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#10 〜エピローグ〜
#2
しおりを挟むあの後、泣き止んで落ち着きを取り戻した私と窪塚はその足で窪塚家へと向かった。
彼氏の家にご挨拶に伺うなんて初めてのことだし、お父さんは神の手だし、どうなることかと思ったのだけれど。
窪塚のご両親はとても気さくな方で、急なことだったにも関わらず、快く出迎えてくださった。
初見が、いくら無断外泊をしたからとはいえ、うちの両親とはまったく違っていたことに、拍子抜けしたほどだ。
おおらかで陽気なお母さんと、少し物静かで温厚そうなお父さんの醸し出す雰囲気はとても穏やかで、時折にこやかに微笑み合っている姿がとっても素敵なご夫婦だった。
『息子ばかりだったから、娘ができたみたいでとっても嬉しいわ。うちはいつでもお嫁に来てもらいたいくらいよ。ねぇ、あなた』
『ああ、本当に。圭、鈴さんの気が変わらないうちに、そうしなさい』
窪塚のご両親からは、そんなお言葉をかけてもらえたほどの歓迎ぶりだった。
終始、穏やかで和やかな雰囲気の中、時間は緩やかに流れ、鮮やかなオレンジ色の夕暮れ空から藍色が混じった宵闇へと緩やかに移ろい始めた頃。
料理が得意らしいお母さんからは、夕飯も誘ってもらったのだが。
『今日は顔見せだけだからもう帰る』
窪塚がそう言ってやんわりとお断りしてから窪塚家を後にした。
.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚
そうして現在、窪塚のご両親への挨拶を終えて、鮮やかなオレンジから群青色へと移ろいゆく夕暮れの街並みを窪塚と一緒に歩いているところだ。
勿論、私の手は窪塚の手によりしっかりと繋ぎ止められている。
セフレだったこれまでとは違って、正真正銘の恋人繋ぎだ。
だから私は非常に照れてしまっていた。
なのに窪塚ときたら、全然恥ずかしそうじゃない上に、隙あらばすーぐキスを仕掛けてくるのだ。
内心は嬉しく思いつつも羞恥には抗えず、私は可愛げのないことばかり言ってしまうのだった。
「////ーーあっ、ちょっと、窪塚。こんなところで何すんのよいきなりッ!」
「いーだろ、別に。口じゃねーんだしさぁ」
「////ーーそ、そういう問題じゃないでしょうがッ! もー信じらんないッ!」
「おいおい、待てよ。そんなに怒ることねーじゃん」
「////ーーだ、だって、アンタが急にほっぺにチューなんてするからでしょ!」
「そんなに怒るなって。鈴とこうやって手繋いで歩いたりするのが嬉しくてしょうがなくてさ。可能なら、すれ違う一人一人に、俺の彼女はこんなに可愛いんだぞって、見せつけたいくらいなんだからさ。これくらい大目に見ろよ」
「////ーーみ、見せつけるって、バッカじゃないのッ!」
「けど、そういう俺のことも、満更でもねーんだろ?」
「////ーーもーヤダ。知らないッ! フンッ!」
そうしていつものように、窪塚は、本格的にむくれ始めた私のことを相変わらずメチャクチャ嬉しそうにぐっと距離を詰め、蕩けそうな甘い眼差しで見つめてくる。
「な、何よ?」
「否、照れてる鈴がメチャクチャ可愛いなーと思ってさ」
「////……バッカじゃーーんん~~ッ!?」
本当は窪塚との時間を楽しみたいし、もっと素直に可愛くしたいと思っている。
それでも可愛げのない私はムッとしてしまうのだ。
そんな私の性質を長い付き合いである窪塚は、知り尽くしているらしく。
いつもの強引さを遺憾なく発揮してきて、可愛くない私のことを、優しいキスで簡単に黙らせてしまう。
それを嬉しいなんて思ってしまう私は、窪塚のゴッドハンドによって、既に窪塚の色に染められているに違いない。
もう一生かかっても元の色に戻ることはないはずだ。
きっと永遠にーー
.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚
~Fin~
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さくらちゃんさん
最後まで読んで頂き、コメントまで残して頂きまして、ありがとうございます🙇
読みやすいと仰って頂けとっても嬉しいです!
毛色の違うものもありますのでどうぞご無理されませんように☘️