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久方ぶりの甘い夜 #1 ✱微
しおりを挟む私の気持ちが幾ばくか落ち着いた頃。
「鈴。そろそろ可愛い顔見せてくんね?」
私のことを大事そうに胸に抱き寄せてくれている窪塚からおどけた声がかけられた。
けれど落ち着きを取り戻しているので、崩れているであろうメイクがどうにも気にかかってしまう。
「メイクが崩れてるからヤダッ!」
無駄なあがきだとは思いつつも、窪塚の胸に顔をこれでもかというくらいに押しつけて、見られないようにするのに必死だ。
「そんな心配しなくても、鈴は化粧なんかしなくても十二分に可愛いから気にすんなって」
それを軽口を叩く窪塚に難なく阻止されて、胸から引き剥がされてしまった私の顔は、窪塚の男らしく節くれだった大きな手により頬を包み込むようにして捉えられている。
眼前で涙にまみれてぐちゃぐちゃの顔を晒しているという羞恥に、思わず目を閉じ視界を遮断する。
「////……そ、そんなわけないでしょうが」
ただでさえメイクが崩れているというのに、顰めっ面の顔は不細工そのものに違いない。それなのに……。
窪塚は優しく慈しむようにして、幾度も幾度も、柔らかな唇で涙の痕をそうっと拭ってくれている。
その触れ方があまりに優しくて心地がいいものだから、頑なになっていた身も心も解れて無意識に開け放った視界の先には、当然窪塚の端正な顔が映し出された。
念願叶って、ようやくプロポーズの言葉をもらったからだろうか。
その眼差しがこれまで以上に優しくて、これまで以上に熱っぽさと甘さを孕んでいるように見える。
そんな艶めいた官能的な眼差しで見つめられ、極上の笑みまで向けられてしまっては、ひとたまりもなかった。
「ーーッ!?」
たちまち私は、身も心も腑抜けにされて、囚われてしまったかのように身動ぎさえも叶わない。
どこか現実味がなくて、ぽうっと夢現でまどろんでいるうち、いつしか窪塚に優しく唇を奪われていた。
「……んんっ、……ふぅ……」
そうして私の唇の滑らかな質感と温度を確かめるように、ゆっくりじっくりと唇の上下を交互に優しく啄んでいるうち、微かに開いた隙間からねっとりとした熱い舌が押し入ってくる。
あたかもお伺いでも立てるようにして、歯列を優しくなぞられているうちに、緩んだところから窪塚の熱くざらついた舌が挿し入れられ、口蓋をやわやわと執拗に撫でられて、身体からくたりと力が抜けていく。
いつしか窪塚によって身体はしっかりと抱き込まれ、大きな手では背中を支えられ、私の舌は完全に絡め取られてしまっていた。
腔内を余すことなく蹂躙されて、どちらのものかも判別できない夥しい唾液で溢れかえっている。
窪塚の熱くねっとりとした舌に絡めとられて貪欲に貪られるたびに、電流でも流されたようなゾクゾクとした戦慄が腰元から脊髄を駆け巡る。
あたりに立ち込める、ぴちゃくちゃと艶かしく濡れた音色が鼓膜と心をも打ち振るわす。
堪らず窪塚の胸元のスエットの生地をぎゅっと掴んで堪えしのごうと思っていると、背中に回されていたはずの窪塚の手がつーとファスナーを器用に下ろす感覚がして。
そのときには、エプロンを着けたままのワンピースが首元からハラリとはだけ、純白のシルクのキャミと下着とが露わになっていた。
そうして露わになった素肌の肩口や首筋や鎖骨へと窪塚の熱い舌と唇とが這わされていて、途端に羞恥を覚えた私が思わず「ヤッ」と声を漏らすも。
「メチャクチャ綺麗だから安心しろって。触れるたびに紅く色づいてくのが色っぽくてたまんねー。それに、俺のために選んでくれたんだろ? この可愛い下着も」
抗議の視線を向けた先の窪塚は、やっぱり気にもとめない素振りだ。
この日のために用意した淡いラベンダー色の大人っぽいブラのレース生地に施されている可憐な花々の繊細な刺繍を、ゆっくりと焦らすようにして指でなぞりつつニッコリと微笑んでくる。
「ーーッ!?」
その破壊力満点の微笑にハッと息を呑み、見蕩れている間にも、窪塚の指は動いていて、そのたびに微かに甘い痺れが生じて条件反射で放った否定の言葉も、言い終えないうちに甘い吐息が邪魔をする。
「////……ちがーーんぅ」
羞恥にまみれている私のことを、窪塚は欲情の炎を燻らす熱い眼差しで見据えたまま弱いところばかりに狙いを定め、ブラのレース越しに胸の先端を嬲りつつ、意地の悪い声音で囁きかけてくる。
「そういう意地っ張りなとこも可愛くてたまんねー。触れるたびに身をよじって可愛い声で喘ぐのも色っぽくて堪んねーし。けど、もっともっと苛めて、素直に俺のことを欲しがる鈴が早く見たくて堪んねーよ」
そこまで言うと、苦しげに端正な顔を歪ませた。
どうしたのかと不思議に思っていると、切なげに呻いた窪塚の下半身が衣類越しでも認識できるほどに猛々しい反応を示すと同時。
「想像するだけで……ヤバい」
「ーーあっ……ぃあぁんッ?」
余裕なく言葉を放った窪塚はいきなりブラを無理くりたくし上げ、ふるんと解き放たれた胸の突起にむしゃぶりついてきた。
当然だが、赤子が母親の胸で戯れているようなそんな可愛らしいものじゃない。
まるで飢えた獣が獲物にでも食らいつくかのような激しい愛撫に、危うく思考が途切れそうになったくらいだ。
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