落とすと同時に目を閉じてしまっている。心なしか頬まで赤らめているように見えるし。

 ーーか、可愛い。

 私はたちどころに胸をキュンキュンとときめかせて身悶えてしまう。

 するとその短い時間も待てなかったようで、ムッと拗ねたように唇を尖らせた窪塚が焦れたように急かしてくる。

「こら、焦らすな」

 そんな声でさえも愛おしくてどうしようもない。

 相変わらず拗ねたように唇を尖らせたままの窪塚の腕から抜けて僅かに距離をとる。

 そうして頬にそうっと両掌を添えてチュッと優しく口づけた。

 何度も啄みあい何度も深い口づけを交わしあった結果、唇が腫れぼったくなっている気がする。

 そんなことを気にしている間もなく、キスだけで蕩けてしまった足の裂け目の秘裂に指をつぷりと穿たれた。

 同時にくちゅっと濡れた音が鼓膜を震わせ、羞恥を煽ってくる。

「あっ……やぁ……んんぅ」

 カアッと全身を紅潮させた私の半開きになった唇からは、悩ましくも甘ったるい吐息と嬌声とが零れ落ちていく。

 続けざまに媚壁を引っ掻くようにして速い動きで攪拌されれば、そこから生じる痺れるような刺激が快感となって全身へと駆け巡る。

 緩やかにけれど確実に攻め立ててくる巧みな手技に、身悶え腰をくねらせる。

 窪塚の腕に縋るように捕まっていることで堪えしのぐことしかできないでいた。

「鈴はここが好きだよな」

 そんな意地悪な声が耳元で落とされた時には、何もかもを知り尽くした窪塚の指によりお腹の裏側の弱いポイントを強く穿たれ。

「……ひぃ、やあぁん!」

 軽く達してしまった私の蜜洞が収縮し、窪塚の指を体内に取り込むように食い締める。

 それをやっぱり意地の悪い言葉で問われても、もう恥ずかしいとか言えるような余裕などなかった。

「すっげー食いつき。そんなによかったのか?」

 久しぶりに窪塚から与えられる愉悦に支配された私の身体は、もう指だけじゃ満足できないようだ。

 速く窪塚自身で満たして欲しい。そう本能が訴えかけてくる。

「はぁ、はぁ、気持ち……いい。けど、圭がいい。速くぅ……お願いッ」

 本能に突き動かされてしまっている私は本能のままに声を絞り出していた。

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