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極道の妻として

極道の妻として⑥

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 ソファで座している尊の脚に跨がっているため、尊の眼前に下着を纏っただけの胸を突き出すという、なんとも恥ずかしい格好となってしまっている。

 いくら期待感に胸を高鳴らせていようが、さっきまでの激しいキスのお陰で思考もなにもかも蕩けきっていようが、恥ずかしくないわけがない。

 これまでの経験上、尊にどうされるかわかっているので、せめてその瞬間を直視したくなくてすむように、無駄な足掻きとは思いつつ、ギュッと瞼を閉ざす。

 するとふっと不敵な微笑を零した尊の心なしか嬉しそうな声音が美桜の耳朶を擽った。

「今日は淡い水色なんだな。これも俺のために選んでくれたんだろう?」

 尊からの、あたかも心の内を見透かしたような鋭い指摘に、美桜は弾かれるようにして顔を上げ言い返してしまう。

「ち、違いますッ! 別に尊さんのためにじゃありませんからっ」

 けれど実際には、尊の指摘通りで、結婚してからと言うもの、服装や身なりには一層気を遣うようになったのは事実だ。

 それもこれも、十歳も離れている大人な尊に少しでも近づきたい。少しでも尊に見合う大人の女性になりたい。そんな想いからだった。

 いつからか、それを全てお見通しだとでも言うように、こうして事あるごとに尊は指摘するようになった。

 おそらく尊は、薫の呪縛に囚われていた美桜がこれまで下着は隠すためのものばかり選択してきたのが、尊になにもかもを曝け出した初夜を境に、見た目重視で選ぶようになったのを自分のためだなんだと仄めかしているだけなのだろう。

 ただ美桜との行為に刺激というスパイスを加えるためのものに違いない。

 美桜がどんな下着を選ぼうがどうしようが、別に嬉しいわけじゃない。

 きっと羞恥に塗れる初心な美桜のことを面白がっているだけなのだろう。

 もしかすると、尊のことを好きになってしまった可哀想な世間知らずの美桜に同情して遊びに付き合ってくれてるつもりなのかもしれない。

 こっちがどんなに必死になって尊への想いをひた隠しにしてきたつもりでも、やっぱり経験豊富な尊のことを欺くなんて無理だったのかもしれない。

 ーーそうか。だから思わせぶりな言動で惑わせるんだ。

 でないと、こんな風に実に愉しそうに言葉で攻め立てたりはしないだろう。

 ーーううん、違う。ただ行為のときに意地悪になるだけで、優しい尊さんがそんな酷いことする訳がない! 

 尊のことをこれ以上好きにならないために様々な仮説を並べても、こうして毎回もうひとりの自分が邪魔をする。

 これ以上好きになんてなっても辛いだけなのに。尊への想いはもう止められそうにないーー。

「そうか、それは残念だ。近頃下着に凝っていると思ったのは気のせいか? まぁ、いい。俺は下着よりもこっちの方がいいから、たっぷり堪能させてもらう」

 口調の割にはまったく残念そうには見えない尊のことを美桜は恨めがましく見つめ返すことしかできないでいる。

 そんな美桜の下着を煩わしそうにずり下げた尊は、ふるんと弾むようにまろび出た乳房の中心で悩ましく揺らめく蕾に食らいついてくる。

「あっ、いやぁん!」

 たちまち強すぎる刺激を浴びせられた美桜はあられのない悲鳴めいた艶声を放つほかなかった。
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