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#27 泣きっ面にお姫様抱っこ!?

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「ギャッ!?」
【菜々子ちゃん、危ないッ!?】

 ソファからは落ちずには済んだけれど、足を滑らせてしまったことに焦ってしまった私はビクッと飛び上がって大きな声を放っていた。

 どうやらその瞬間を見ていたらしい愛梨さんが私の声に過剰に反応し、叫んだ声に、

――落ちるッ!?

そう思い込んでしまった私は、ギュッと瞼を閉ざしたまま、落ちたときの衝撃に備えていた。

 けれど当然落ちることはなく、

「お前は本当に騒がしいヤツだな」

呆れたようにそう零してきた桜小路さんによって、私の身体は難なく抱き留められていて。

【キャー、創ったら王子様みたいだわぁ】

 愛梨さんのこの黄色い声にハッとし止まってた思考が動き始めた。その結果。

――な、何事!?

 桜小路さんの声の近さと身体が浮遊する感覚に目を見開いた先には、眩いくらいのイケメンフェイスを捉えてしまい、私はカッチーンと凍り付いたように固まってしまうのだった。

 その様子に桜小路さんは、フンッと鼻を鳴らして、

「これくらいのことで真っ赤になってフリーズしてしまうようじゃ、先が思いやられるな」

そう言った後、「まあいい、それもいい暇つぶしになりそうだ」と、なにやらぶつくさと呟いてしたようだったけれど、非常事態に追い込まれた私にはその声を拾うような余裕などなかった。

 その代わり、桜小路さんから続け様にお見舞いされた、

「詳細は菱沼から聞いたと思うが、今夜からお前には俺の寝室で寝起きしてもらう。ちょうどいいからこのまま連れてってやる。落とされたくなかったら、大人しくしていろ」

このやけに楽しそうな声によって、尚も追い打ちをかけられてしまうのだった。

 それにより全身を真っ赤に染めた私は、菱沼さんから聞かされた偽装結婚を装うためのシナリオの一部を思い出し、ボンッと火を噴きそうなくらい真っ赤になって身悶えることしかできないでいる。

 その偽装結婚を装うためのシナリオというのは……。

 第一段階として、まずは、今日初めて会った桜小路さんの継母である菖蒲《あやめ》さんに、専属パティシエールである私が桜小路さんとただならぬ関係であるというのを印象づけるため、これから一ヶ月かけて、徐々にそういう雰囲気を匂わすために、寝室を共にすること、だった。

 他にもまだあるのだが、恋愛経験の全くない私には、とてもじゃないがこんなミッションをクリアすることなんてできそうにないことだけは確かだ。

 けれど桜小路さんはそんな私の懸念など全く意に介していない様子で、私との身重差が三〇センチという、なんとも羨ましい一八五センチという高身長を活かして、チビの私をあっという間にお姫様抱っこの体勢に変えてしまっている。

 そうしてスタスタと寝室に向けて歩き出してしまった。

【創は昔から照れ屋なところがあったから、きっと言えないだけで、菜々子ちゃんのことが好きなんだと思うわぁ。頑張ってね~】

 私が処刑台にでも送られるような心持ちでいるというのに、空気を読めない愛梨さんのやけにキャピキャピした声が無情にも響き渡っていたのだった。

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