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✱番外編✱パティシエールと王子様
#2
しおりを挟むでも、創さんの気持ちだって分かる。
私だって、できることなら、創さんとこうやってずっとずっとくっついていたいし。
つい数十時間前のように、大好きな創さんに何もかもを委ねてしまいたいって思ってもいる。
いくらそうしたいって思っていても、愛梨さんのあの肖像画が脳裏にちらついて理性にストップをかけてくるのだ。
……といっても、ずっとこんなことをやってたら創さんだって不審に思うだろうし、嫌われてしまうかもしれない。
ーーそんなの嫌だ。
やっと誤解も解けて、今こうして創さんと一緒に居られるっていうのに。
ーーもうこうなったらヤケクソだ。
愛梨さんの姿だって見えないんだし、居ないものと思い込んじゃえばいいだけのことだ。簡単、簡単。
やっと覚悟を決めた私が無意識にギュッと閉ざしてしまっていた瞼を開け放った刹那。
一体どうしちゃったのか、私の身体からすっと退いてしまった創さんが、イケメンフェイスに溢れんばかりの大輪の笑顔を綻ばせてから。
「菜々子は本当に初心で可愛いなぁ」
堪らないって言うような声で、そんなことを独り言ちるように呟いたかと思うと、続け様に、今度は悪戯っ子のような声音で、
「でも、安心しろ。空港で、ヤリ逃げだとか言われたお返しをしてただけだ」
これまでのあれこれの種明かしをしてくれた。
どうやらさっきまでの創さんの言動は、空港で恥ずかしい発言をしてしまった私への報復だったらしい。
ーーええ!? せっかく覚悟を決めたところだったのにぃ。
なんだか拍子抜けだ。
いや、拍子抜けを通り越して、創さんの意外すぎた言葉に私はがっかりしてしまっている。
あんなにオロオロしてたクセに、身勝手なものだと自分でも思う。
そんな身勝手なことを思ってしまっている私のことをそうっと抱き起こした創さんは、ソファに座った自分の脚の間に私を挟むようにして固定すると、あっという間に私の身体を背後から抱き包んでしまった。
お陰で、創さんが口を開くたびに微かな振動ばかりか、あたたかな体温までが伝わってくる。
そして心臓までもがバクバクと煩いくらいに暴れ出してしまっている。
たったこれだけのことでこんな有様だというのに、よくもまぁ、拍子抜けなんてできたものだ。
身勝手な自分に心底呆れ果てている間にも、創さんの話は続いていて。
自然に、私の意識もそちらへと集中していった。
「まぁ、確かに、菜々子に夢だなんて思われたくなかったし。もう、二度と逢えないって思っていたからなぁ。言われたとおり、さんざんエッチなことをしたって自覚もある」
「////……ッ!?」
そうして創さんの口から飛び出してきた、あの夜のことを彷彿とさせる言葉に。
ーー一体、何を言おうとしているんだろうか。
と、絶句し、全身を真っ赤かにして身を竦めていたところに。
「だから、こっちの暮らしに慣れるまでは、菜々子の身体に負担をかけるようなことは控えようと思ってるから安心してほしい」
またまた意外な言葉が出てきたものだから私は呆気にとられてしまっている。
まさかそこまで大事にしようと思ってくれているなんて思ってもみなかったからだ。
勿論、身勝手すぎるって自分でも盛大にツッコミを入れてしまいたいくらいに、これ以上にないくらい残念に思ってしまってもいる。
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(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
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