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#2 不埒な攻防戦
#9
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余計に首を傾げて考え込んでしまっている私の首はもう限界寸前で、これ以上傾けられない。そう思っていた時のこと。
「だからさぁ、その可愛い反応はなんなんだって訊いてんだよ。いつもの威勢はどこ行ったんだ?」
窪塚から意外すぎる言葉が放たれたのだった。
――今、『可愛い反応』って言わなかった? え? もしかして、空耳!? 否、 違う、おだてようとしてるんだ。
けど、あいにく、そんなおだての言葉を真に受けるほど私はおめでたくないし、バカじゃない。
「ちょっと、窪塚。あんた私のことセフレにするためにおだてようって魂胆なの? 言っとくけど、そんなんでセフレになんかならないからッ! フンッ! 馬鹿にして」
窪塚の言葉に憤慨して、いつもの調子をようやっと取り戻した私の言葉にも。
窪塚は堪えるどころか、今度は肩透かしを食らったような表情を浮かべて力ない声で、一人ツッコミでも呟くように、やっぱり意味不明なことを口にするのだ。
「……何でそうなんだよ? 無自覚にもほどがあるだろ。天然か?」
もうこれは馬鹿にされてるに違いない。
そうとしか思えなくて、盛大にムッとむくれてしまった私が奥歯をギリと噛みしめて、窪塚めがけて刃の如く尖った視線を放ち、射貫くように睨み上げると同時。
「第一、俺にはイチイチ高梨のことおだてる必要なんてねーし」
これまた要領を得ない言葉が窪塚から返されて、私は条件反射的に視線同様の強い口調をぶつけたのだが。
「ちょっと、窪塚。さっきからなんなのよ? 言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよッ!」
私の切った啖呵を訊くや否や、腹が立つほど整った顔に、何やら意味ありげにニンマリとした厭らしい笑みを湛えた窪塚から、腹立たしいくらいにあっけらかんとした声が返された。
「ハッキリ言うも何も、ちょっと考えれば分かることだろ? お互い秘密を共有してる訳なんだからさ、それをバラされたらマズイってことくらい」
あの強引なキスのことだろうか? あんなもん、どうとでもなるわよ。
それとも、院長がおじさんだってこと? あれだって、別にバレたからってどうってことない。
むしろ、ビッチなんて言われることもなくなるだろうし。
この前の夜のことだって、バレたら困るのは、たった今、窪塚が言ってきた通り、お互いさまだ。
だったら特に問題なんてない。
それを、さも問題があるようなこと言ってきて、私のことを丸め込もうったって、そうは問屋が卸さないんだから。
――こんなヤツのいいなりなんて、なってたまるかッ! フンッ!
思ったままの勢いで、窪塚の言葉を跳ね返そうとするも。
「バラしたければバラしなさいよッ! 痛くもなんともないからッ!」
「そんなにカッカしないで、まぁ、聞けよ。俺は、高梨に失恋のことはもちろん、それが元でセックスしたこと。それから、父親のことも知られてるし。
高梨は俺に、さっきのキスの件も含めて、院長や家族のこと。それからこの前の、好きでもねー俺に抱かれて、乱れに乱れまくってた痴態を見られてるうえに、その画像をスマホに保存までされてんだから、断る権限なんてねーんだよ」
「――ッ!?」
これでもかというように、思いの外ゲスくて衝撃的な事実を窪塚から容赦なく浴びせられたものだから、ショックのあまり、茫然自失状態に陥ってしまった私は、とてもじゃないが二の句なんて告げられない。
「だからさぁ、その可愛い反応はなんなんだって訊いてんだよ。いつもの威勢はどこ行ったんだ?」
窪塚から意外すぎる言葉が放たれたのだった。
――今、『可愛い反応』って言わなかった? え? もしかして、空耳!? 否、 違う、おだてようとしてるんだ。
けど、あいにく、そんなおだての言葉を真に受けるほど私はおめでたくないし、バカじゃない。
「ちょっと、窪塚。あんた私のことセフレにするためにおだてようって魂胆なの? 言っとくけど、そんなんでセフレになんかならないからッ! フンッ! 馬鹿にして」
窪塚の言葉に憤慨して、いつもの調子をようやっと取り戻した私の言葉にも。
窪塚は堪えるどころか、今度は肩透かしを食らったような表情を浮かべて力ない声で、一人ツッコミでも呟くように、やっぱり意味不明なことを口にするのだ。
「……何でそうなんだよ? 無自覚にもほどがあるだろ。天然か?」
もうこれは馬鹿にされてるに違いない。
そうとしか思えなくて、盛大にムッとむくれてしまった私が奥歯をギリと噛みしめて、窪塚めがけて刃の如く尖った視線を放ち、射貫くように睨み上げると同時。
「第一、俺にはイチイチ高梨のことおだてる必要なんてねーし」
これまた要領を得ない言葉が窪塚から返されて、私は条件反射的に視線同様の強い口調をぶつけたのだが。
「ちょっと、窪塚。さっきからなんなのよ? 言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよッ!」
私の切った啖呵を訊くや否や、腹が立つほど整った顔に、何やら意味ありげにニンマリとした厭らしい笑みを湛えた窪塚から、腹立たしいくらいにあっけらかんとした声が返された。
「ハッキリ言うも何も、ちょっと考えれば分かることだろ? お互い秘密を共有してる訳なんだからさ、それをバラされたらマズイってことくらい」
あの強引なキスのことだろうか? あんなもん、どうとでもなるわよ。
それとも、院長がおじさんだってこと? あれだって、別にバレたからってどうってことない。
むしろ、ビッチなんて言われることもなくなるだろうし。
この前の夜のことだって、バレたら困るのは、たった今、窪塚が言ってきた通り、お互いさまだ。
だったら特に問題なんてない。
それを、さも問題があるようなこと言ってきて、私のことを丸め込もうったって、そうは問屋が卸さないんだから。
――こんなヤツのいいなりなんて、なってたまるかッ! フンッ!
思ったままの勢いで、窪塚の言葉を跳ね返そうとするも。
「バラしたければバラしなさいよッ! 痛くもなんともないからッ!」
「そんなにカッカしないで、まぁ、聞けよ。俺は、高梨に失恋のことはもちろん、それが元でセックスしたこと。それから、父親のことも知られてるし。
高梨は俺に、さっきのキスの件も含めて、院長や家族のこと。それからこの前の、好きでもねー俺に抱かれて、乱れに乱れまくってた痴態を見られてるうえに、その画像をスマホに保存までされてんだから、断る権限なんてねーんだよ」
「――ッ!?」
これでもかというように、思いの外ゲスくて衝撃的な事実を窪塚から容赦なく浴びせられたものだから、ショックのあまり、茫然自失状態に陥ってしまった私は、とてもじゃないが二の句なんて告げられない。
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