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#3 まさかの延長戦
#5
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腹が立つとはいえ、自ら『さっさと済ませなさいよ』と言っちゃったことから、こんな状況になってしまっている訳で。
だからって、どうすることもできず、これ以上の密着を避けるためにも大人しく息を潜めて、ただただ窪塚にされるがまま身を任せていることしかできないのだけれど。
耳元に顔を埋めたままの窪塚は尚も私のことを自身の広くて厚い胸へと抱き寄せると、慣れた手つきで、私の背中に腕を沿わせるようにしてあてがってきて、優しく宥めるようにゆっくりと背中を上下に撫で始めてしまった。
さっきの言葉からして、私が必死になってひた隠しにしている不安な気持ちを汲み取って、それを和らげようとでもしているのだろう。
ーーそんなもん、余計なお世話だ。
窪塚に気遣ってなんかもらっても、ちっとも嬉しくない。
だいたい、ゲッスいこと言って脅してきたのは窪塚なんだから。
それなのに、罪悪感か温情か、何なのかは知らないけど、こんな変態クス男になんか施しを受けるなんてまっぴらご免だーー。
このように、窪塚に対する憤りが羞恥や緊張感よりも膨れ上がった頃。
こういうことに不慣れな私のことをまたまた安心でもさせるかのようにして、窪塚が優しい声音で囁きかけてくる。
「この前は、久しぶりだったし酔ってたのもあって、余裕なかったけどさ。これからは、不慣れな高梨のペースに合わせて、好きな女を抱いてるつもりになって精一杯優しくするから安心しろって。な?」
それって、ただ私のことを片想いしてた彼女の身代わりにするってことじゃない。
ーーそれをイチイチ恩着せがましい言い方して。ふざけるな!
元より、そのつもりで私にセフレになろうって持ちかけてきたんだから、今更余計な気遣いなんて要らないっつーの。
「初めっから、身代わりにするつもりで私のこと無理矢理セフレにしておいて、今更、何勝手なこと言ってんのよッ! そんな気遣いなんて要らないから、さっさとヤレばいいでしょーがッ!」
怒りに任せて、密着している窪塚の胸を両手で押しやりつつ啖呵を切れば。
一瞬だけ、私の言動に驚いた表情を見せた窪塚が僅かに切なげな表情をチラつかせたもんだから。少々良心が咎めて。
ちょっと言い過ぎだったかな。
なんて思いかけたところに、窪塚が何かを企んでいるようなニヤリとした黒い笑みを湛えながら口を開いた。
「……まぁ、そうはいっても、不慣れな訳だし。いくらセフレって言っても雰囲気作りも大切だろ? 特に女は。
それに、あの人タラシの藤堂のことだしなぁ。未だに未練たらしく想ってるくらいだ。抱くときはさぞかし優しかったんだろうからなぁ。
だからこれからは、俺が高梨のことをできうる限り優しく抱いて、藤堂のことなんて忘れさせてやるよ」
「ーーッ!?」
そうして、啖呵の仕返しだとばかりに厭味ったらしく、これでもかというように、藤堂の名前を交えて、頼んでもいないというのに、またもや恩着せがましい上から発言を繰り出してきた。
だからって、どうすることもできず、これ以上の密着を避けるためにも大人しく息を潜めて、ただただ窪塚にされるがまま身を任せていることしかできないのだけれど。
耳元に顔を埋めたままの窪塚は尚も私のことを自身の広くて厚い胸へと抱き寄せると、慣れた手つきで、私の背中に腕を沿わせるようにしてあてがってきて、優しく宥めるようにゆっくりと背中を上下に撫で始めてしまった。
さっきの言葉からして、私が必死になってひた隠しにしている不安な気持ちを汲み取って、それを和らげようとでもしているのだろう。
ーーそんなもん、余計なお世話だ。
窪塚に気遣ってなんかもらっても、ちっとも嬉しくない。
だいたい、ゲッスいこと言って脅してきたのは窪塚なんだから。
それなのに、罪悪感か温情か、何なのかは知らないけど、こんな変態クス男になんか施しを受けるなんてまっぴらご免だーー。
このように、窪塚に対する憤りが羞恥や緊張感よりも膨れ上がった頃。
こういうことに不慣れな私のことをまたまた安心でもさせるかのようにして、窪塚が優しい声音で囁きかけてくる。
「この前は、久しぶりだったし酔ってたのもあって、余裕なかったけどさ。これからは、不慣れな高梨のペースに合わせて、好きな女を抱いてるつもりになって精一杯優しくするから安心しろって。な?」
それって、ただ私のことを片想いしてた彼女の身代わりにするってことじゃない。
ーーそれをイチイチ恩着せがましい言い方して。ふざけるな!
元より、そのつもりで私にセフレになろうって持ちかけてきたんだから、今更余計な気遣いなんて要らないっつーの。
「初めっから、身代わりにするつもりで私のこと無理矢理セフレにしておいて、今更、何勝手なこと言ってんのよッ! そんな気遣いなんて要らないから、さっさとヤレばいいでしょーがッ!」
怒りに任せて、密着している窪塚の胸を両手で押しやりつつ啖呵を切れば。
一瞬だけ、私の言動に驚いた表情を見せた窪塚が僅かに切なげな表情をチラつかせたもんだから。少々良心が咎めて。
ちょっと言い過ぎだったかな。
なんて思いかけたところに、窪塚が何かを企んでいるようなニヤリとした黒い笑みを湛えながら口を開いた。
「……まぁ、そうはいっても、不慣れな訳だし。いくらセフレって言っても雰囲気作りも大切だろ? 特に女は。
それに、あの人タラシの藤堂のことだしなぁ。未だに未練たらしく想ってるくらいだ。抱くときはさぞかし優しかったんだろうからなぁ。
だからこれからは、俺が高梨のことをできうる限り優しく抱いて、藤堂のことなんて忘れさせてやるよ」
「ーーッ!?」
そうして、啖呵の仕返しだとばかりに厭味ったらしく、これでもかというように、藤堂の名前を交えて、頼んでもいないというのに、またもや恩着せがましい上から発言を繰り出してきた。
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