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#7 寝ても醒めても

#13

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 その後、地下駐車場からマンションの中へと移動し、直通のエレベーターで高層階にある窪塚の部屋へと向かったのだが。

 相変わらず窪塚は愉しげで、初デートの時同様、私の手は窪塚の男らしく節くれだった大きくてあたたかな手によりしっかりと繋がれたままだった。

 あんまり自然に、当たり前のように手を繋がれているせいで、本当に恋人同士にでもなったのかと勘違いしてしまいそうになる。

 それに加えて、窪塚の表情もいつにも増して優しげで柔らかい気がするし。

 繋ぎあった手から、窪塚の自分よりも体温の高いあたたかなぬくもりが伝わってくるせいか。

 あたかも、その熱がじわじわと伝染して全身に巡っているのかと思うくらい、熱くて熱くて堪らなくなってくる。

 そんな私の胸は、なんだかあたたかなもので満たされているようで、ずっとドキドキと高鳴ったままだった。

 でも、不思議とちっとも嫌じゃなく、むしろ、なんだか幸せで、とっても心地よくて。

 ――ずっとずっとこのまま窪塚と一緒に同じ時間を共有していたい。

 なんて思ってしまっていたほどだ。

 そうしてようやく辿り着いた約一月ぶりにお邪魔することになった窪塚の部屋のリビングダイニングのソファで先にシャワーを済ませた私が待つこと十数分。

 軽くシャワーを浴びただけだというのに、ボディソープの甘やかな香りのせいか色香増し増しとなったお風呂上がりの窪塚に連れられ、寝室の布団に一緒に入った途端。

 抱き枕にされた私は、ドキドキと高鳴る鼓動がうるさくてどうしようもないっていうのに、いつもと変わらず落ち着き払った窪塚はスヤスヤと気持ちよさげに寝入ってしまい。

 ――ふふっ、やっぱり可愛い。子供みたい。

 途端に、あんなに気になって仕方がなかったはずの、騒がしい鼓動の音も何もかもが霧散してしまっている。

 横向きで寝ている私の胸元に顔を埋めて、気持ちよさげに眠っている窪塚の無防備な可愛い寝顔を堪能しながら、ここに来るまでのアレコレを思い返し勘案を重ねた結果、私はある決心をしていた。

 それは窪塚に自分の気持ちを伝えるということだ。

 もしかしたら、それでこの関係が終わってしまうかもしれないけれど、さっきだって、なんとか誤魔化せはしたものの、核心を突かれちゃったことだし。

 もうこれ以上想いを隠し通すことなんてできそうもない。

 なんかよく分からないけど、うまくいくような、なぜかそんな気がする。

 だってよくよく考えてみれば、ただのセフレでしかないはずなのに、そういう行為抜きで、こうやって抱き枕にしようと思えるくらいには、心を許してもらえてるのだし。

 ――少なくとも嫌われてはいないはず。

 それに、車の中では、窪塚にズバリ核心を突かれてバレたのかと焦っちゃって、あの時は考えるような余裕なんてなかったけれど。

 今、冷静になって、その時のことを思い返してみると……。

『けど、俺のこと、前ほど嫌いじゃないんだろう?』

 そう問い返してきた時の窪塚の表情はとっても嬉しそうだった。

 あれって、長年窪塚のことを敵視してきた私の気持ちが嫌いから少しでも好意に転じたのが嬉しかったんじゃないのかなぁ。

 なんて、恋する乙女モード全開で、もしかしたら自分に都合のいい解釈をしちゃってるだけなのかもしれないけれど。

 ――それでも、このまま想いを隠してただのセフレのままでいるよりは、当たって砕けちゃったほうが私らしい気がする。

 そうじゃなきゃ、このままこんな不埒な関係を続けたって、辛いだけで、いいことなんて一つもないだろうし。

 窪塚への想いが、こうしている間にも、どんどんドンドン膨らんで、今にも溢れ出してしまいそうなんだもん。

 こういう経験なんて初めてだからよく分からないけど、そのうち想いが爆発しちゃうんじゃないのかなぁ。

 そんなことになったら、私のことだから、きっと碌なことにならない気がする。

 そうなる前に、窪塚にちゃんとこの想いを伝えておきたいーー。

 そう思えたのは、セミナーをサボることになったお陰で、窪塚と久しぶりに話せたお陰だから、少々癪だけど、羽田のお陰でもあるのだし、今日のことは綺麗さっぱりと水に流してやることにする。

 とは思いつつも、羽田の顔が浮かんできてしまった途端に、げんなりしてしまったので、それらを一刻も早く追い払いたくて。気持ちよさげに眠っている窪塚の背中に両腕をまわしてギュッと抱きついた。

 窪塚のあたたかいぬくもりを間近で感じながら、窪塚の匂いをめいっぱい吸い込んで堪能していると、羽田のことなど綺麗さっぱり消え去っていて、心はたちまち幸せ一色。

 いつしか私も窪塚と一緒に幸せな夢の世界へと誘われるようにして旅立ってしまっていて。

 気付いたときには、日頃の疲れのせいか、一月前と同じように、夢のような幸せな朝を迎えていたのだった。

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